tokyo_mirage

東京在住・在勤、40代、男。
孤独に慣れ、馴れ、熟れながらも、まあまあ人生を楽しむの記。

無題の旅~水戸・日立 2日目

2012-11-04 23:00:00 | 旅と散歩と山登り
8:40 宿を出て歩き出す。行く手の高台に遊園地が見える。空は素晴らしい秋晴れ。


その高台までたどり着き、登っていく。遊園地の中を歩く。スイッチを点検したり、雑巾で遊具の台座を拭いたり、開園準備の真っ最中。


遊園地を抜けると芝生の広がる頂上広場が。あの展望台を目指そう。


9:17 展望台から日立市中心部を望む。


反対側には遊園地(先ほど通った遊園地にもあったのに、こっちにもまたひとつ観覧車が!)と、今日歩こうと思っている峰々が。この後、この遊園地の横を通ると、フライングパイレーツ(というのだろうか。振り子状に往復する船のアトラクション)に1人だけ客が乗っていた。客のいない遊園地というのは、なんともいえないいい哀愁がある。

いよいよ車道と別れ、山道に入っていく。いつも登山の時にリュックサックにつける熊よけの鈴を、低山だから大丈夫だろうと今日は持ってこなかったが、もしかしたら熊も出たりするんじゃないかと、ふと心配になる。冬眠前に栄養を蓄えようと木の実を探し求める熊と、バッタリ対面…いかにもありそうな話だ。


10:42 かつて日立市のシンボルだったという「大煙突」が見渡せるスポット。ススキが靡いている。煙突は、銅を採掘する鉱山の煙害対策(要するに上空高くに煙を拡散させるということだ)として1914年に建てられ、155mという高さは当時世界一だったという。ところが、1993年に突然倒壊し(地震が原因ではないようだ)、今残っているのは下部の54mだけとのこと。確かに「大煙突」の名にしては寸足らずに見えたが、実はこの3倍も高かったのか。


ちょうど12:00(麓からチャイムが聞こえる)。神峰山(598m)山頂。大煙突と、その向こうに日立市街。煙害の影響が大きくなるのを避けようと、天候によって操業をセーブするため、この山頂には気象観測所が設けられていたという。日の光や風向きを読み、たちのぼる煙の筋の行く手を眺めるという目的のために、ここに日がな一日人が常駐していたわけか。なんだか風雅だ。


この旅に履いてきたのは、登山靴ではない、普通のスニーカーだ。歩程を軽く見積もっていたが、朝からずっと、存分すぎる山歩き、登山靴でもよかった。レーダー雨量観測所の高い塔が立つ高鈴山の頂が見えてきた。


13:15 高鈴山(623m)山頂。北側の山並みを望む。そばにアマチュア無線のトランシーバーで交信しているおじさんがいて、相手は那須の山の上にいて、寒いので車の中から喋っています、といったやりとりが聞こえてくる。交信を終えるとおじさんは車で帰っていった。ここまでは車で上がれるのだ。交信のためだけにここまで上がってきたわけか。不思議な趣味と思うけど、東京から泊りがけでこの山に歩きに来ているのも、不思議な趣味と言えるのかも知れない。


林道を下る。傾斜が緩やかなので、時折小走り気味になってみたりする。しばらくすると林道とは別れ、再び細い山道になる。ふと、脈略もなく、「ドリアン助川」って今どんな名前で活動しているんだっけ?と考え出す。確か「助川」と似たような見た目の漢字の本名だった気が…と思うが、その場では思い出せなかった(そんなことを山の中で考えていたことも忘れていたが、旅から帰ってきて読んだ新聞か何かに「明川哲也」が寄稿していて、それでこのことを思い出した)。


14:13 木立の中に現れた金山百観音。「百観音」とは、西国33ヶ所・板東33ヶ所・秩父34ヶ所を合わせた100ヶ所の観音札所のことだそう。江戸時代、観音札所の本尊を石仏に彫り、番付や寺の名などを刻んで建立し、これをお参りすれば百観音を巡拝したのと同じご利益があると信じられるようになって建てられたのだとか。石仏は、近在の村からばかりでなく、遠く静岡や福島からも奉納されているそう。


