情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

年頭に、だれもが「テロリスト」として生まれてはいないことを念頭に置こう!

2008-01-01 10:50:18 | 有事法制関連
年頭の各紙社説を読んで、現代社会を考えるうえで、最も大切なこと、いわゆる「テロリスト」(以下、テロという言葉を使いたくはないが、本稿では使わざるを得ないので、「」に入れて使用する)は、「テロリスト」として生まれたのではない~Terrorists are not born as terrorists~という視点が欠如していることが悲しかった。読売、産経は、予想通り、新テロ特措法の成立が日本の責務であるかのような書き方をしている。

読売は、
【新テロ特措法案に限らず、外交上、財政上、あるいは国民生活上必要な政策・法案は、憲法に定められる「3分の2」再可決条項を適用して、遅滞なく次々と断行していくべきである。野党の問責決議を恐れる理由は、まったくない】
と書き、

産経は、
【野党や世論・メディアにも責任の一端はあるが、新テロ特措法案を筆頭に、あまりにも多くの懸案が先送りされてしまった】
と書いている。

残念ながら、毎日までもが、その仲間入りしたかのように、
【無責任では日本も同断だ。「テロとの戦い」では洋上給油の再開か別の貢献策か、与野党は対立したまま合意から遠い。外から見える日本の姿もまた、責任感の低下した内向きの国ではないのか】
と書いている。

朝日新聞は、この間の姿勢を象徴するかのように、平成20年を回顧しつつテロの二文字に触れていない…。

日本のメディアが不自由ながんじがらめの状態にあることはこれまで折りに触れ説明してきました(※1)。しかし、年頭の社説において、4大全国紙がどの社もいわゆる「テロ」が発生する原因に思いを馳せることができないことは本当に悲惨だ。

ニューヨークタイムズは、年末の社説で、「我々は、憲法を守ると誓った大統領が、その権力を市民に向け、諜報機関に裁判所の令状なしに、盗聴をし、Eメールを傍受して、アメリカ市民をスパイすることを認めたという現実を目の当たりにした(We have seen the president, sworn to defend the Constitution, turn his powers on his own citizens, authorizing the intelligence agencies to spy on Americans, wiretapping phones and intercepting international e-mail messages without a warrant.) 」、「私たちは、次の選挙では2004年とは異なり、アメリカの選挙民が、巨大な権力を、誠実で、原則的で、品位を持っている者に与えるだけの賢さを持つことを望むしかない(We can only hope that this time, unlike 2004, American voters will have the wisdom to grant the awesome powers of the presidency to someone who has the integrity, principle and decency to use them honorably.)」と書いている。

アメリカ国内でさえ、これだけのことが書けるのに、日本では、新聞と系列のテレビ局の生殺与奪権を政府に握られているため、まっとうなことが書けない状態が続いている。

そこで、ミクロなメディアなりに考えてみたい。人はいわゆる「テロリスト」として生まれるのではなく、「テロリスト」になる。それでは、なぜ、人は「テロリスト」になるのか?それも自爆攻撃をする「テロリスト」になるのか?

簡単なことだと思う。現世に幸せを求めることができないような環境にあるから自爆攻撃をすることができるのだ。

戦中の日本の特攻も、いずれ死ぬ、順番の問題だと思ったからこそ、多くの人が特攻に志願したのだと思う。もし、1945年8月15日に日本が降伏すると知っていたら、それでも、特攻に志願する人がどれだけいただろうか。

オウム真理教の地下鉄サリン事件は、日本における「テロ」事件として引用されることもあるが、現代の日本では、あのような組織でさえ、自爆攻撃をさせることはできなかった。自分の身を守りながらサリンを撒くことしかできなかった。

そのうえで、現在、自爆攻撃が行われている地域の日常生活に希望はあるのだろうか、それをよく考えなければならない。

「テロ」の原因を解決しようともせず、「テロ」を力で封じ込めることは、新たな「テロ」を生む原因となるだけだ。

「テロ」の原因を解決するには、「テロ」を決行しようと考えている集団が幸せな生活を送ることができるようにするしかない。

これに対し、「テロ」の背景にあるイスラム教対キリスト教という問題を重視する人もいる。単なる経済格差ではないという考え方だ。しかし、考えてほしい、ドバイに住むイスラム教徒が自爆攻撃をするだろうか…。

「テロ」の原因(国際格差)を放置しつつ、力で封じ込める方法は、国内的には、格差社会を維持しつつ、警察力を持って治安を維持しようとする形で現れる。そういう意味で現在の日本で外交と内政は一致している。犯罪者も犯罪者として生まれたわけではないのに、抹殺しろと罵声を浴びせかける社会とされてしまった…。

しかし、格差社会から生じる問題は、格差をなくすことで解決するべきだと考える人が、本当は、多数派を占めると思う。もちろん、労働組合バッシングなどのせいで、格差をなくすことが「甘えさせることになる」というような風潮があり、必ずしも、格差をなくせという声が多数派になっていないのが現状だろう。

ただし、少なくとも、格差をなくすことで解決するべきだという考え方が本来多数派を占めることは間違いないはずだ。そして、そうであれば、「テロ」問題も国際格差をなくすことで解決するべきだと考えるべきだと思う。

新テロ特措法案を認めることは、内なる格差を認めることにつながるように思う。

身内さえ勝ち組ならそれでいい、こう考えて、外なる格差のみならず、内なる格差を認めることもできるかもしれない。しかし、超リッチな層以外、いずれ、身内全体が負け組に落ちることになるかもしれない危険を常に伴う。

他方、「身内」という概念をどんどん広げて、ワーキングプアや無職者、あるいは海外の「テロ」予備軍にまでも、暖かい目を向ける選択もある。その場合、自分だけが豊かな生活を送るのではなく、少しやせ我慢をしてでも、他の人に幸せを分け与える覚悟が必要になる。

格差をそのままにしてミサイルを買うのか、それとも貧しい地域が自立できる産業を興すべく援助し格差をなくす努力をするのか、私たちは政府にそう迫らなければならないし、メディアにもそのような議論が欠けていることを責めなければならないと思う。


…駄洒落で始めた今年、当ブログの混迷度も深まるばかりか…(笑)
 (参照:「伝統?」http://blog.goo.ne.jp/tokyodo-2005/e/7d56e0e518febd3996f3e8a5cc24b3c4

※1:http://blog.goo.ne.jp/tokyodo-2005/e/59df2623d2dbe2c0c3569bd9862508df

◆冒頭の写真は、ドバイの夜景。アラブ首長国連邦公式ウェブサイト(http://www.uaeinteract.com/japanese/)より。








★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
★「News for the People in Japanを広めることこそ日本の民主化実現への有効な手段だ(笑)」(ヤメ蚊)
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