情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

法務省の二枚舌は,共謀罪用だけではない~永田偽メールよりも問題が根深い「入管法改正」答弁

2006-04-04 23:14:05 | 適正手続(裁判員・可視化など)
共謀罪の根拠とされる国連の「越境組織犯罪防止条約」が作成される過程で,日本の法務省が,共謀罪のような法律は日本では受け入れがたいという趣旨の意見を述べていながら,いったん,条約を批准すると,掌を返してしまい,条約を謙抑的に法律化するのではなく,恣意的な適用を可能とする法律としようとしていることは,あちらこちらで批判されているとおりです(例えば,日弁連意見書)。

舌が二枚あるかのような答弁をよくするなぁと思っていたら,何と,何度か問題にした「顔写真指紋データ収集法案」こと入管法「改正」案でも,法務省は同様の答弁をしていることが分かった。

下記引用するのは3月28日に行われた衆議院の法務委員会の様子。高山議員が,アメリカの顔写真・指紋データ収集システム「US―VISIT」について,日本政府は,アメリカから出国した際,直ちに廃棄するように求めていたにもかかわらず,今回の入管法「改正」案については自ら取得したデータを80年も保有すると答弁したことを矛盾だと追及している場面だ。


■■引用開始■■

○高山議員
 まず、これは外務省に伺いますけれども、このUS―VISITの導入時に日本政府として、アメリカ政府に旅行者に対する配慮ですとかこういったことを何か要望されたと思うんですけれども、それは何か要望されましたか。

○木寺政府参考人
 お答え申し上げます。
 日本政府は、日米規制改革イニシアチブの場などにおきまして、US―VISITプログラムにより取得された生体情報につきまして厳格かつ適正に管理するよう米国政府に対して求めてきております。これに対しまして米国政府は、日本政府の懸念を十分に理解するとしつつ、生体情報が不適切な形で使用されないよう厳重に管理していることを説明してきており、規制改革イニシアチブの成果に関する首脳への報告書でもその旨明記しております。
 政府といたしましては、今後も引き続き米国政府に対しましてUS―VISITプログラムによって取得されました生体情報を厳格に管理するよう求めてまいる考えでございます。

○高山委員
 引き続き、外務省に伺います。
 私、これは外務省の方からいただいたもので、日本政府から米国に対しての要望事項、それに対する返事、またもう一回要望して返事がと、毎年のやりとりを全部いただきましたけれども、こういう要望事項をつくるときは、これは外務省だけの判断なんですか。それとも、国内の関係省庁と相談した上で外務省が、これは外交のことですから、代表して持っていくという形をとられるのか。どちらですか。

○木寺政府参考人
 お答え申し上げます。
 関係省庁と十分相談して米側に要望を提出しております。

○高山委員
 引き続き、また外務省に伺います。
 そうしますと、このUS―VISITの指紋の取り扱いあるいは生体情報の取り扱いに関して十分注意をしてくれ、これは法務省と外務省の方で事前に協議をして、その協議結果をアメリカの方に外務省としては伝えた、こういうことでよろしいでしょうか。どこの省庁と協議したということをお願いいたします。

○木寺政府参考人
 お答え申し上げます。
 そのとおりでございます。

○高山委員
 これはまた引き続き外務省に伺いますけれども、そのときに、このUS―VISITのことで法務省から、米国政府にこういうことを要望してくれと、どういう具体的なミッションがあったのか教えてください。

○木寺政府参考人
 お答え申し上げます。
 基本的には、US―VISITプログラムによりまして取得される生体情報について厳格な管理を米側に要望するというものでございます。

○高山委員
 要約するとそういうことになるんでしょうけれども、これは二〇〇四年の六月に返ってきた報告書でしょうか、この中に、この個人情報のことで、米国を出国するときに云々というようなくだり、細かいものがありますけれども、この報告書の方にはこれは何て書いてありますか。

○木寺政府参考人
 お答え申し上げます。
 個人情報は当該個人が米国を出国する時点で消去されるべきであるという日本国政府の立場も十分に理解するというくだりがございます。

◆注:ここで,高山議員は外務省から,外務省が法務省と協議した上で,米国に対し,入国時に採られた顔写真などのデータを出国時に消去するよう求めた…との答弁を引き出した。


○高山委員
 今度は法務省に伺います。
 去年かおととしの時点で、大臣は当時、もっと官邸にいて、当然こういう報告書にも目を通された立場だったと思いますけれども、これは出国した時点で消去することを要望しているじゃないですか。これは法務省内で何かどこか意見が変わったんですか、この二年間の間に。

○杉浦国務大臣
 官邸にいたときにそういうことは、私は承知しておりません。
 米国政府とのやりとりの中で今外務省が申されたような経緯があったわけでございまして、具体的に日本側から要望事項として挙げてはいないというふうに承知しております。

