2022/9/18 NHKの番組「中流危機を越えて 企業依存を抜け出せるか」で全世帯の所得の中央値が1994年の505万円から2019年の374万円に減少したと報じていました。
企業に頼らない生活設計として企業も個人もキャリアパスが大事と慶応大学 駒村康平教授の解説がありました。 この「キャリアパス」という言葉、30年以上前、日本の会社で働いていたとき、取引先企業の米国人女性から聞く機会がありました。 この言葉は自分の中に染みついてしまい、その後の人生を変えることになりました。
大学を出て訳も分からず入社した日本企業で、このような人と出会う機会があり、自分は運が良かったと思いました。
キャリアパスという言葉を教えてくれた人は、当時スタンフォード大学で化学工学の修士号を取り、米国企業の日本支社で働いていました。 私はその人が日本語でキャリアパスについて語った原稿を読む機会があり、そこには、こうありました。
キャリアパス(Career Path): 人生の目標を考えながら決めた教育と仕事の道。 キャリアははしごのようなもので、教育も仕事もそのはしごのひとつのステップです。 一番下のステップは、誰でも昇れるかもしれませんが、計画を立てないと一番上のステップまで昇れません。
当時から、米国は企業への就職は難しかったのです。 履歴書を何十通も送ったと明るく話していました。
LSEの教授だった森嶋通夫氏は、1994年に出版された著書の「なぜ日本は行き詰ったか」で日本が90年代に停滞し、いまだ立ち直ることなく深みにはまっている理由を説いています。「生活水準は高いが、活動力がなく、国際的に重要でない国」が森嶋通夫の21世紀の日本のイメージでした。予言はそのまま現実になってしまったようです。
森嶋氏は日本の主流の思想は戦前戦後を通じて儒教であると強調しています。 日本の最大の問題は戦後の教育で、戦前の価値観が完全に否定されたと同時に、それを正しく理解しない状態でアメリカ型の擬似個人主義、擬似民主主義による教育がなされたことだといいます。
しかし、戦後も戦前の儒教型教育を受けた人は残っている。 それが、日本の戦後の発展を支えたが、90年代になり世代交代が進むと、戦後教育を受けた人が社会で重要な地位を占めるようになる。 戦後の教育改革から50年たって、この大改革が今になって日本にエートスの二極分化をもたらしているといいます。
「遠い国アメリカの個人主義、自由主義を日本人は理解していないから、改革の結果の日本は、アメリカ思想を正しく理解せず、思想的貧血状態に陥ったといっても良い有様になった」と。
戦後の日本社会は「人々は自分自身の良心に忠実でもなく、身を処するに厳格でもなく、嘘もまた方便であると考え、利益を得るためには人におもねって当然と考えるような、倫理的な自覚に欠けた土着共同社会に過ぎない」といいます。
森嶋通夫は21世紀に、右翼や超国家主義者が復活してくる可能性を指摘し、これに加えて、無政府主義、ニヒリズムやデカダンスが将来現れるかもしれないと指摘しています。 確かに、品格にかけた行動が社会を支配し、これらの兆候はすでに現れ始めています。
キャリアパスについて語った米人女性は家庭で「あなたは自分の能力を信じるよう」にと言われて育ったそうです。 私などにたいしてさえ「自分の良さに気づいて、あなたは素晴らしい能力を持っているのだから」と言ってくれました。 たとえ今はそうでなくても、そう信じて努力することが未来を変えていくのは紛れもない事実だと思います。
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