創発企業経営

起業13年目の会社の経営、事業報告

創発企業経営 (15) 楽天の事例

2012年07月24日 | 経営
ケース1 楽天の創業時の戦略
 
地球上にいる生物の種類は、150万種を超えるといわれています。 生物は30億年前に発生し、多くの新しい生物が誕生してきたと考えられます。 その一方、絶滅した生物の数は150万種類の100倍、1億5000万種にのぼると考えられています。 これだけ多くの種類の生物が誕生し、絶滅した理由を解く鍵が進化論です。
 
「創発」とは元来、生物学、特に進化理論の用語であり、進化のプロセスで「これまでのプロセスから論理的に説明することの出来ない進化」を意味します。
 
企業にしてもこの社会で非常にたくさんの企業が誕生し、また消えていきます。 どのような理由で新しい企業が生まれ、成長するのか、またその一方でどのような企業が消滅していくのか?
こうしたことは通常は、経営学の枠組みで解釈されます。
 
しかし、わたしは経済や市場も(人間も含め)自然法則に支配され、その流れを理解する方がより普遍的な理解ができると考えています。 適者生存というダーウィンの進化論の考え方や生物の感覚の認知に起因する棲み分けがマーケティングでいう差別化に通じることなど、殆ど経営学としては語られない理論の構築をしながら、実践面での成果を追及しています。
 
さて、楽天が創業された1997年、米国で amazon.com は累積顧客数を150万、売り上げを前年の$15.7 million から $147.8 million (838% 増) に急伸させます。
この規模でサイトの訪問数は、米国でトップ20位でしたから、既にこの時点で米国にはインターネットショッピングは定着していたといえます。
 
三木谷氏は米国での留学経験等により、インターネット経由でモノを購入するという流れは確実に日本にやってくると確信していたことでしょう。
 
ショッピングモールの発展は、時代のトレンドであり間違いなく日本にもやってくる。 この当時インターネットの世界では クリティカルマス(臨界量) といわれる多数を握ったものが勝利するといわれており、楽天も出店者数とユーザ数で突き抜けたショッピングモールが全てを握るとの戦略のもと、店舗数の拡大を進めます。
では、創発経営的視点で楽天の成功要因を分析するとどのようになるでしょうか?
 
 
 

創発企業経営 (14) 楽天の事例

2012年07月18日 | 経営
現在この世に創発経営という方法論がある訳ではありません。 現在進行形で経営理論を作りながら、実際の事業に応用する方法論を模索しています。
 
そのために過去にあった創発的といえる経営者や企業活動の例を学ぶことは有益であろうと思います。 そうした例を幾つか挙げてみます。
 
ケース1 楽天の創業時の戦略
 
以下、三木谷浩志著 「成功のコンセプト」からの引用です。

この本が書かれた2007年は、楽天の出店者は20000店。 流通総額は1兆円。 インターネット企業としては世界6位の規模になったと述べています。 しかし1997年の時点、開業当時の出店数は13店舗。 1か月に4, 5店の出店者を獲得するのがやっとだったそうです。
 
当時、三木谷氏は楽天の出店料を当時としては格安の月5万円に設定しました。 当時、三木谷氏はインターネットの世界では、出店者数とユーザ数で突き抜けたショッピングモールが全てを握ることになるとの戦略のもと、店舗数の拡大に突き進みました。
 
三木谷氏はこの出店料の大幅値引を 「僕の予想した "未来へのビジョン" 通りに世の中が動き、インターネットショッピングが日本で普及して初めて成り立つ戦術だった」と述べています。
 
そして、「10年後の世界を想像しながら現在のビジネス全体の戦略を立てることはスキーをすることに似ている」といいます。
 
「スキーに喩えれば、目的地の遠くの森を眺めてコースを決めると同時に、足元のスロープ状態はいつも正確に把握しておかなければいけない。つまり、足元に現れる予測不能のコブやアイスバーンを上手に乗り越えていかなければ、どんなに遠くまで見通す鋭い目を持っていても目標である森に到達することはできない。 同時に遠くの景色を眺めていなければ、いくら足元のコブを上手に滑ってもやはり森に到達することはできない。」
 
そうして毎日営業努力を続けるうち、創業1年後に出店数が100を超え、これを境に出店者数が急増し始めました。
 

創発企業経営 (13)