○高山委員
 これは、私が何かガセネタだとかそういうことでやっているんじゃないですよ。これはそちらから出していただいた資料を今外務省の方が読んだものですので、それは大臣の事実誤認じゃないんですか、今は明らかに。だって、これは消去されるべきであるという日本国政府の要望を踏まえということを言っているわけですよね。では、アメリカがおかしいということを言いたいんですか。ちょっと大臣、これはきちんと説明してください。

○杉浦国務大臣
 我が国は、米国政府に対しまして、在米邦人企業を含む経済界や在米邦人等からの要望も踏まえまして、先ほど外務省が申されたとおり、米国入国時に採取される指紋情報に関し厳格に管理するよう言及してきていると承知しております。
 日本政府としては、そのような経緯も踏まえた上で、国民の生命と安全を守るために本システムの導入を決定したものでございます。

○高山委員
 大臣、全然今、質問とは関係ないでしょう。私が今聞いているのは、これは二〇〇四年の時点では、自分の日本国民に対しては、アメリカに行って指紋をとられたら出国後直ちに消去しろと要望していて、海外の方が来たのは、最大八十年ですか、論理的に八十年もとっておく、あるいははっきり期間は言えないと、これはちょっと国際協調の観点からもおかしいじゃないですか。自分たちはすぐ消去しなきゃ問題があるというふうに思っていたんじゃないんですか、二年前は。何か法務省は考え方を変えたんですか、そこを説明してください。

○杉浦国務大臣
 その文書は法務省が要求したと書いてあるんですか。(高山委員「いえ、政府ですよ、政府」と呼ぶ)政府。私どもは、米国政府とのやりとりの中で米国政府による個人情報管理の厳格化のための具体策をとるように求めておったところでございまして、その一案として個人情報の出国時の消去について言及があった経緯はあるようでございますが、具体的に日本側からの要望事項としては挙げられていないというふうに承知しております。

○高山委員
 いや、大臣、だから、私がさっき外務省の方に、こういう個別のことをやるときに必ず法務省と協議するんですかと伺いましたら、当然協議してから言っていますと。それはそうですよね。外務省だけの判断でできることではないと思いますので。
 その上で、アメリカにしてみれば法務省と外務省が違うことを言っているなんというんじゃ困りますから、日本政府としてこういう意見でございますと、これは外交交渉では当たり前ですよね、一元化してくるわけですから。その意見が、個人情報は当該個人が米国を出国する時点で消去されるべきという日本政府の立場ということでありますけれども、これは要求しているわけですよね。とにかく、この矛盾についてきちんと説明してください。

○杉浦国務大臣
 具体的に日本側からの要望事項として挙げられたものではないというふうに承知いたしております。

○高山委員
 意味がわからないですよ。
 ちょっと委員長、これはおかしいですよ。意味がわからない。だって、これは私が出してきている資料じゃないですから。これは外務省の資料ですから。

◆注:まさに意味が分からない…。
   以下,意味の分からない答弁が続く

○石原委員長
 高山君の質問に、法務省はどなたでも結構でございます、責任を持ってお答えいただきたいと思います。

○河野副大臣
 日本政府が米国政府に公式に要望しているのは、個人情報管理の厳格化でございます。そのやりとりの中で、例えば出国時に消去をするというようなことを例示したことはあるんだろうと思いますが、日本政府から正式に要望しているのは、厳格に管理をしてくれということでございます。米国政府がそのやりとりの中で言及されたことについて申し述べたことはあるかもしれません。

○高山委員
 今の副大臣の御答弁ですけれども、例えばということで、出国後直ちに指紋を消去するという提案を日本がしたということでしょうか。

○河野副大臣
 そのやりとりの中でどちら側か、そういう厳格管理をする一例のやり方としてそういうやり方もあるねということが協議の中で恐らく話し合われたんだろうと思いますが、日本政府からの公式な要望は、個人情報を厳格に管理してくれということであります。

○高山委員
 いや、河野副大臣、この報告書によれば出国後直ちに消去されるべきだという日本政府の立場と言っているんだから、これは日本政府が言っているに決まっているじゃないですか。これはこの文章の読み方だけの話で、だから、この文章と今の法務省の見解に矛盾があるんじゃないんですかという質問をしているので、この文章そのものはもう変えようがない事実なんじゃないんですか、副大臣。

○河野副大臣
 日本政府の要望は、あくまでも個人情報管理の厳格化を要望しているわけであります。その中で一例として出国時に消去をするという方法も恐らく検討をアメリカ政府がしたんだろうと思いますが、日本政府の要望は、あくまでも個人情報の管理の厳格化であります。

