痛かったら手を挙げろ

時々タイトルが変わります

総義歯6(超難症例編)

2008年02月07日 01時17分36秒 | 今日の天使

15年ぐらい総義歯で悩んでいる患者さんが来院した、今までに8回ほど総義歯を作製したのだが、どうしても痛みがとれずに困っていた。

何件も歯医者を渡り歩き、上手だと言う噂を聞けば行って診てもらい、隣の県の大学病院まで通った事もあり、果てはおいしそうに食事をしている人の口元を見て総義歯だと解ると、どこで作ったか聞き出し行ってみたりもした事もあると言う。

今回来院したのは、私が以前義歯を修理した方の紹介だった。

この条件には燃えた、前医達の二の舞になるかもしれないと思いながらも熱くなった。

とにかく今までの問題点と希望を問診し、研究用模型の印象をして、次回全ての義歯を持ってきてもらう事とした。

持ってきていただいた義歯の中にはやっつけ仕事的な義歯もあったが、ほとんど義歯は、金属床の義歯もレジン床の義歯も良くできていると感じた、口腔内で確認しても特におかしい所は無いように思えた。

今までの義歯に共通する問題点は、上顎はいつもそれなりに良いのだが、嚥下時に義歯の後縁が気になる事と、痛くて調整してもらうと少しずつ緩くなっていってしまうと言う事だった。下顎はとにかく痛い、いつもどこかしら痛い所があり上顎同様調整するたびに緩くなるとの事だった。

上顎の顎堤は非常に優型であるが粘膜は薄い、下顎は触診すると模型以上に顎堤が細く、前歯から臼歯部全ての骨が鋭く尖っている、粘膜の角化は弱く薄かった。

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(線が記入してあってごめんなさい、患者さんに説明するときに書きました。)

上顎義歯の改善点は解らなかったが、無口蓋義歯は入れたことが無い為チャレンジしてみる価値はあるかと感じた。

下顎の顎堤が細く骨が尖っている事について今までに指摘された事があるか聞いてみると、大学病院で舌小帯の切除は受けたことがあるが、骨については何も言われたことは無いというので、そこに改善点を見いだしてはいた。

その後患者さんの愚痴と言うか、義歯にまつわる苦労話を聴いてみると参考になる話がいくつかあった。

  • とにかく痛くなく、つけものが食べたい
  • 歯が何本かあった頃は義歯は今ほど痛くなかった
  • 現在主に使用している金属床の総義歯はこれ以上調整すると緩くなるだけだから調整出来ないと言われた
  • 金属床の口蓋を薄く短くしてもらったが、もうちょっと短く削ってほしい
  • 上顎の義歯は常にそこそこ良い
  • 大学病院で小帯切除後は、しばらく痛かったし、その後義歯を作製する段階になって補綴の担当医から別に切らなくてもよかったのに、と言われた

  • 大学病院での義歯は今までで一番大きかった

  • 旧義歯を取り上げられて、新義歯が痛くて困った事がある

  • ほとんどの先生が自信たっぷりなのだが、結果は、「なーんともならない」←(患者さんの決まり文句)

とにかく、現在主に使用している金属床の義歯は触らずに、2番目に良さそうな義歯を修理していく事とした。

なーんともならない編につづく