痛かったら手を挙げろ

時々タイトルが変わります

総義歯8(安定剤編)

2008年02月28日 01時01分00秒 | 今日の天使

上下総義歯が緩いと言う患者さんの義歯を新製した。

普段から義歯の安定剤を使用しているとのこと。

顎堤の条件は良く、旧義歯の適合はあり得ないほど悪い、普通に作製しても特に問題はなさそうだった。

無口蓋義歯にしても旧義歯には負けないだろうと、あまり詳しく説明もせず咬座印象して無口蓋義歯を装着した。

Photo_29 (装着前、無調整の状態の義歯)

装着時には問題なく吸着し、開口しても大丈夫、片側性均衡もとれていた。

次回来院時、痛いところは全くないが上顎が緩いとのこと、ちょっと強引に無口蓋義歯にしてしまったかと反省し、即日に取り込み印象後石膏をついで即時重合レジンで口蓋板を追加した。

次回来院時、まだ緩いとのこと。

やっとここで気がつきました、問診が甘かったことを。

患者さんは旧義歯の使用時は100%義歯安定剤を使用していて、それに比べて緩いと言っていて、その安定剤は非常にべたつき、粘膜に付いていると除去するのが大変な物でした。

あのベタベタとまとわりつく安定剤には勝てません。

現状ではこれが限界に近いことを説明し、もっと外れにくい状態を望むときは今までの安定剤を使用して下さいと説明し終了した。

安定剤に勝てないのはいいとして、もっと話を聞くべきだった。

安定剤の悪いところとして骨の吸収や咬合の変化はよく言われるし、そう思うところもあるのだが、実際のところどの程度悪影響があるのだろう?

入れ歯安定剤市場は100億以上あるそうだが、全国の歯科医院で均等に割ると15万ぐらい。

毎日のように安定剤を使用しながら適合の悪い義歯を使うより、義歯を新製した方が安くすむと思うが、あるいは新製後に何回通っても上手くいかなくて、安定剤にお金をかけた方がましということか?

とにかく適合の良い義歯を作製して、それでも足りないところを安定剤で補っていって、歯科医が安定剤を100%否定せず、上手につきあっていけば、患者側も歯科医側も安定剤業界側も、みんな幸せになれるのではないか?

薄く塗れて、毎日張り替えるのを前提とすればあの赤いべたつく安定剤は良くできている。


デンフィットS(昭和薬品化工株式会社)

2008年02月27日 23時55分48秒 | 今日の天使

咬座印象すると総義歯新製時の調整量、調整時間とも明らかに少なくなっていて、必然的に調整材料の減りも少ない。

PIPが残っているのに購入したデンチャーフィットチェックの出番もあまりなくチューブ入りの歯磨き粉並みの減り方で、いつまでも使えそうな感じである。(高いのは解っているのだが、リターダーを使用したフィットチェッカーは立体的に視覚に訴えてくるので使いやすく、ついつい使ってしまいがちなのが本当のところ。)

新製後の調整は少なくなったのだが、旧義歯に何かしら問題があり急患で来院する方の義歯の調整に対しては、適合が悪い義歯ならとりあえずソフトなりハードなり、リライニングしていくのだが、今まで問題なく使用していた義歯の痛みに対してはとりあえず必要最小限の調整にしたいのでデンフィットSを使用している。

デンフィットSもデンチャーフィットチェックと同じ頃に購入したので、長くは使用していないのだが、少々ぬれていても流れない感じで扱いやすい。

まあ用途としては他の物でも代用が利くが、買って損をした感じはない。

なかなか減らないが今度はデンチャースポットチェック(GC)を試してみようと思っている。


デンチャーフィットチェック(GC)

2008年02月24日 22時03分23秒 | 今日の天使

近頃の総義歯の作製時には、ほぼ咬座印象するようになった為なのか、義歯の装着時の調整量と調整時間が明らかに少なくなってきた。

ただし、咬合採得時の仮床辺縁の調整や咬座印象時の時間は、今までの方法以上にかかっており、現在のところ総合的には若干の治療時間の短縮にしかなっていない気がする、材料代は咬座印象時の印象材分余計にかかっているのは間違いない。

しかし、患者さんにとっても自分にとっても、新義歯装着後の苦労や手間は少ない方がいろんな意味で良いのは間違いなく、咬座印象は保険自費関係なく今後もルーチンな方法となりそうです。

義歯の調整時には、昔からPIPやフィットチェッカーを使用しているのだが、咬座印象をやり始めた頃から調整材料を見直してみた。

平たく言うと高価なフィットチェッカーの使用量を減らしたいが為に、いろんな材料を検討して、材料屋さんの意見を参考にデンチャーフィットチェック(GC)を購入してみた。

用途はPIPと同じなのだが、デンチャーフィットチェックの方が良いと感じたところは

  • 若干粘りけが少なく扱いやすい
  • 繰り返し塗布したときにダマになりにくい
  • 塗布用の専用のスポンジが筆より扱いやすい
  • スポンジで均一に塗布しやすいので加圧されたところがわかりやすい
  • チューブに入っているため、必要最小限の量が出しやすい

