創発企業経営

起業13年目の会社の経営、事業報告

創発企業経営 (7)

2012年05月27日 | 経営
経営学は、帰納法の知識の集積といえます。

経営学では、経済学とは異なり、企業や経営の成功例を理論化、普遍化する手法が取られます。
創発的変化の興味深い例を一つ挙げます。それは台湾と中国との関係です。

1996年に台湾では直接選挙で総統が選ばれました。中国共産党にとっては、直接選挙の仕組みは、明らかに現体制とは異なる仕組みであり許容できないものでした。 この時中国は台湾海峡でミサイルを発射し、台湾を威嚇、米国の空母が派遣される事態になりました。 中国は台湾を中国の一部と見なす一方、台湾は中国とは異なる制度を志向してきました。 台湾から見た中国の政治体制は脅威でした。

その一方、社会的に何が起こったかといえば、ここ10年ほどで台湾企業が大量に中国に進出、100万人もの台湾人が中国に居住したのです。 こうして台湾にとって中国は経済的に不可欠の存在となってしまいました。

これは、政治的な対立とは別に、ビジネスの現場では、日々の事業や取引の必要性を背景に活動が行われていることです。 台湾企業が安い人件費を求めて中国本土に進出した個別企業の活動の蓄積が、遂には経済面では切っても切れないほどの経済的融合関係にまで発展した例といえます。

水の一滴がコップの水をあふれさせるように、秒針の刻む針が1日、1か月の蓄積となるように目に見えない小さな変化が社会を変えているという現実は、人間の想像力の中で作られる「計画」を遥かに超えた変化を生み出すと考えられます。

個々の小さな行為の総和が想像を超えたパワーや結果を生むことを「創発」という。この概念が世界を変える力なのだ。



米倉誠一郎著 創発的破壊 未来をつくるイノベーション


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