情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

規制改革会議の第2次答申は、人を搾取するための理論構築~現代の一揆・政権交代しかない

2008-01-04 08:50:35 | 労働問題
総理大臣の諮問機関である「規制改革会議」が年末(12月25日)にこっそりと発表した「規制改革推進のための第2次答申」には、おそろしいことが書いてある。労働者の権利を強くすると会社が権利の弱い者(非正規労働者)を採用する方向に走るから、権利を強くするのはよくないなどということが…。詳しくは、答申の本文PDF(※1)をじっくりと読んでほしいが、気になるところを次にピックアップしておく。


【163頁】
「平等」には、「機会の平等」と「結果の平等」の二つの概念が含まれる。前者はすべての国民に平等なチャンスが与えられることであり、後者は国民の能力や成果にこだわらず同じ結果が与えられることであるが、これには注意が必要である。「結果の平等」を重視しすぎると、懸命に働いても働かなくても、また成果の大小にかかわらず同水準の生活が保障されるため、勤労インセンティブの低下、自己研鑽投資の減少、技術やアイディアにおける創造性を発揮しようする意欲の減退といった副作用をもたらす。むしろ、「機会の平等」のもと、がんばっている人が報われる社会になっていなければ、個々人の能力は十分発揮されなくなり、社会全体が豊かになるチャンスは失われる。無論、機会の平等だけを貫くことは一部の階層にとっては、耐え難い「格差」を放置することになり、社会の安定が損なわれ、場合により犯罪などの社会コストを増大させることから政府が一定のセーフティネットを社会に備えておくことは必要である。

●ヤメ蚊コメント●
【一部の階層にとっては、耐え難い「格差」】…一部の階層だそうだ。もはや、階層が固定化しているってことを認めているわけだ。


【164頁】
日本の労働法制は労働者を強く保護するが、例えば解雇規制は解雇を厳格に規制し、かつ予見可能性が低いため、正規雇用においては、企業は従業員の生産性が仮に低くても、雇い続けるほかない場合も多い。一方で、非正規雇用において、例えば派遣労働における派遣期間制限や期間の定めのある雇用契約における期間制限等をはじめとする規制は、働き方の多様性を損なっている。正規雇用、非正規雇用にかかわらず、労働者と雇用者が十分に情報を共有した上で、お互いが納得ずくで選び取れるような様々な選択肢を確保することによって、やり直しや転職も容易になり、格差の是正も可能となる。

●ヤメ蚊コメント●
【お互いが納得ずくで選び取れる】…使う側は選べるだろうが、使われる側は選ぶことはできないんだよ。お互いが納得なんてことは、ごく一部の職種にしかないんだよ。

【164頁】
一部に残存する神話のように、労働者の権利を強めるほど、労働者の保護が図られるという安易な考え方は正しくない。場合によっては、既に権利を持っている人は幸せになるが、今後そのような権利が与えられにくくなるため、これまでよりも不幸になる人が出てくることにも注意が必要である。無配慮に最低賃金を引き上げることは、その賃金に見合う生産性を発揮できない労働者の失業をもたらし、同時に中小企業経営を破綻に追い込み、結果として雇用機会を喪失することになる。過度に女性労働者の権利を強化すると、かえって最初から雇用を手控える結果になるなどの副作用を生じる可能性もある。正規社員の解雇を厳しく規制することは、労働者の使用者に対する「発言」の担保になるどころか、非正規雇用へのシフトを企業に誘発し、労働者の地位を全体としてより脆弱なものとする結果を導く。一定期間派遣労働を継続したら雇用の申し込みを使用者に義務付けることは、正規雇用を増やすどころか、派遣労働者の期限前の派遣取り止めを誘発し、派遣労働者の地位を危うくする。長時間労働に問題があるからといって、画一的に労働時間の上限を規制することは、自由な意思で適正で十分な対価給付を得て働く労働者の利益と、そのような労働によって生産効率を高めることができる使用者の利益の双方を増進する機会を無理やりに放棄させる。