悪いと感じたところは、専用のスポンジが高価なことぐらいで、グラム当たりの金額はちょっとだけ安い。

長年使い慣れたPIPだが、スポンジさえ何とかなればデンチャーフィットチェックの方が私には合っている。(と言うか何とかしてます。)


COPYING PENCIL

2008年02月23日 02時05分35秒 | 今日の天使

院内実習の時、担当の先生からデンタル鉛筆を出せと言われ、持ってませんと言ったら激怒された。

心の声:「普通の鉛筆でいいだろ、なんてめんどくさい人なんだ。」

と思ったが

「すぐに借りてきます」

といって周りで実習中の友達に借りた覚えがある。

今なら良く解ります、全然別物、鉛筆が必要な時にデンタル鉛筆なら代用が効くが、その逆はあり得ないです。

ちょっと前までは外科用の水性マジックの様な物を使用していたのだがそれが書けなくなってきてデンタル鉛筆を探してみた。

学生時代に買ったものは、どこかにしまい込んでいると思うのだが、どうしても見つからないので材料屋さんに頼んでみた。

Dsc_1243

持ってきて貰ったのがこれでAUSTRIAと書いてある、学生時代に購入したのも日本製ではなかった気がする。

Dsc_1240

(上が普通に書いた線、下がちょっと水に濡らして書いた線です。)

なんて便利な物なんでしょう、検索したら海外のブログにThe magic of purple pencilとありました、本来は紙に書いた文字を転写するための鉛筆の様です。

ずっとデンタル鉛筆だと思っていたが学生時代に買った鉛筆も、このCOPYING PENCILだったのかもしれない。

今まで使用していた物は単なる染色液のペンで、皮膚鉛筆といわれる物に近く、COPYING PENCILとは用途が全く違うものでした。

最近は、義歯の外形を決める時に粘膜面に書いた線を印象面にコピーしたり、印象面に書いた線を石膏面にコピーしたり非常に重宝しています。

値段は普通の鉛筆の10倍ぐらいしたけど、何年も使えそうです。

材料屋さん曰く、製造中止だか取り扱い中止だかで在庫限りといわれました。

Dsc_1287 (こんな感じが本来の使い方みたい)


総義歯7(手を出せなかった編)

2008年02月22日 18時39分27秒 | 今日の天使

上顎前歯部に数本、下顎臼歯部に数本、何れも動揺した歯が残存し、義歯を入れてほしいと言う患者さんが来院した。

60代の男性で、これまで義歯を入れた経験は無く、歯医者は20年ぶりとの事、口腔内を拝見しようとミラーで口唇を持ち上げると

心の声:「硬い?抵抗されてる?」

「力抜いて下さいね」

心の声:「だめだ、見ることさえ、させて貰えない」

歯医者が極端に苦手と言うのもあるが、長年の間、顎堤で物を咬んでいた為なのか口唇の周囲の筋が非常に発達していて、さらに口に触った瞬間に反射的に口を閉じようとする。

口の中を触られるのが苦手で嫌がる方はこれまでも経験しているが、この方は、不適切な表現かもしれないが、まるで2歳の子供並みの動物としての本能みたいなものを感じた。

何とか指で引っ張りながら口腔内を診ると残存歯は全て歯肉にぶら下がってるだけ、下顎の顎堤は痩せていて内側に傾斜し、アーチも小さい、さらに3級気味、閉口時でも口唇は顎堤を押さえつけている。

心の声:「世の中は広い、これほどの人がいるとは」

心の声:「義歯新製なら抜歯は確定?、新製後に義歯になれてから抜歯していって総義歯に移行してもいいかな?てゆうかその前に印象採れないんじゃないか?」

「入れ歯を作るとなると歯は抜かなくては駄目そうですね、抜いた後は型を取れないと入れ歯は作れないので、試しに型を取る枠を入れてみますね」

トレーを入れようとしたところ、案の定駄目でした、入れるやいなや吐き出される感じ、嘔吐反射が強いと言うレベルでなく抵抗されてトレーを所定の位置まで持っていけない。

「歯を抜いてから、型が採れませんでしたでは、歯無しになってしまうので、どうしましょうか?」

心の声:「どうしましょうじゃねーだろ俺、なんか良い方法はないか?」

もう一人の心の声:「全麻か鎮静しかねーだろ」

心の声:「だな」

結局、治療のたびに鎮静か全麻をする必要性を説明し(本人もなんとなく、そんな方法を望んでいた)、残存歯は保存不可能と言う事と、インプラントの説明もして、大学病院の歯科を紹介し終了した。

義歯を作製出来たとしても、ものすごく難症例と思われ、慣れるまでにお互いに相当根気が要りそう、下顎の総義歯の跳ね上げを抑えるのはインプラントを使用しないと難しいかも知れない。

こんな方こそ静脈内鎮静あるいは全身麻酔下において、抜歯即時埋入、即時荷重が適しているかも、全て自費で診査から最終補綴物まで入れると400~600万円ぐらいかかるか?

高級車一台分で全て解決?

平均寿命まで約20年、死ぬまで持てばべらぼうに高くは無いと思うが、インプラント以外でこの患者さんを救う手はあるのか?