創発企業経営

起業13年目の会社の経営、事業報告

会社の所有者 (5)

2011年11月14日 | 経営
会社の所有者というテーマについて書いていますが、本当に所有ということはあり得るのでしょうか?
 
わたしは企業の創業経営者の引退後、経営者の晩年について関心があり、機会があれば、経営者の周囲にいた人の話を聞くようにしています。 経営者自身が出版した本などより、経営者の周囲にいた人が見た「行動」が真実を伝えているように思います。

ダイエーの創業者、中内功氏は、大阪の『主婦の店ダイエー薬局』を、小売業売上高トップにまでに成長させた大実業家です。

晩年は、90年代以降の土地下落に伴う凋落から、2001年ダイエーを退任。 中内氏は2005年、私財を投じて設立した流通科学大学を訪れた後、神戸市内の病院で死去。 既に私財を全て売却処分、自宅は差押となっていたため、一度も亡骸を自宅へ戻すことなく、大阪市の菩提寺に搬送されたといいます。

流通業界出身初の勲一等瑞宝章を受章、「流通王」と呼ばれた中内氏自身が晩年、「消費者が見えなくなった」と嘆いていたそうです。 なぜそんなことが起こったか?

橘玲氏は 「貧乏はお金持ち」 (講談社) で、中内氏は「会社を自分の分身と見なしていた」と記しています。

 


会社の所有者 (4)

2011年11月06日 | 経営

ドラッカー(*1)がもっとも進んだマネジメントと呼ぶのが特定非営利活動法人 - NPOです。 社会は、収益が見込めず民間企業が手を出さない社会貢献事業を必要としています。 日頃の社会とのかかわりのなかで、矛盾を感じたことを、自分たちの力で何とかしたいと思う人は多いはずです。

ドラッカーはNPOから学ぶべきもっとも大事なこと - それは 使命を持つこと - であると云います。 それにより、目標達成の戦略も、規律ももたらされるといいます。 例として、アメリカ南西部のカトリック系病院チェーンがあげ、そのモットーは「患者の利益になることならば行うべきである。 その収支をあわせることが自分たちの仕事である」と。

多くの企業のように内部 - 組織や利益がはじめにあるのではなく、外の世界がもたらすべきもの 使命からスタートする。

そしてボランティアのスタッフが求めるものは (1) 活動の源泉となる明確な使命 (2) 訓練 (3) 責任 であるといいます。

これらは企業に於ける知識労働者に求められるものと同じです。 つまり人は、やりがいを求め、成果と責任を求め、使命を果たしたいと望んでいる。 仕事とはそれに答えることであると。

米国の現状をドラッカーは以下のように表しています。

- NPOは企業の世界では口先に終わっていることを実行している。
- 知識労働者の動機づけや生産性という重要な問題についても、企業が取り入れるべき考え方や制度を生み出し、パイオニアになっている。
- 今日アメリカではもっとも多くの人たちが働いている組織がNPOである。 成人の二人にひとり、8000万人強が、平均5時間、ボランティアとして働いている。

少し古いデータですが1996年現在,米国のNPOで働いている人は約1500万人。 うち1000万人が有給。GDPに占める割合は 6.8%。

2005年9月8日 日経新聞夕刊に 「NPO法人 解散急増」という記事が載りました。 財政問題により、社会的に意味のあるNPOが、活動継続を望みつつ解散しています。 NPOとして認証される数より解散数が多いのです。  1998年に始まった日本の制度を1940年代からの歴史を有する米国のNPOとは比較できないかもしれませんが、なぜ日本でNPOはうまくいかないのか?  それは大きな疑問の一つです。

私の経験から言えるのは、最大の原因は (1) 活動の源泉となる明確な使命 (2) 訓練 (3) 責任 の不足であり、それを明確に伝えるのが経営者の役割ではないかと思います。

     (*1) P.F. ドラッカー チェンジリーダーの条件 ダイヤモンド社