こころの声に耳をすませて

あの結婚生活は何だったのだろう?不可解な夫の言動はモラル・ハラスメントだった…と知ったウメの回想エッセー。

夫が生まれ育った環境

2006-07-01 22:22:12 | モラハラが生まれた背景とは
 夫は私と結婚する前によくしんみりと語ったものだ。自分がいかに親から虐待されていたかということを。夫は家族の中で逆境に耐えながらも、必死で生きてきたんだ…と私は夫の話に心を打たれた。そして、この結婚生活で少しでも安らぎをおぼえてくれれば…と願った。

 夫の父親は、幼い頃に父を亡くし、その母は女手ひとつで父を育てながらも、ある男性医師と親しい仲だったらしい。後に夫の父親は、非常な医者嫌いになったそうだ。戦争直後の大変な状況の中で苦労して成長し、後に夫の母親となる女性と結婚する。そして最初に生まれた長男は、わずか1才たらずの時、病気で死亡した。その後生まれたのが夫である。多分夫は死んだ長男の代わりとしても過剰に期待されたようだった。

 夫に言わせると、父親像を知らない父は、どうやって父親になればいいのかわからなかったのではないか、とのことだ。
 夫の父親は、3才になる夫のちょっとしたいたずらを見とがめ、激しく折檻したという。鼻血が出るまで殴られたそうだ。父親は夫が意のままにならないと、すぐ暴力を振るった。父親はなにかと非常に厳しく、野球を教えるときもスパルタ式に鍛えようとし、勉強をするときも徹底して指導したようだ。なので、夫は「自分は中学生の時、ノイローゼになりそうだった」と話している。また、絶えず精神的に不安定な状態が続き、「学校にモデルガンを持っていき、授業中によくいじっていた」とか、「理科の実験などの時に教室を移動するが、学校の中を把握することができず、どの教室に行けばいいのか随分長い間わからなかった」と言っている。ときには学校をさぼってぶらぶらしていた日もあり、現代で言う不登校気味の子だったようだ。家ではよく勉強するように、父親が見張っていたそうだが、隙をついて窓から抜け出し、遊んでいたこともあったらしい。ただそんなことをした後は父親からの折檻が待っていた。父親からの暴力的な躾は長い間続き、夫はたまに家出をしたこともあったそうだ。夫が大学卒業間近に、怒り狂った父親に立ち向かい自身も暴力によって抵抗したことで、父親の暴力は止まったという。また、夫には妹がいるが、父親は娘にはとても優しかったらしい。そこから夫は妹に嫉妬するようになり、妹嫌いになった。夫と妹は私から見ても、お互い仲が悪く、いつも互いの批判を言い合っていた。
 また父親はDV夫だったようで、夫の母親(父親の妻)が作った料理が気に入らなかったり、機嫌が悪いと、それこそちゃぶ台をひっくり返したそうだ。

 母親は、息子(夫)を溺愛したらしい。夫が死んだ子どもの次に生まれたことで、なおさら愛情を注いだようだ。夫が求めるまま、いろいろなものを与えていたらしい。

 夫の妹と会い、夫の話を聞くところによると、夫は妹に向かって突然殴りかかったり、攻撃的な行動をすることがよくあったそうだ。
 そして母親は夫(息子)を猫かわいがりし、何でも買い与え妹とは無意識に差をつけていたということだ。この母親は夫が結婚した後も、夫の住む家の頭金を出したり、車を購入してやったりしている。妹はそんな母親を見て「母親は私にはそんなことしたことないのに、兄には大人になっても、何かあればすぐ買い与えており、驚いた」と言っている。
 私も結婚前に、夫の実家にお邪魔したときに、母親が夫の布団を敷き、そして朝には敷きっぱなしの夫の布団を押入にしまっていたことに驚いた。夫は母親に布団を片付けさせることに全く疑問をもっていなかったようだった。私は夫に「年老いた母親に自分の寝た布団を押入にしまわせるとは…自分でしたらどう?」と思わず言ったことがある。夫は私の見ている前では、自分で布団を押入にしまうようになった。

