ダイエーの創業者 中内功氏と京セラの創業者 稲盛和夫氏。
中内氏は「会社を自分の分身と見なしていた」といいます。 創業社長は会社をそのように見る傾向が強いようです。
愛着が良い結果を生むこともありますが、最大の問題は、自己中心に社会を見る傾向を生み、環境をありのままにみられなくなることです。
これが社会変化への対応を遅らせ、競争力を弱める経過は90年代以降の流通業界におけるダイエーの凋落に見て取れます。
一方、稲盛氏は会社経営の目的は、自分のためではなく従業員とその家族の生活を守っていくことだと定めた。
そしてドラッカーは、株主が、会社を自分の所有物として利ばかりを得ようとした結果、「誇りをもって働いていた人は傷つき、本来発生すべき富も消失した」といいます。
ドラッカーは必要な経営を「組織の使命と目標のための経営」と呼んでいます。
会社に所有者があるかと問われれば、所有という方向を目指すことにより本来あったはずの富が失われるというパラドックスの理由の仔細は別の機会に譲るとしても、それは確かに起こるものであり、それに気づいて修正を行えるかは、経営者の資質とも言えます。
昨年ソフトバンクホークスが日本一になった福岡ヤフードームは、かつて、中内功氏の発案でツインドームとして構想されていたそうです。 今は、ダイエーグループからの売却を経て所有者は変わりましたが、福岡の人が集まる場所として変わらずそこにあります。 つまりは一般の人にとっては誰が所有しているということはどうでもいいことで、本来あった使命や目的が生きていることが大切なのでしょう。
「所有」とは何を意味するのか? 次のような言葉があります。
これはあなたのところに来たものである
これは私のところに来たものである
あなたのものわたしのものとは言わないように。
そうすれば、
消えていく輝きを悔いることはないだろう。
会社の所有者の項 (了)