2012年07月16日 | 経営
また少し横道に逸れますが、1999年に始まった日産リバイバルプランは、企業再生或いは国家財政の再生にも利用できる見事な手本のように思います。   その時の資料をPDF で読むことができます。

まず過去の業績不振の原因が分析されています。

  1. 利益追求の不徹底
  2. 顧客指向性の不足
  3. 機能、 地域、 職位横断型業務の不足 機能、 地域、 職位横断型業務の不足
  4. 危機意識の欠如
  5. 共有ビジ ョ ン や共通の長期計画の欠如 共有ビジ ョ ン や共通の長期計画の欠如

これは改善可能であり、再生の可能性大と評価しています。 多くの企業であいまいにされがちな問題をきちんと分析しているので、どういった問題を改善すればよいか明確です。 

そのうえで、コミットメントとして以下を掲げています。

  1. 2000年度 黒字化
  2. 2002年度 営業利益 4.5% 以上
  3. 2002年度 1999年度比で有利子負債を50%削減 (1兆4000億円を7000億円に削減)

これを実現するためのリストラ策として以下が挙げられています。

  • 人員削減 : グロ ーバルレベルで21,000人
  • 3か所の車両組立工場閉鎖。 2か所のユニッ ト 工場閉鎖。
  • 車両プラットフォーム数を現行の24から15に削減。
  • 3年間で 20%の購買コ スト 削減
  • サプライヤー数を50%削減 (1145社から600社)
  • 自動車以外のノンコア事業の株式及び資産の売却。

こうした政策によるコ ス ト 削減効果として1 兆円、ノンコア事業の資産売却で5000億円が見込まれており、これだけで有利子負債1兆4000億は帳消しにできる内容でした。   実際、コミットメントと呼ばれた期限付きの目標は、全て前倒しで約1年早く全て達成されました。

ゴーン氏自身は北米のミシュラン社の部門経営再建とルノーでの不採算事業所の閉鎖や調達先の集約などにより、黒字転換の実績があり、再建請負人として実証済みの経営者とも云えます。

これを見て、東京電力ではなぜこういうプランが出てこないのか? と思う人がいるのではないかと思います。

電力事業は競合のいない独占ですから、負債が出たら値上げして使用者に負担を求めればよいと考えるなら、日本政府の国家財政が悪化したら、増税して国民に負担を求めればよいという考え方とよく似ています。

当たり前のことですが一家の家計でさえ、苦しくなったら最初にするのは節約です。 人口が減少する日本には、なくてもよい団体、施設や設備はいくらでもあると思います。

またルノー日産のCEOになったゴーン氏は27歳ミシュランフランスで工場長を、31歳でブラジル・ミシュラン社の社長を経験しています。 日本企業でこの人事を実行できる企業はないでしょう。

こうした問題の根本は同じ理由であると思います。 それは既に権益を得てしまった人がそれを手放そうとしないからです。

経済学者の故森嶋通夫氏は1999年に出版した 「なぜ日本は没落するか」 の中で次のように記しています。

現在の日本が被っている障害は、ある日本人が私に教えてくれたように、複雑骨折の状態であるというべきであろう。 そしてどしてそういう大怪我をしたのかという原因を探求すれば、それは心因性の --- よくいえば慢心、正当には過剰貪欲による --- 過食症だといえよう

この本が出版された同じ年、一企業の過食症の治療のために招かれたのは、海外で経験を積んだ経営者(指導者=インストラクター)だったという見方をすると、この事例は多くの示唆に富んでいます。


創発企業経営 (12)

2012年07月15日 | 経営
組織変化管理という学問領域における創発的変化(Emergent Change)の枠組みにおいては、組織変化はマネジメントにより計画されたものとして起こるものではなく、現場で日々行われる選択による創発的な変化により発生すると考えられます。 このため組織の経営者の仕事は、変化を作り出すことではなく、現場が何を言っているか、それが何を意味するかを理解し承認することであると考えられています。
 
これとは対照的な考え方である計画的変化(Planned change)を組織のトップは作り出すことはできるでしょうか?
 