 そして夫が何回か言っていたことがある。両親にとって夫は育てにくい子どもだったようで、夫が子どもの頃、親が夫を親戚に一時預けたそうだ。しばらく過ごした後に、また両親と一緒に生活するようになったが、夫は「あの時俺は親に捨てられそうになったんだ」と語っていた。そのことからも、夫は両親に対して憎しみと不信感、そして常に不安を伴う愛着を抱いていたようだった。

 暴力父と溺愛母。どうもこのセットは他の方々から聞いても、モラハラ行使する息子を育てるらしい。確かに夫を見ていると、父親の暴力による影響が見られるように感じた。不安定な精神状態、何かと被害的な受け取り方、そして他人に対して攻撃的な態度。不安な自分を抱えながらもそれを隠そうとし、他者に依存しながら支配しようとするやり方。
 そして、母親から溺愛されていたことからくる、何でも自分の思い通りになるという自己中心性。


 そして夫は大人へと成長した後も、問題行動を続出させていた…。





8 コメント

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なるほど・・・・・ (酒蔵)
2006-07-02 06:33:55
ウメさん、おはよ!

いつもながらの鋭い分析に頭が下がります。



やはり境界線の問題でしょうか。夫父は自分と似た(想像)気質の息子が憎く、夫母は父の代替品として夫サンを飲み込んでしまったのかな。怖い。マジ怖いです。

「常に不安を伴う愛着」という表現は、ほんと、モラ周辺に生じる心理状態だと思いました。

そこから成長できなかった夫サンに「オキノドクサマ」と言いたい、個人的に。

やろうと思えばできることだったのに。

残念だったね。>過去形。
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Unknown (マーチ)
2006-07-02 11:02:43
そこまで屈折したモラを理解するのは、さぞ大変だったでしょうね。しかも理解した上で、なんとか立ち直らせようというウメさんの涙ぐましい努力。その努力をどんなに注いでも、砂漠の砂に水が吸い込まれるようなむなしさ・・・ウメさんのご苦労は、想像に余りあります。



それに引き替え、うちモラの場合は、屈折していない分、わかりやすかった。山奥の小さな町で、優秀だと言われてちやほやされていたころの気分を、いつまでも引きずっていただけ。「十で神童、十五で天才、二十すぎればただの人」ということわざがありますが、うちモラは15で早くも「ただの人」になっちゃってました(笑)。なのに、何の努力もせず、十五歳以降の人生をひたすら過去の栄光にすがって生きてきた(爆)。



ウメさんのモラとうちモラに共通して言えるのは、努力をしなかった、ということでしょうね。ウメさんのモラは、生い立ちのせいでゆがんだ自分を育て直す努力をしなかった。うちモラは、自分のあらまほしき姿になるための努力をしなかった。



自慢するわけじゃないけど、わたしも機能不全の家庭に育ち、十八歳までかなり屈折した人間になっていましたが、それから必死に努力して自分で自分を育て直しました。



だから、ウメさんのモラにどんなに暗い過去があったとしても、同情する気にはなれません。それどころか、他人まで巻き添えにしたことに憤りさえ感じます。



ウメさん、ほんとにいい迷惑でしたね(そんな軽い言葉じゃ足りないけど)。これからはモラのない人生を、思う存分、楽しんでください。

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難しいですね (酒蔵さんへ)
2006-07-02 22:44:38
酒蔵さん、こんばんは

酒蔵さん、早起きですね~!



