創発企業経営

起業13年目の会社の経営、事業報告

会社の所有者 (3)

2011年10月06日 | 経営

良質の経営者は、組織のミッションを実現する媒体に徹することができる。 そこにはエゴがない - 以下はその実例です。

「会社の目的とはいったい何だろうか」

私は改めて考えざるを得ませんでした。 しばらくの間、悩み続けた結果、私は会社経営の真の目的は、エンジニアである私の夢を実現することではなく、従業員とその家族の生活を守っていくことだと気付かされたのです。

その時から、私は「稲盛和夫の技術を世に問う」という当初の目的を捨て去り、京セラの経営理念を「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」 と定めました。

このように経営の目的を明確にした瞬間から私には何をするにも迷いがなくなり、みんなのためにいかなる苦労もいとわないという、新たな決意が湧いてくるのを感じました。 

それ以来、私はいい加減な仕事をしている従業員を見つけると、「あなたを含めた全従業員の幸福のために会社はあるのだから、みんなで一生懸命に働かなければならない」 と叱るようになりました。

  稲盛和夫著 「高収益企業の作り方」日本経済新聞社 17-18pp

稲盛和夫氏は、京セラ創業のみならず、当時独占企業であったNTTに対抗するKDDIを設立した戦後日本の名経営者でもあります。 なぜそんな大きな仕事ができたのか?  ここにその答えがあると思います。

 


会社の所有者 (2)

2011年10月01日 | 経営

ドラッカーは企業の所有者の責任について、3つの定義を述べています。

1) ステークホルダー(利害当事者)のための経営
ひとつめは、 「株主、顧客、従業員、供給業者、地域社会の間の利害をバランスさせる」という、ステークホルダー(利害当事者)のための経営という考え方。

ドラッカーによればこの定義には、成果についてもバランスさせるという言葉についても曖昧で、企業の所有者がマネジメントに仕事と成果の責任を果たさせる責任構造が示されていないといいます。 結局、利害当事者の利益をバランスさせる経営を行っている企業は、今日、一つもなく、このタイプのマネジメントは長続きしないといいます。

2) シェアホルダー(株主)のための経営
もうひとつの定義は、株主の価値の最大化と利益のための経営です。ドラッカーはこれも批判します。 株主価値の最大化とは(半年から1年以内の)短期に株価を高くすることを意味し、それ以上の長期ではない。 このような短期利得の追求は、論ずるまでもなく弊害が多く、誤った目標であるといいます。

3) 「富の産出能力」を最大化する - 組織の使命と目標のための経営
ドラッカーはうまくいかないマネジメントに対して、すでに成功事例があると言います。 ドイツや日本の企業は、所有権は機関投資家に集中しているにもかかわらず、企業の所有者は自らマネジメントを行っていない。 しかし全体としては戦後40年間うまくやってきた。

これらの機関投資家は、「富の産出能力」を最大化しようとした。 この目標こそが、短期、長期の成果を統合し、マーケティング、イノベーション、生産性、人材育成などのマネジメントの成果を財務上の成果に結びつけ、株主、顧客、従業員などのあらゆる利害当事者を満足させる上で必要なものである。

そして、具体的には、組織の使命と目的から8つの領域に関する目標の達成がマネジメントの責任であるといいます。 その8つの目標は、マーケティング、イノベーション、人的資源、資金、物的資源、生産性、社会的責任、そして必要条件としての利益の目標です。

経営の責任を、その企業にコミットして長期的に経営者に委託するという日本の経営についてのドラッカーによる賛辞がありましたが、もちろん全部の企業がうまくいっているわけではありません。  うまくいっている企業はマネジメントの責任を果たしてきた。そうでない企業は果たしていなかった。  日本政府や政権党はどうか? 組織や社会に対するマネジメントの巧拙の違いはどこから来るのか? 

ドラッカーは組織の使命と目標のための経営が 「富の産出能力」を最大化するといいます。 ではそれを実行する経営者とはいかなる存在か?

経営者は組織の使命と目標の実現に責任を持つ人のことです。  会社の所有者ではない経営者が結果を残すことができたのは、まさに非所有による意思決定と行動の自由が、短期、長期の成果を統合し、マーケティング、イノベーション、生産性、人材育成などのマネジメントの成果を財務上の成果に結びつけ、株主、顧客、従業員などのあらゆる利害当事者を満足するために必要だったと考えられるのではないでしょうか?

複雑な事象に対処するとき、何らかの制約 - 特に所有欲に縛られるなら決定の純粋さに曇りが出るばかりでなく利害当事者の協力を得るのは非常に難しくなります。 経営者の発言はエゴの産物か、組織の使命と目標のためのものか経営者の周りの当事者は敏感に理解します。

良質の株主は良質の経営者に経営を委託できること。 そして、良質の経営者は、組織のミッションを実現する媒体に徹することができること。 そこにはエゴがありません。 

これは、創発経営の基礎になります。