情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

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憲法改正の手順はもう既定路線~国会図書館の資料の記述

2006-04-17 07:55:29 | 憲法改正国民投票法案そのほか
憲法改正国民投票法案で,自民党が当初,一括投票案に固執して見せ,その後,パッケージ案でOKだと「妥協」して見せたのも,全ては,既定路線であるかもしれないことが推測される文献が見つかった。その文献は,国会図書館の調査及び立法考査局が発行したシリーズ憲法の論点⑤「憲法の改正」(高見勝利・現上智大学法科大学院教授執筆)だ。

この論文の13頁に「3 いわゆる「抱き合わせ」投票」というタイトルで,複数の改正条項がある場合の投票方法について次のように記載されている。

■■引用開始■■
国民投票の対象となる憲法改正条項が一つしかないときは、当該条項に対して賛否を求めるだけで済むが、しかし、賛否の対象となる改正条項が複数ある場合には、その賛否の求め方如何によっては、投票の結果が大きく左右されることにもなる。

すなわち、それは、複数の改正条項について、①内容上の関連性の有無にかかわらず、各条項ごとに一つずつ賛否を求めるのか、それとも、②関連する諸条項を一まとめにしたうえで、そのまとまりごとに賛否を問うのか、または、③それら改正条項をすべて一括し、その改正全体について賛否を問うのか、という問題である。

 いずれの方式にも、一理はある。
 すなわち、①の場合には、国民が各条項の改正案について、逐一自らの意思を表示し、「決定する」という点では、積極的に評価しうる方式である。しかしながら、この方式では、相互に不可分の関係にある条項の間で賛否の結論が分かれてしまった場合、改正の意図が実現できず、改正の効果に期待できないという事態が生じうる可能性もある。
 
 また、③の方式は、各改正条項を導く発議者の理念ないし哲学が首尾一貫したものであるならばともかく、相互に関連ないし脈絡のない種々の事項が同時に改正の対象となるような場合、それらを一括し、一体として、その賛否の意思表示を求めることは、国民に対する無理強いの譏りを免れないであろう。

複数の改正条項にわたる場合、そのなかで不可分の関係にある改正諸条項を「抱き合わせて」その賛否を問う②の方式は、①および③の方式が有する欠点を回避しうる点で、また、国民にとっても、何を決定すべきかが明確である点で、妥当な方式
だと云えよう。

なお、憲法の基本原則はそのまま維持しつつも、すべての条項が全面的に改正される場合には、可分とはなし得ないので、③の一括方式が採用されることになろう(もっとも、これは、②の方式の適用例だということもできよう)。
■■引用終了■■

以上のとおり,国会図書館の立法調査という形ではあるが,パッケージ案(抱き合わせ案)が望ましく,かつ,その場合でも全面改正に至ったような場合には,一括方式とならざるを得ないことが結論づけられている。

自民党の新憲法案が,細かい表現も含めて,ほとんど全ての条項を改正する形になっているのは,まさに,上記の見解を踏まえた形となっている。

すなわち,明らかにパッケージ案が合理的なために,最終的にはパッケージ案でまとまらざるを得ない。そこで,それを見越して全面改正せざるを得ない改正案にしようということではないか?

だとすれば,それは,国民の目をくらませるものではないだろうか?

新憲法案は,まさに,「相互に関連ないし脈絡のない種々の事項が同時に改正の対象となるような場合」であり,「それらを一括し、一体として、その賛否の意思表示を求めることは、国民に対する無理強いの譏りを免れない」のではないだろうか。


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