TRASHBOX

日々の思い、記憶のゴミ箱に行く前に。

予告された殺人の記録/G・ガルシア=マルケス

2006年03月09日 | 読書とか
Cronica De Uma Muerte Anunciada/Gabriel Garcia Marquez

「百年の孤独」でも強く感じた、人間とその一族と彼らが暮らす土地の織り成す濃いうねり。ある事件の記録を読んでいるような気分がいつのまにか舞台となったコロンビアの街で熱風にさらされているような気分になる。実在の事件が下敷きになっているとはいえ、小説としての完成度はやはり作家の力量(まあノーベル賞作家ですから)。娯楽小説のような「一気に読む」のではなく、その世界の空気に釘づけされるような感じでもっていかれた。

かつて中上健次はこの作品を「構成力が素晴らしい」と述べたというが、その通りだと思う。氏によるとウォン・カーウァイもこの作品に影響を受け、それが「欲望の翼」以降の作風の変化をもたらしたらしい。もしかしたらそういう「ガルシア=マルケス・チルドレン」は結構いるのかもしれないなぁ。この後日談や映画(実際の映画化だけでなく、中国映画「血祭りの朝」なども小説が元になっているとのこと)などいろいろ興味が沸き起こってくるような、強い引力を感じる一作だ。

ちなみに事件の背景については、ジャーナリスト藤原章生氏のサイトなどが参考になるかも。
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