情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

メディアのインサイダー取引を予防することはできるのか~NHKインサイダー取引疑惑に寄せて

2008-01-19 12:14:49 | メディア(知るための手段のあり方)
 NHK職員によるインサイダー取引疑惑が大きな波紋を呼んでいるが、じゃぁ、どうすればこのようなインサイダー取引を予防できるのか、というと、非常に心許ない。たとえば、某社が提携とか不祥事について発表する際、どうしても取引時間内に行わざるを得なかったときには、発表の内容を知った記者が報道以前に知り合いに情報を流し、インサイダー取引をする可能性はある。これを完全に予防することはできない。もっといえば、提携や不祥事を発表する会社の役員や従業員だって、情報を流すことはできる。

 内部の倫理規定を厳しくしたとしても直接的な効果には限界がある。結局は、インサイダー取引に手を染めた者に対する処分を厳しくして、インサイダー取引の費用対効果をマイナスに見積もらせることで予防的効果を高めるくらいしか対処法はない。

 しかし、だからといって、実は、個別的な問題が解決するわけではない。その情報を知ったメディアがいつの時点でそのニュースを流すのか、それを個別の株主がいつ知るのか、この当たりの問題を考え始めると、インサイダー取引の問題は非常に複雑になってくる。

 報道機関関係者が事前にニュースを知った場合、インターネットやテレビ全局を監視してどこかが流したら、直ちに売買をする…こういう手段をとることもできる。その場合、これをインサイダー取引として処分できるのだろうか…。

 そもそも、デイトレーダーばやりだが、本来、株というものは資本を広く集めるとともにリスクを分散するためのシステムのはず。しかし、実際には、博打のような考え方や細かく取引をして儲けることを狙って取引に参加することは可能だし、そういう気持ちで参加する人も多いはず。このまま放置すると、株への投資の意味が大きく変貌してしまうようにも思える。

 実は、メディアによるインサイダー取引の問題は記者クラブの問題との関係で、随分前から関心を持っていた。記者クラブ容認派は、重大な経済ニュースを扱うからこそ、身元のはっきりした記者以外には、門戸を開くわけにはいかん、と言ってきた。たとえばニュースを報道することに縛りをかけ、解禁前にレクチャーを受けることもあるからだ。

 制度論としてそれには一理ある。記者としての生活が安定していれば、その職を失う危険を冒してまでインサイダー取引に手を染める可能性は低いからだ。これに対し、一般市民が参加すれば(特に経済的に困窮している場合)、インサイダー取引へのハードルは低くなるかもしれない。

 しかし、そうは言っても、メディアは、解禁後そのニュースをいつ流すのか、受け手はいつその情報を入手するのか…。問題は残るわけです。

 まったく考えがまとまりません。

 皆さんは、いかが考えますか?


【中国新聞(http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp200801190186.html)より】

 NHK記者ら三人による株のインサイダー取引疑惑発覚のきっかけは、証券取引等監視委員会による市場監視だった。三人が購入した回転ずしチェーン店「カッパ・クリエイト」株は、資本提携の発表前に不自然な値動きを見せていた。

 ▽株価上昇

 監視委のアンテナとして証券取引をチェックしているのが市場分析審査課だ。約三十人の職員が企業の株価に不審な動きがないか目を凝らしている。二〇〇六年七月から〇七年六月まで、インサイダーが疑われる取引だけでも八百八十四件を審査した。

 昨年三月八日、牛丼チェーンを運営する「ゼンショー」がカッパ社と資本提携をするという、NHKの「特ダネ」原稿を放送前に読んで株を買ったNHK職員。実は、インサイダー取引でカッパ社株を買ったのはNHK職員だけではない。

 ゼンショーから提携話を持ち掛けられていた別の回転ずしチェーンの元役員(課徴金納付命令済み)も、ゼンショーからカッパ社のグループ化を聞いて株を購入。

 カッパ社株は八日に千六百六十四円から千七百二十円まで上昇し、監視委の網にかかることとなったようだ。


 

 

★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
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1月17日にはNPJ/PEOPLE’S PRESS設立記念集会を開催し、多くの方に来場いただきました。ありがとうございました。近く、生中継していただいたアワープラネットTVでオンデマンド放送される予定です(http://www.ourplanet-tv.org/whats/2008/20080117_17.html)。