組織変化の例として日産のV字回復は有名です。 しかし、ゴーン氏による日産リバイバルプランの中で5000億円のコア事業以外の資産売却があったことはあまり焦点が当てられていません。  これは、ゴーン氏を社長に迎える以前に当時の経営陣が資産売却の準備を整えていて、あたかもゴーン氏が主導したようにしてV字回復を印象付けた演出でもあります。
 
コストカットはもとも堅実な利益創出の方法です。 統制は痛みを伴うものの統制不能ではありません。
 
統制が難しいのは、市場や社会変化の潮流を読んで自らの組織を潮流に乗せ、成功軌道に向かわせることです。  しかもこの潮目はグローバルスケールの潮流であり、伝統的な企業の経営者に読み切れる流れではないかもしれません。 実際、これができないが故にシャープ、ソニー、パナソニックといった日本のエレクトロニクスメーカが巨額の赤字に苦しんでいます。
 
「創発」とは元来、生物学、特に進化理論の用語であり、進化のプロセスで「これまでのプロセスから論理的に説明することの出来ない進化」を意味します。 また「創発」とは、ひとつひとつの小さな力が想像以上の総和をつくることを意味します。
 
ここでの企業の創発変化とは、論理的には説明できない社会変化の事象をとらえて、変化の潮流に上手に乗ることにより、小さなエンジンを積んだ船を高速で動かすイメージです。 別のたとえをするなら、小さな流れがいくつも集まると大きな流れになりように、ひとつひとつの小さな流れが集積されることにより想像以上の総和としての大きな流れをつくることを意味します。
 
砂の上に溜まった水たまりの水をスコップで水路を作って、流した経験はあるでしょうか?  
スコップのひとかきはわずかな力です。 一度水が流れ始めると、流れ込んだ水は想像以上に力強い流れを作ることがあります。  流れが砂を削って、水流を力強くし、周囲の水溜りの水も流れ込んでくるからです。
 
その時どこをスコップで削るかが問題になります。
 
その見極めを 創発企業経営 と呼んでいます。 一期一会の前例のない将来に向けての挑戦です。
 
これに比べたら大企業の行う計画的変化は、異なる難易度があるとはいえ、前例に従うことのできる容易なものに映ります。  予測できることを実施しなければ経営者は怠慢ということになります。   東京電力の場合は計画的怠慢でしょうが..

創発企業経営 (11)

2012年07月09日 | 経営
企業の変化をマネジメントには、計画的変化(Planned change)と創発的変化(Emergent change) があり、計画的変化はトップダウン、創発的変化はボトムアップのアプローチとも言えます。
 
日本の新郷重雄の名前を冠したShingo Model による組織変化プロセスは、典型的なトップダウンによるビジョンとミッションが示された後、一転してボトムアップによる社員それぞれの行動が求められています。
 
わたしはこれを最初に見たとき 「どうしていきなりトップからボトムに組織変化のプロセスが移行するのか?」 理解できませんでした。
 
突然、何の脈絡もなく最上位のトップからボトムの現場に話がジャンプしているように思えました。 仮に誰もが納得する素晴らしいビジョンが示されたとしても、これまでの継続ではなく組織変化を起こそうとする企業が、組織のビジョン、ミッションが決まったからといって、すぐに日々の行動が変わるでしょうか? 正直なところ、この考え方には大きな違和感がありました。

これは現実性がないな.. と思っていたところ一冊の本に行き当たりました。  ジェーム・C・コリンズ著 「ビジョナリ―カンパニー」です。

そこにはこうあります。

  • 組織には責任を持って仕事を成し遂げていく「規律」が必要である。
  • 良い規律とは、わざわざ規則などに定めなくとも、従業員が自律的に行動する「規律の文化」と呼べるようなものである。
  • 規律の文化を作るにはまず基本理念に沿って自ら行動できる従業員を育成することが重要である。
  • 次に仕事の基本的なシステムやプロセスを確立し、それを順守した事業運営をする。

これは Shingo model による組織変革プログラムの、組織の構成員が「原理(意味合い)を理解することにより -> システムとして応用され ->ツールがつくられる」と殆ど同じ内容です。

一つ異なる点は「基本理念に沿って自ら行動できる従業員を育成する」という件です。   実際のところこれがビジョナリ―カンパニーで語られる「偉大な組織」を作る最重要課題ともいえるでしょう。 その課題を実現した経営者が偉大な経営者 - 例えば、アメーバ経営を実現した稲盛和夫氏 - と呼ばれるのでしょう。

トップダウンの理念を現場の行動にリンクし、日々の責任ある行動に転化するには、従業員の力が必要です。 従業員の力がなければ、あたかも柱のない建物の上にトップの理念が浮かぶ - 現実にはあり得ない組織が出来上がることになります。 そうした組織が長らえることは困難でしょう。

