痛かったら手を挙げろ

時々タイトルが変わります

総義歯7(手を出せなかった編)

2008年02月22日 18時39分27秒 | 今日の天使

上顎前歯部に数本、下顎臼歯部に数本、何れも動揺した歯が残存し、義歯を入れてほしいと言う患者さんが来院した。

60代の男性で、これまで義歯を入れた経験は無く、歯医者は20年ぶりとの事、口腔内を拝見しようとミラーで口唇を持ち上げると

心の声:「硬い?抵抗されてる?」

「力抜いて下さいね」

心の声:「だめだ、見ることさえ、させて貰えない」

歯医者が極端に苦手と言うのもあるが、長年の間、顎堤で物を咬んでいた為なのか口唇の周囲の筋が非常に発達していて、さらに口に触った瞬間に反射的に口を閉じようとする。

口の中を触られるのが苦手で嫌がる方はこれまでも経験しているが、この方は、不適切な表現かもしれないが、まるで2歳の子供並みの動物としての本能みたいなものを感じた。

何とか指で引っ張りながら口腔内を診ると残存歯は全て歯肉にぶら下がってるだけ、下顎の顎堤は痩せていて内側に傾斜し、アーチも小さい、さらに3級気味、閉口時でも口唇は顎堤を押さえつけている。

心の声:「世の中は広い、これほどの人がいるとは」

心の声:「義歯新製なら抜歯は確定?、新製後に義歯になれてから抜歯していって総義歯に移行してもいいかな?てゆうかその前に印象採れないんじゃないか?」

「入れ歯を作るとなると歯は抜かなくては駄目そうですね、抜いた後は型を取れないと入れ歯は作れないので、試しに型を取る枠を入れてみますね」

トレーを入れようとしたところ、案の定駄目でした、入れるやいなや吐き出される感じ、嘔吐反射が強いと言うレベルでなく抵抗されてトレーを所定の位置まで持っていけない。

「歯を抜いてから、型が採れませんでしたでは、歯無しになってしまうので、どうしましょうか?」

心の声:「どうしましょうじゃねーだろ俺、なんか良い方法はないか?」

もう一人の心の声:「全麻か鎮静しかねーだろ」

心の声:「だな」

結局、治療のたびに鎮静か全麻をする必要性を説明し(本人もなんとなく、そんな方法を望んでいた)、残存歯は保存不可能と言う事と、インプラントの説明もして、大学病院の歯科を紹介し終了した。

義歯を作製出来たとしても、ものすごく難症例と思われ、慣れるまでにお互いに相当根気が要りそう、下顎の総義歯の跳ね上げを抑えるのはインプラントを使用しないと難しいかも知れない。

こんな方こそ静脈内鎮静あるいは全身麻酔下において、抜歯即時埋入、即時荷重が適しているかも、全て自費で診査から最終補綴物まで入れると400~600万円ぐらいかかるか?

高級車一台分で全て解決?

平均寿命まで約20年、死ぬまで持てばべらぼうに高くは無いと思うが、インプラント以外でこの患者さんを救う手はあるのか?


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