国道122号沿いの音楽喫茶 『ドルフィン』

さぁ、音楽を聴け!
コーヒーは自分で沸かして用意して…
そんな仮想の音楽喫茶

狂気のピアノの断片を集めて

2009年09月07日 | マスターの独り言(アルバムのこと)
「バド・パウエルが好き」という人は多いと思うが、
「毎日、パウエルを聴いています」という人はほとんどいないだろう。
まぁ、こう言っている人がいたら、
バド・パウエルを本当に聴いているとは言えないと思うが…

パウエルの演奏は重い。
初期の作品を聴いてみると、
それこそ爆撃機が攻撃を仕掛けているかのような演奏であり、
ピアノの音がズーンと重い。
それを毎日聴き込むのは辛い。
気持ちも明るくなれないのが、パウエルの演奏なのだ。

だが、パリへ移ってからのパウエルはちょっと違う。
それまでの刺々しい激しさから、
ちょっとだけ(本当にちょっとだが)柔らかくなってきている。
そんなパウエルのパリでの録音を集めたのが、『バド・イン・パリ』だ。
似たタイトルのアルバムもあるので注意すべし。

ジョニー・グリフィンとのデュオがあり、
バルネ・ウイランとのセッションがありとホーンとの共演もある。
グリフィンとの演奏では、グリフィンが指を鳴らしながらリズムを取り、
パウエルを引っ張っていく感じが聴き取れる。
パウエルは昔ほど動かない指で力強い音を叩き鳴らしている。

7曲目からはトリオ作品で、ドラムのケニー・クラークが
ベテランらしくエネルギッシュなドラミングを聴かせている。
パリのパウエルは調子の良し悪しがあるが、
どんよりと低くたれ込めた雲のような重いピアノの音が全編に鳴り響いている。

「ジョーンズ・アビー」という曲が3曲あるが(また3曲!)、
最後に素晴らしい和音のメロディーがある。
ここでパウエルが「弾ききってやったぜ!」と、
勢い込んで盛り上がっていくのを聴くと、
「ああ、パウエルはパリでもパウエルだったんだなぁ」と
初期だ、後期だという論争よりも
まずは感慨に浸り、パウエルの凄さを改めて実感してしまう僕なのだ。

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