結局のところ、何とかモデルとかいかにも効果的な道具を借りてきても 「理念に沿って自ら行動できる人の育成ができる」ことが良い組織の実現の肝心要のところであるならば、真の経営とは実際、骨の折れる仕事だと思います。

創発企業経営 (10)

2012年07月08日 | 経営
Shingo Model では成功する企業はリーダーが継続的な改善を実行する行動をとることが求められます。 これは「リーダーが組織文化をリードする」と譬えられます。  つまりリーダーが principals (組織原理)を定め、組織の構成員がその原理に沿って行動を一致協力することが成功のカギであるといいます。    Principals (原理) とは組織におけるビジョンやミッションであり、組織文化は正しい原理に基づき構築されなければなりません。
 
この内容に異論を挟む余地はないように思います。
 
しかしながら、リーダーが組織のプリンシパルを定めるならば、リーダー個人の持つプリンシパル(器)以上の組織はできないことになります。  プリンシパルは、人が行動するための主義・根本方針であり、先回取り上げた、森嶋通夫氏は自分の人生の主題は「意地」 - プリンシパルであったといいます。
 
森嶋氏は、人が生きていくには2つの社会 - 利己的合理的に計算して生きる社会(利益社会)と義理人情を重視し利他的奉仕的に行動しなければならない社会(共同社会) - に出入りしなければならないといいます。 しかし、人生はそれだけではない。 自覚した人間は プリンシパル - 主義主張 を持っているといいます。
 
そして、人間には自分のプリンシパルに従って行動する人間とそうでない人がいる。 積極的悪人や有徳の士は前者に属するが、その他多くは「普通は善人だが、気が弱いためにいざというときに道徳的に腰抜けになってしまう人」が大勢いる。 こういう人は自分のプリンシパルを持っていない人であると。
 
このような人は積極的な悪人ではないが、消極的な悪人である。 日本人はプリンシパルを持たず、その場、その場の和を尊ぶからそういう人が多く、右についたり左についたりする ..... そういう人が多ければ、人は個人的にしばしば煮え湯を飲まされる。 こういうプリンシパルを放棄した人間を、森嶋道夫は、一方で合理的打算的であると同時に、他方で共同体の心情に流されて浮遊しているといいます。  (森嶋通夫 著 智にはたらけば角が立つ―ある人生の記録 より)
 
大企業の社長が「プリンシパルを持った人であるか? 」といえば大いに疑問です。 世襲である場合を除けば、プリンシパルを持った社員がトップにまで登りつめる可能性は非常に少ないと考えられます。 プリンシパルどころか企業の不祥事は日常的ともいっていいほど蔓延しています。 特に国内では、 同族経営、上層部が親会社や省庁との関係が深い企業の場合、特にこの傾向が顕著であるといえそうです。 このような企業の一部トップにはプリンシパルは必要ないですし、共同体の心情に流されて浮遊するには邪魔でしかありません。
 
これは特に国内の企業に限ったことではありません。 最近は、企業にファンドが出資しているケースがよくあります。 ファンドが企業を所有する理由は、企業価値の増大により、買収した価値より高く転売することです。 その場合、企業価値を高められそうな或いはその実績のある経営者が、外部から招かれるケースがあります。
 
その時、そうした企業のプリンシパルは当然のように「株主価値の増大」となります。 組織としての使命は「目標利益を達成する」こと。 品質改善も顧客満足度の向上も突き詰めればすべてはお金のためということになります。
 
ここで書いたことは作り事ではなく、現実です。 人が行動するための主義・根本方針がこれでは淋しい感はあるにせよ、雇われ企業トップの使命としては正直なところだと思います。  
 
Shingo Modelは日本の新郷重雄の名前を冠しています。 興味深い点は、これまで見た限りでは典型的なトップダウンの計画的な企業変化モデルと思われるShingo Modelの組織変化の実現には一転して以下に示す10の原則に基づくボトムアップによる行動が求められていることです。
 
The Shingo Principles of Operational Excellence
 
1. Respect every individual
2. Lead with humility
3. Seek perfection
4. Assure quality at the source
5. Flow and pull value
6. Embrace Scientific Thinking
7. Focus on process
8. Think systemically
9. Create constancy of purpose
10. Create value for the customer
 
尊敬、謙遜、完全の追及... 非常に高い動機づけを必要とする行動原理ばかりです。 その時、組織の構成員が「株主価値の増大」を自身の行動のプリンシパルとして受け入れ、「株主価値の増大」のために高レベルの責任ある行動を果たせるかは疑問が残ります。
 