○高山委員
 いやいや、これはたまたま今私、ここを取り上げて言っていますけれども、こういう提案を日本側がしたけれどもアメリカ側としては結局受け入れられないでそのまま保存しているという、これは私がきょう出した毎日新聞の「出国時の消去要請へ」という新聞、これに事のてんまつは書いてありますけれども、新聞よりも正確を期するために政府の報告書を今外務省の方に読み上げてもらっただけですので、これは日本側から提案しているんですよ。そこは副大臣、全然争いにならないと思いますよ、申しわけありませんけれども。
 私が今問題にしているのは、その当時の日本政府の考え方と今の法務省の見解と何か変わったんですかということを聞いているんですけれども。副大臣でも結構ですよ。

○河野副大臣
 当時の日本政府の公式な要望は、個人情報管理の厳格化であります。

○高山委員
 いや、個人情報の管理の厳格化なんというのは当たり前ですよ。それはそういうふうに要望するでしょうし、今も、我々が今度導入しようとしている日本版のVISITも個人情報を厳格にしますというのは当たり前で、そうするために、では具体的にはどうなんですかということで、今、出国したときには指紋情報を消去したらどうでしょうかということでやりとりがある中で、日本政府としても以前これはもう提案しているじゃないですかという話をしているんですけれども、では、この当時の日本政府からはこういう提案がなかったということを今副大臣はおっしゃりたいんですか。ちょっとそこだけまず答弁をお願いします。

○河野副大臣
 当時、交渉の中でのやりとりについては私存じ上げませんが、公式な要望は個人情報管理の厳格化でございます。
 今回の入管法の改正に当たりまして、我々法務省は、個人情報管理を厳格にやりたいと思っております。

○高山委員
 ちょっと、さっき聞いたら、委員長からですよ、法務省の方で責任を持って答弁される方と言ったら副大臣が手を挙げられて、それで答えられて、当時のこの要望書の要望事項の中には、定かではないが、やりとりの中でその指紋の消去についてもあったんじゃないかという答弁をされたのに、今個人的にはと言いますけれども、どういう立場で答弁しているんですか、副大臣は。全然立場が変わっちゃっているじゃないですか。個人的な意見なんて全然聞いていないですよ。
 昔の法務省と今の法務省と、私から見るとこの指紋の即時消去ということに関して矛盾があるじゃないか、おかしいですねと言っているのに、個人的にはそう思いますということを言うんだったら、こんなの全然質問できませんよ、委員長。しかも、委員長の御指示にも全然従っていないです。おかしいと思いますよ、これは。だから、責任ある答弁をもう一度させるか、あるいはここでちょっと、これ以上は続けられません、これでは。

○石原委員長
 それでは、誤解があるといけませんので、高山委員が御指摘をされました政府の、外務省の文書でございますか、もう一度木寺大臣官房審議官からそこのくだりにつきまして読ませて正式な見解を聴取し、その後、法務省を代表して責任ある御答弁をお願いしたいと思います。

○木寺政府参考人
 お答え申し上げます。
 アメリカ側の報告書でございますが、「個人情報は当該個人が米国を出国する時点で消去されるべきであるという日本国政府の立場も十分に理解する。」と記載されております。

○杉浦国務大臣
 それはアメリカ側の文書のようでございますが、それは木寺審議官のおっしゃったとおりだと思います。具体的に日本側から要望事項として挙げられていないというふうに承知しております。

○高山委員
 先ほどから言っていますけれども、この要望のやりとり、今ここだけじゃなくて全部やりとりがあるわけで、これは公表されていることで、それも見て新聞記者の方も書かれたんだと思いますよ。これを日本から要望していないというのは、大臣、そこは明らかにおかしいですよ。要望したんでしょう、これは。日本から要望もしないのに何でこんなのが入ってくるんですか。おかしいですよ、これは。

○杉浦国務大臣
 アメリカ側の文書にそういう記載があることについては木寺審議官が説明したとおりでございますが、日本側から正式に要望した事項としてではないというふうに私どもは理解しております。

○高山委員
 先ほどの副大臣の答弁ですと、正式に要望した事項は個人情報の厳格化ということでしたけれども、その具体例として出国時の指紋の消去なども話し合われたというような話がありましたけれども、そこがすごく問題なんですよ。
 ですから、ちょっと、杉浦大臣、これは確認してくださいよ。これは私たちでは確認しようがないですよ。どういうやりとりを日米間でやったのか。しかも、それが今の日本の法務省の政策と全然矛盾していないならいいですけれども、これは大矛盾じゃないですか。出国後、直ちに指紋を消去するということを要望しておいて、今この委員会で、先ほど三十分前に話したのでは、指紋を、運用上どうなるかわからないけれども、最大、論理的には八十年もとっておくかもしれない。全然、これは矛盾していると思いませんか、大臣。まず、今のこの二つは矛盾していると思いませんか。どうですか。

