上下総義歯が緩いと言う患者さんの義歯を新製した。
普段から義歯の安定剤を使用しているとのこと。
顎堤の条件は良く、旧義歯の適合はあり得ないほど悪い、普通に作製しても特に問題はなさそうだった。
無口蓋義歯にしても旧義歯には負けないだろうと、あまり詳しく説明もせず咬座印象して無口蓋義歯を装着した。
装着時には問題なく吸着し、開口しても大丈夫、片側性均衡もとれていた。
次回来院時、痛いところは全くないが上顎が緩いとのこと、ちょっと強引に無口蓋義歯にしてしまったかと反省し、即日に取り込み印象後石膏をついで即時重合レジンで口蓋板を追加した。
次回来院時、まだ緩いとのこと。
やっとここで気がつきました、問診が甘かったことを。
患者さんは旧義歯の使用時は100%義歯安定剤を使用していて、それに比べて緩いと言っていて、その安定剤は非常にべたつき、粘膜に付いていると除去するのが大変な物でした。
あのベタベタとまとわりつく安定剤には勝てません。
現状ではこれが限界に近いことを説明し、もっと外れにくい状態を望むときは今までの安定剤を使用して下さいと説明し終了した。
安定剤に勝てないのはいいとして、もっと話を聞くべきだった。
安定剤の悪いところとして骨の吸収や咬合の変化はよく言われるし、そう思うところもあるのだが、実際のところどの程度悪影響があるのだろう?
入れ歯安定剤市場は100億以上あるそうだが、全国の歯科医院で均等に割ると15万ぐらい。
毎日のように安定剤を使用しながら適合の悪い義歯を使うより、義歯を新製した方が安くすむと思うが、あるいは新製後に何回通っても上手くいかなくて、安定剤にお金をかけた方がましということか?
とにかく適合の良い義歯を作製して、それでも足りないところを安定剤で補っていって、歯科医が安定剤を100%否定せず、上手につきあっていけば、患者側も歯科医側も安定剤業界側も、みんな幸せになれるのではないか?
薄く塗れて、毎日張り替えるのを前提とすればあの赤いべたつく安定剤は良くできている。