その意味でも、Shingo Model のいう 「組織文化は正しい原理に基づき構築されならない」「リーダーが組織文化をリードする」は正しいと言えそうです。 

 


森嶋通夫 血にコクリコの花咲けば

2012年07月06日 | 経営

ノーベル賞のうち唯一経済学賞の日本人受賞者はいません。生前、経済学賞に最も近いといわれた日本人である森嶋通夫 元LSE(ロンドンスクールオブエコノミクス)教授の著作を紹介します。 

森嶋氏が海軍に少尉として入隊し、通信科で暗号士として任務に就くのですが、このとき、組織に位は下でも、戦歴豊富な兵曹長がいました。   森嶋氏はこの部門での自らの課題を、「ゼロから出発して、いかにして彼を追い抜くかが、私に与えられた課題であったといってよい。」と言います。

現在の企業社会で、職位が上で中途入社する人がいます。  職位が上ならば、経験がなかろうが、短期間のうちに、既存の社員を抜き去ることがこうした人たちの課題です。  最近は組織の最高責任者を外部に求めるケースがあります。 トップで入ったら、その組織の人たちが納得する実力を示すのがトップで入った人の責任です。   実務能力でなくてもよいのですが、その組織の社員も上の人の振る舞いはよく見ています。   社員がトップの人のために働きたくなるような組織だったら最高のリーダーです。

森嶋氏はこうした場面での課題設定に対し、明快な行動を示します。 本から引用します。


こういう状態の場合、虚勢を張ってはならない。 私は川田兵曹長に相談した。

「軍隊で上官が下官の指揮下に入ることは軍規違反であるが.....このような仕事では実力のない上官は下官のものに容易に理詰めで打ち負かされてしまう .... 二月には指揮が取れるようにするから、一月中は私も兵隊、ないし「暗号士見習」だと思ってほしい」

川田兵曹長は話しの要点がわかると「あんたが少尉だからといって、気にせんから、充分勉強してもらいましょう。 堅苦しく考えずに、仲良くやっていきましょうや」ということになった。

 

この間、森嶋氏は遮二無二働き、わずかの期間で暗号作成器を開発し、約束した二月になると、暗号事務の指揮をとり、暗号の解読でも、川田兵曹長に挑戦して勝つようになります。

「経験者に対しては自分のほうから敬礼せよ」

森嶋氏はLSEに赴任してからもこの原理を適用しました。 若い教授だった私の下には年長の下位の人が大勢いたからです。

森嶋氏は人生で大切なことはそれぞれ自身のプリンシパルであるといいます。 しかし、日常生活で大切でないことに(人のうわさや評判、些細な言葉のあやに)押しつぶされるケースは多々あります。

大切なものを守るため、考えたことを行動に起こせるか?  自ら限界を設けたり、諦めたりせず、素直に人に接する方法や言葉使い。 これは心の働きであり、心をどう制御するかでどうにでもなるものです。


創発企業経営 (9)

2012年07月02日 | 経営
企業の変化をマネジメントする方法には、計画的変化(Planned change)と創発的変化(Emergent change) が知られています。
これからどちらのアプローチが現代の組織に適しているのかについて触れてみたいと思います。 その前に、今月中国で興味深いセミナ-に参加する機会がありました。
 
それはある米国企業が主導する組織変化に関するプログラムで Shingo Model に基づくものでした。
 
Sihngo とは日本の技術者、新郷重夫博士(1909 - 1990) のことで、新郷氏の功績を称え、ユタ州立大学を中心に設立された新郷賞は、「製造業のノーベル賞」とも称されています。  新郷氏の業績は日本国内よりも海外、特にアメリカで高い評価を受けていますが、このセミナーに出席するまで私は、新郷氏のことを全く知りませんでした。
 
Shingo model による組織変革プログラムは、組織の構成員が以下の3つの関係を理解することにより起こるといいます。
 
  • Principals (原理)
  • System (システム)
  • Tool (ツール)
 
これは1940年代にフランスの科学者により唱えられた 「人は方法論の背後にある意味を理解した時、学習が起こる」という考え方に基づいています。 上記の3つの関係が次のように組織内で発展することにより業務の改善が定着するというものです。
 
原理(意味合い)を理解することにより  -> システムとして応用することができ -> ツールがつくられる