○杉浦国務大臣
 外交交渉といいますか、アメリカとの話し合いは外務省がやったものだと思います。法務省は恐らく立ち会っていないんじゃないかと思うんです。
 合議した時点では厳格にやってもらうという点について合議しているわけで、話し合いの中でどういう話し合いが行われたのか、そこに記載されているのは、どういう経緯でそこに記載されたかは木寺審議官がおっしゃったとおりだと思いますが、私どもとしては、厳格に、適正に管理してほしいという要望事項以外はないというふうに承知しておるわけでございます。

○高山委員
 これは委員長にも要望いたしますけれども、これは政府側の正式な報告書なんですよ。それと今の答弁との矛盾が見られるので、私としては、では一体、だれが要望した話なのか、そこでどういう返事があったのか、この事実関係をまず明らかにしていただきたいと思います。
 それがなければ、他国に対してこんなことを言っていて、自国では全然違う法案を通しているなんて、審議をこれ以上続けることはできませんね、ここをまず明らかにしてもらわないと。私としては、すっかり、昔はこうだったけれども、考え方が変わりましたと言うのかと思ったら、まずこの時点からお認めにならないのでは、これでは、これ以上審議を続けることはできません。
 ですから、ここをまず、法務省と外務省の方で、どういう事実関係だったのか、これを明らかにしてください。

○河野副大臣 要望は、個人情報管理の厳格化であります。これが日本政府の公式な米国政府に対する要望でございます。そのやりとりの中の話について、米国政府が米国政府の出す報告書にどう書くかは、それは米国政府の方針でございますので、法務省とは矛盾することはございません。

○高山委員 今の副大臣の答弁はおかしいですよ。だって、日本政府がこういう立場だということを米国が書いているわけですよね。では、米国が、日本が別にどういう立場をとっているか、全然違う、これは百八十度違いますよ。出国時にすぐ指紋を消去するという立場と、今大臣や副大臣が答弁されたように八十年も人の指紋をとっておくというのは百八十度違う立場じゃないですか。こんな間違いをしますか、米国政府が。だったら、クレームをつけないといけないですね、米国に。
 副大臣、どうぞ。

○河野副大臣
 米国政府がやりとりの中で日本政府の立場をどのように推しはかるかは、米国政府が推しはかるわけでございますから、その推しはかった日本政府の立場について、米国政府が米国政府の出す報告書についてどう記載するかは米国政府の自由だと思いますが、日本側の公式な米国に対する要望は、個人情報管理を厳格化してくれということでございます。
 その当時の個人情報を厳格に管理しなければいけないという立場と、今回の入管法改正に当たりまして、法務省がとっている個人情報をしっかり厳格に管理しようという立場に、何ら変更はございません。

○高山委員 だから、個人情報保護を厳格にするという立場ではそれは同じかもしれないけれども、ではそれをどうやってやるんですかといったときに、即時指紋を消去するというのと、いや、それよりもテロの危険を優先して何十年も指紋をとっておくんだ、全然違う立場じゃないですか。
 ですから、私は、ここに日本政府がそういう指紋消去をすぐやってくださいという立場だということが書いてあるので、当然法務省としても、法務省というか日本政府として米国にそういう要求をしたんだろうなと、この報告書を読んだら通常の人は思うと思いますよ。
 ですから、これは、どういう経緯で二〇〇四年に交渉して、そして、今もし考え方が変わったのであればどういう理由で変わったのか、法務省と外務省で、政府で統一した見解を出していただかないと、全く政府の方はどういう方針なのかわからないですね。
 だから、これでは質問に入れないと思いますので、委員長に、委員長も今聞かれていてあれっと思った部分が多々あると思いますので、政府が統一してきちんとした説明をすることを要求していただきたいと思います。

○石原委員長
 それでは、若干議事を整理させていただきます。
 政府側、法務省の答弁は、当時は、厳格な運用を行ってほしいということで終始一貫した御答弁をいただいております。
 しかし、外交文書等々につきましてこの場で明らかにすることは、資料また答弁者がおりませんので、後刻、理事会協議、先ほどの文言の整理ということとさせていただきたいと思います。
 高山君。

○高山委員
 とにかく、時間が参りましたので、これはちょっと、質疑の前提となることですので、まずこれをはっきりさせていただかないと次の質疑に移れないなということを申し上げつつ、私の質問は終わります。

■■引用終了■■

…こういう無責任な答弁をすることの方が永田メール問題などよりもよっぽど悪質だ。なぜ,メディアはこういう無責任答弁を追及しないで,永田メールのような下らない問題を取り上げるのだろうか…