夫はまさに、原家族の問題に巻き込まれていたのでしょうね。

そういった意味では被害者なんですよね~。

でも、悲しいかな、いくら被害者でも

自分の置かれていた状況を把握し、

そこから変わろうとしなければ、

容易に加害者になってしまうということです。

特に男性の場合は男としてのパワーを求めるので

自分が被害を受けたもの=弱者というのも

耐えられなかったことと思います。



しかし私にはよく「俺は被害者だ~」と叫んでましたけど…。

何なんでしょうねぇ。

あくまでも自分を正当化するための、ご都合主義でしたね~。

     ウメより

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私にも問題が… (マーチさんへ)
2006-07-02 23:06:19
マーチさん、こんばんは



モラ夫はほんとに歪みきっており、

私の理解の範疇を超えていましたね~。

マーチさんのおっしゃる通り、

砂漠に水やり、のれんに腕押し、みたいなものでした。

しかしそれを何とかしようとした私自身も

きっと問題があったのでしょうね。

友人は私と夫の関係を見て

「ウメは(夫に)ボランティアしてるみたい」と言ったくらいですから。

この一言には堪えました…(苦笑)



そうですね。

夫は自分を変えようとはしませんでした。

「俺はこれでいいんだ」とばかり

自分の好きなように行動していました。

夫が努力したことは、社会でのパワーを身につけることでした。

仕事上の専門的知識、名の知れた大企業に入ること、

そこで他の人々から尊敬される存在になること。

こうして夫は社会的には体裁を保ったようです。



しかし…ほんとの中身は暗く、空虚な冷酷さが渦巻いていましたね。

そんな夫から離れることが出来て本当によかったです。

太陽の光を思う存分浴び、随分健康になりました。

ありがとうございます(涙)。

     ウメより

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夫と似てる (ちっこ)
2006-07-04 11:25:22
夫も妹を小さい頃に亡くしています

それから家族はバラバラになったと夫は言っていました



ウメさんの言うとおりだと思います



夫の家族もまた娘を失った悲しみに夫に目を向けられず物ですべてを解決しようとしたため

夫は今のような借金まみれの生活をするように

なったのかもしれません



今、夫はその事にようやく気がつきはじめたと本人は言っています

私は半信半疑ですが・・・



どんな状況でもその中で何かを気づき自分自身と向き合えなければ周りに毒を撒き散らし

結局自分に跳ね返る人生しかおくれないという

事になるのだと思います



元夫さんがどんなに悲しい人生であったとしてもそれにウメさんのせいじゃないです



ウメさんの決断は本当に正しかったと思います



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はぁ~・・・ (あかね)
2006-07-04 12:37:58
ウメさんの元夫さんは

暴力父と溺愛母に「モラ」の英才教育を施されたんですね。

今までは暴力父には無力な影の薄い母親がカップリングされるもんだと思ってました。



ウメさんの苦悩が目に見えるようです・・・。

ほんとによく頑張った!

離れる事ができてよかったね!







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悲しいですね (ちっこさんへ)
2006-07-04 23:42:50
ちっこさん、こんばんは



親にとって、子どもが幼いときに亡くなるのは

はらわたが千切れるような悲しみがあるのでしょう。

しかし、親のその悲しみの深さによって

亡くなった子どもの、兄弟姉妹がぽつんと取り残されてしまう。

あるいは亡くなった子どもの代替行為を求められてしまう。

どうしようもない家族の苦しみだと思います。



そして、取り残された子どもの深い悲しみが

大人に成長した後、本人を苦しめることもあるでしょう。

ただそこで、自分がなぜ苦しいのか、

なぜ問題行動を起こしてしまうのかを、

自分で知ろうとしない限り、

ちっこさんの言うとおり、

今度は他の人に毒をまき始めるのでしょう。



もう私は夫の人生にはつきあえないことを

悲しいことに、骨の髄まで思い知らされました。

私が夫を癒すことなんてできないのだと

心の底から思い知らされました。

それがわかってよかったです…。



ちっこさん、ありがとうございます。

     ウメより







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上手い言葉! (あかねさんへ)
2006-07-04 23:49:21
あかねさん、こんばんは



「モラの英才教育」には笑えました。

そうですね~。

確かに夫はモラ英才教育を施されたのでしょうね。

そして、夫自身は「自分はエリート」と思っているんです。

まったく笑えます。

いつまでも「ひとりエリート」やってろ~!



私は「ひとりエリート」を引き立てる

シモベだったのだと実感。

脱出して、シモベから平民になってよかったです~(爆)!

ありがとうございます。

     ウメより





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