「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

Long Good-bye 2020・01・06

2020-01-06 04:55:00 | Weblog


                                    


   今日の「お気に入り」。


     「 あらゆる仕事には、『誰の分担でもないけれど、誰かがしなければいけない仕

      事』というものが必ず発生します。誰の分担でもないのだから、やらずに済ます

      ことはできます。でも、誰もそれを引き受けないと、いずれ取り返しのつかない

      ことになる。そういう場合は、『これは本当は誰がやるべき仕事なんだ』という

      ことについて厳密な議論をするよりは、誰かが『あ、オレがやっときます』と言

      って、さっさと済ませてしまえば、何も面倒なことは起こらない。

       家事もそうです。どう公平に分担すべきかについて長く気鬱なネゴシエーション

      をする暇があったら、『あ、オレがやっときます』で済ませたほうが話が早い。

       ですから、最初から『家事は全部オレの担当』と内心決めていた方がメンタル面

      では気楽なのです。

       相手に期待せず、押しつけず、全部自分でやる。だから、相手がしてくれたら

      『ああ、ありがたい』と感謝する気持ちになれる。

       もちろん、結婚しているときは、それほど達観できませんでした。

       でも、離婚して、家事労働は全部僕一人でやらなければならなくなったときに、

      『家事労働のフェアな分担』のために結婚している間、どれほど不毛な言い争い

      をしてきたのかが痛感されたのは本当です。」


     「 人間を疲れさせるのは労働そのものではなく、労働をする『システム』を設計

      したり、管理したり、合理化したりすることだということをそのときに学びま

      した。」 
     

      ( 内田 樹著 「そのうちなんとかなるだろう」㈱マガジンハウス刊 所収 )








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