国道122号沿いの音楽喫茶 『ドルフィン』

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アルトサックスに込めたジャズミュージシャン生き様の音

2010年08月30日 | マスターの独り言(アルバムのこと)
ジャズの聴き方に「一人のミュージシャンの個性を聴き取る」という聴き方がある。
楽器編成は様々なものがあれども、そこで音を出しているのは結局人である。
ピアノにしろ、ベースにしろ、ドラムにしろ
やはりそれを演奏している人の個性というものが出てくる。
音ののばし方、間の取り方、叩いたり、弾いたりする強弱などがそれだ。

ジャズの中で個性が表れやすいのは管楽器だろう。
トランペット、サックスなどは人の息を吹き込むことで音が出る。
音の広がりや強弱は人の息により変わり、音も息の吹き込み方で変わる。
「しゃべってんじゃないの?」というような演奏を聴いたことがある人もいるだろう。
管楽器は人の声を別の音に変え、それだけ思いも伝わってくる部分がある。
それは歳を重ねても同じだ。
若かったころに出すあの艶やかな音色は、例え歳を取ろうとやはり根本は変わらない。

ジャッキー・マクリーンの『リズム・オブ・ジ・アース』1992年の録音である。
2006年まで生きたマクリーンにとって1992年というのは、
まだまだの時期だったのだろう。
マイルスの弟分であり、『レフト・アローン』という名盤をもち、
ブルーノートに大量の吹き込みを残し、日本で愛され続けるジャッキー・マクリーン。

よく聴かれるのは若いころのものであるが、
それ以降にも止まることなくマクリーンは先へ先へと進もうとしている。
一時期の休息をとり、1970年代に吹き込みを再開。
自分の息子であるルネ・マクリーンら若い世代とグループを組んで活動をしている。
『リズム・オブ・ジ・アース』でもマクリーンはいつものように
いつもの音色を聴かせてくれる。
張りがあり、くっきりとした輪郭線を持ちながらもどこか物悲しい。
星も出ないそんな暗い夜に太く直情的な音色は伸びていく。
老いたのはジャケットに写る写真の姿だけだ。

ただ古い音だけを出しているわけでもない。
トロンボーンに、ヴァイブと大編成を組み、厚みのある演奏を作り上げようとしている。
曲の姿はまるで万華鏡のようにクルクルと変わり、
ジャズという形式を持ちながら、
しっとりとではなくグイグイと前に進もうとするエネルギーがある。

タイトル曲ではしっかりとしたリズムに、
各個のソロがのり、めまぐるしく変わっていくのはまさしく「地球のリズム」だ。
マクリーンのソロは決して長くはないが、
そこにマクリーンの音が聞こえてくるだけで、
最後まで自分の音を出し続けてきたジャズミュージシャンの生き様を聴くことができる。

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