論文の書き方に関し欧米の大学院で教科書ともいえるその方法を解説した 「Real World Research」 Colin Robson Blackwell Pub によれば近代の「科学的」な考え方は、19世紀のオーギュスト・コントの唱える実証主義に端を発するといいます。 実証主義(Positivism)は科学を次のように定義しています。
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客観的知識(事実)は直接的な経験または観察から得られる。客観的知識のみが科学に利用できる。目に見えないものや理論のみでは利用できない。
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科学は、その大部分を、厳格な規則や手続きにより得られる数的データに基づいている。
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すべての科学的命題は、事実に基づいている。 仮説は、こうした事実に対して検証される。
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科学の目的は、普遍的因果法則を発見することにある。
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事象の説明は、一般法則との関連を解き明かすことに過ぎない。
現代社会において科学が力を得たのは、科学の目的が「事実」 に基づく普遍的因果法則の発見にあったからであると思います。 ところが歴史的には真に科学的なアプローチをとる指導者、経営者はそれほど多くないようです。
科学的仮説の検証の一つである演繹法を社会的な事象に対して利用しようとする場合、推論の前提となるルールは、時代の流れや環境により変わる可能性があります。
重要な意思決定を行う指導者が過去の成功体験を現在と将来にも同様に効果的であると信じ込んでいる場合には、特に問題です。 演繹法は理路整然としていますが、原理主義的というか融通が効かないところがあります。
社会的には、宗教に対する信仰や独裁が、身近な世界において大きな力を持ち、自分の違う立場や、見方を否定し、頑なになりがちなことからも明らかです。
経営において組織のトップが、演繹的な思考に固執する場合も事態が悪くなることが少なくありません。 例えば、現実を無視した高すぎる目標は、現場の人たちの意欲を殺ぎます。 どんなに努力しても達成できない目標に対しては、目標未達または失敗しかありえない状況下で人は頑張り続けられるでしょうか?
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