●ヤメ蚊コメント●
【無配慮に最低賃金を引き上げることは、その賃金に見合う生産性を発揮できない労働者の失業をもたらし】…最低賃金は、最低限の生活を保障するためのものだ。生産性の問題はもっとレベルの高い賃金の話だろうが。
【過度に女性労働者の権利を強化すると、かえって最初から雇用を手控える】【正規社員の解雇を厳しく規制することは、労働者の使用者に対する「発言」の担保になるどころか、非正規雇用へのシフトを企業に誘発し、労働者の地位を全体としてより脆弱なものとする】…脅しかい。そういう勝手なことをさせないために労働者の権利はあるんだよ。労働者と企業は対等な関係ではないからこそ、労働者には保護が必要なんだよ。それを対等ではないから企業は好き勝手するから、我慢しろってか…。
【一定期間派遣労働を継続したら雇用の申し込みを使用者に義務付けることは、正規雇用を増やすどころか、派遣労働者の期限前の派遣取り止めを誘発】…非正規雇用っていうのはあくまでも例外なんだよ。考え違いしていないかい。
【長時間労働に問題があるからといって、画一的に労働時間の上限を規制することは、自由な意思で適正で十分な対価給付を得て働く労働者の利益】…安くこき使われれば、どうしても時間を長く働いてでも稼ぎたくなるさ。安くこき使うことを問題とするべきなんだよ。


【165頁】
真の労働者の保護は、単純に「権利の強化」をすることによって達成できるわけではなく、むしろ、労働者が望まない雇用契約を押し付けられることがなく、知ることのできない隠された事情のない契約を、自らの自由な意思で選び取れるようにする環境を整備すること、すなわち、労働契約に関する情報の非対称、つまり、使用者側の情報が労働者に十分に開示されていない点を改善することこそ、本質的な課題というべきである。市場の失敗の原因、たとえば情報の非対称に関する必要にして十分な介入の限度を超えて労働市場に対して法や判例が介入することには根拠がなく、画一的な数量規制、強行規定による自由な意思の合致による契約への介入など真に労働者の保護とならない規制を撤廃することこそ、労働市場の流動化、脱格差社会、生産性向上などのすべてに通じる根源的な政策課題なのである。

●ヤメ蚊コメント●
【労働契約に関する情報の非対称、つまり、使用者側の情報が労働者に十分に開示されていない点を改善】…それで、そういう情報を知ったから、その会社に就職するのを辞めたとして、別のいい会社に就職することができるのか!労働契約を理解するうえでは、労働者側が圧倒的に弱い立場に立っているということを忘れてはならない。
【画一的な数量規制、強行規定による自由な意思の合致による契約への介入など真に労働者の保護とならない規制を撤廃】…労働者は弱い立場にいるからこそ、一定の数量的な規制が必要なんだよ。


あ~、もうだめ、これ以上コメントできない。はらわたが煮えくりかえる。

最後にこんな答申を出す特権階級、いや委員の方々の名簿をご紹介したい。

議長 草刈 隆郎 日本郵船株式会社代表取締役会長
議長代理 八田 達夫 政策研究大学院大学学長
委員 有富 慶二 ヤマトホールディングス株式会社取締役会長
安念 潤司 成蹊大学法科大学院教授
翁 百合 株式会社日本総合研究所理事
小田原 榮 東京都八王子市教育委員長
川上 康男 株式会社長府製作所取締役社長
木場 弘子 キャスター・千葉大学特命教授
白石 真澄 関西大学政策創造学部教授
中条 潮 慶応義塾大学商学部教授
福井 秀夫 政策研究大学院大学教授
本田 桂子 マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク・ジャパン プリンシパル
松井 道夫 松井証券株式会社代表取締役社長
松本 洋 アドベントインターナショナル日本代表兼マネジングパートナー
米田 雅子 慶應義塾大学理工学部教授 NPO法人建築技術支援協会常務理事

委員のみなさんは、人を搾取することに何らの痛痒も感じないんでしょうか…。

そして、政府も政府は12月28日の閣議で、この第2次答申について「最大限尊重する」と閣議決定した。あ、こちらの特権階級、いや人でなし、いや閣僚については、名簿を掲載するまでもないですよね…。


※1:http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/publication/2007/1225/item071225_02.pdf






★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
★「News for the People in Japanを広めることこそ日本の民主化実現への有効な手段だ(笑)」(ヤメ蚊)
※このブログのトップページへはここ←をクリックして下さい。過去記事はENTRY ARCHIVE・過去の記事,分野別で読むにはCATEGORY・カテゴリからそれぞれ選択して下さい。
また,このブログの趣旨の紹介及びTB&コメントの際のお願いはこちら(←クリック)まで。転載、引用大歓迎です。
なお、現在、こちらで(←クリック)、350円、1000万人寄付運動を展開しています。ぜひ、ご覧のうえ、行動にしてください。バナーは、SOBAさんの提供です。ご自由にお使い下さい。手のひらに何も乗っていない猫の手には、実は、知恵、呼びかける力など賛同するパワーが乗っているということです。まさに、今回の運動にぴったりですね。
   
1月17日にはNPJ/PEOPLE’S PRESS設立記念集会を開催します。吉岡忍さんの講演など…。詳しくは上のバナーをクリックして下さい。