情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

検察官は裁判官ではないⅡ~冤罪防止策は「マイナス証拠も検討せよ」、でも不利な自白調書は出すな?

2007-08-18 09:25:55 | 適正手続(裁判員・可視化など)
 
 
 昨日、最高検が「任意性、信用性に問題がある自白調書は、疑問を抱かれたときのダメージが極めて大きく、証拠提出しないという選択もあり得る」との方針を決めたことは、検察官が自らを判断者である裁判所と同視しているもので、許し難い旨書きました(ここ←クリック)。ところが、他方で、最高裁は、冤罪を防止するには、【犯罪事実を認定するのにマイナスになる「消極証拠」を軽視】することなく、【消極証拠から目を背けず証拠を慎重に総合評価すること】が大切だという結論を出していることが分かった。8月10日に各社がニュースとして流していたが、8月15日の読売新聞が上記のような丁寧な特集記事を書いている。

 それによると、報告書のタイトルは、「捜査・公判活動の問題点等について」と題するもので、A4版19頁。8月10日に公表されたというが、ウェブサイトには掲載されていないようだ(現物はまだ見ていません)。

 富山県氷見市の婦女暴行冤罪人違い事件(有罪確定服役後真犯人が判明)、鹿児島県議選の「踏み字」自白強要捜査(無罪)という二つの事件を踏まえて作成したものらしい。

 報告書は、【犯罪事実を認定するのにマイナスになる「消極証拠」を軽視し】たことを反省し、再発防止策として【消極証拠から目を背けず証拠を慎重に総合評価すること】を掲げている。

 すばらしい、ブラボー、トレビアン!

 では、なぜ、同じ最高検が、【自白調書は、任意性などを否定されて無罪判決につながるケースもあ】ったことを踏まえて、【「任意性、信用性に問題がある自白調書は、疑問を抱かれたときのダメージが極めて大きく、証拠提出しないという選択もあり得る」との方針】を打ち出したのか?

 冤罪を防止するためには、判断者である裁判所に対し、問題のある自白調書も含め、全ての証拠を出すことが重要なのではないか?

 はは~ん、そういうことか。自分たち検察官が反省をして自分たちがマイナス証拠も含め慎重に検討して「有罪」だと結論づけたら、裁判手続は単なるセレモニーに過ぎないから、無罪につながるような証拠は隠して徹底的に有罪を印象づけようっていうことかですか?

 だから、再発防止策においても、慎重に証拠を検討するという一方で、公判の季刊については、【積極的に公判前整理手続きを活用し、争点を十分に整理して早期公判を実現する】という冤罪製造方向に向かう主張をするわけですか。

 【積極的に公判前整理手続きを活用し、争点を十分に整理して早期公判を実現する】っていうことは、分かりやすくいうと、「自分たちが有罪と判断した以上、がたがたいわず、裁判はとっとと終わらせる」っていうことですもんね。

 でも、あなたたち検察官は捜査をも担当する側なんだから、当然、予断・偏見があるわけでしょう。判断においてはそういう予断・偏見があってはいけないからこそ、起訴状一本主義(事前に裁判官には起訴状以外の証拠を見せないで偏見を持たずに裁判に臨ませるシステム)がとられてきたのではないしょうか。

 つまり、あなたがたが、予断・偏見に基づいて、「有罪」だと判断しても、本当に「有罪」かどうかはまったくもって疑わしいわけです。

 しかも、あなたがたは自分では反省したって言うけど、「告訴取下書捏造事件」を起こしたばかりでしょ。人がやることですから、完璧にはいかない。だからこそ、不正を防ぐための「仕組み」「システム」が必要なんです。

 冤罪を防止するには、マイナス証拠も含め慎重に検討することが大切なのは、最高検も認めるわけでしょう。それなら、慎重に検討する場所である裁判所にマイナス証拠も含め全ての証拠を出すことが冤罪防止の最良の「システム」であることも間違いないでしょう。

 最高検には再考願いたいし、単なるセレモニーの場だと宣言された裁判所も最高検のこの姿勢には抗議をしてほしいし、弁護士会も裁判をボイコットするくらいの覚悟でこの最高検の態度には徹底抗議をしてほしい。

 市民の皆さんも、おっそろしい冤罪製造システムが日本にこれ以上増えないように抗議の声を最高検へ!

ちなみに、最高検のウェブサイトはこちら(←クリック)。【皆様方の貴重なご意見等については,今後の検察運営の参考とさせていただきます】とのことだ。 







 


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1 コメント

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中日新聞社説 (ゴンベイ)
2007-08-19 06:42:40
中日新聞:冤罪防止 反省てこに基本見直せ:社説(CHUNICHI Web)2007年8月14日
http://www.chunichi.co.jp/article/column/editorial/CK2007081402040826.html
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