一つ一つの造作に味わいがある。


おむすび池という三角形の池があり、周囲は芝生で覆われウッドデッキ状の東屋もあり、山中のわりに整備されている。座り込んで休憩する。静かだ。


14:54 助川山の展望台。歩いてきた高鈴山(レーダー塔がある)などの峰を振り返る。日も傾いてきた。


市街地方面。見える工場は多分、日立製作所関連のものなんだろう。日立製作所はこの町で「鉱山付属の修理工場」としてスタートしたのだという。世界企業の素朴なルーツ。


日立セメントのセメント運搬用ロープウェイが見える。いや「架空索道」という呼び方のほうが味わいがあるか。今も現役で稼動しているのだろうか?廃止されているのならトロッコをぶら下げたままにはしておかないだろうから、今日が日曜で休業というだけかも知れない。山の端の中空にぽつんと浮かんでいるトロッコは、可愛らしくもあり、淋しくもある。


山を下りるにつれだんだん近づいていき、ついにその真下をくぐる。索道と交差する箇所では、登山道はトンネル状のシェルターで覆われている。


途中、切り通しの道の先に海だけが切り取られて見える印象的な場所があって、カメラにおさめようとしたけど、カメラでは海が小さくなってしまい、見たままの姿に近づけそうにないと思い、諦めた。やがて周囲に人家が出始めた。


住宅街に出る。丘陵地の団地群。団地には暮らしたことはないけど、なぜか親しみをおぼえる。さらに道を下っていくと、金属の焼けるようなにおいが一帯に漂っている。工場からだろうか。


16:07 駅前の「シビックセンター」に、昨日とほぼ同じ日暮れ時に。駅の入口で山の方を振り返ると、ビルとビルの隙間に、高鈴山のレーダー塔のある山頂が見えた。カメラを出しかけたけれど、「ビルの隙間」の眺めはさみしいかなと、撮るのはやめた。


そしてやはり、昨日と同じく傾いた日の光の中で冷たく乾いた風を通り抜けさせている日立駅のコンコースへ。帰りは高速バスを使うつもりだったものの、駅前の案内所で「予約は出発2時間前で〆切。空席状況はバスが到着してみないとわからない」と言われたので、JRの特急で帰ることにする。ちなみに高速バスの運賃は2390円で、JRの運賃2520円(特急料金はさらに+1780円)よりも安い。時間はJR特急より1時間余計にかかるが。今日歩いたのはおよそ22km。


16:22 駅前のローソンで弁当、菓子パン、ミルクティーを買い込んで(いつもは食べない朝食を今日は宿で取ったのでよいかなと、結局山歩きの最中はお茶を1本飲んだだけだった)、フレッシュひたち48号に乗車。加速する列車の窓から、助川山の展望台の東屋が、夕陽をバックに妙に大きく見えた。1997年デビューというこの「E653系」に乗っていると、車内に響く走行音も大きく、行きで乗った「E657系」が新型だったのだなあというのがよくわかる。ただ、走行音が大きいこちらの方が「全力で頑張って駆けている」スピード感があるから不思議だ。


都内の高架線に入ると左手に東京スカイツリーも見え始める。見ていて思った。「スカイツリーって、ライトアップが上手くないんじゃないか?」。東京タワーのライトアップはてっぺんから下まで「全身」が輝いて見えるけれど、スカイツリーはライトが「まだら」にしか当たっていないように見える。「しっかりバレンで刷らなかったためにインクがきちんと紙に乗らなかった版画」、そんな風にも見える。

18:07 上野駅着。あとは都心の雑踏の中を日常に戻っていくだけか…と気分が冷めてきたけれど、乗り換えのターミナル駅でちょっと変わった出来事があった(僕にとっては「一風変わった」出来事だが、当事者にとっては日常のことで切実なことだ。そんなことも後で思った)。改札前で白い杖を持った女性が「すみません!」と声を上げていたので、どうしましたか?と聞くと、○○線に乗りたいんです、と言うので、僕もちょうど○○線なんです、一緒に行きましょう、では右腕を貸していただけますでしょうか、はい…とホームまで案内したのだ。初めての経験だ。階段があれば「階段です」と言い、いやそれじゃダメだ「“下り”階段です」と言い直したりしながら、なんとか乗車口まで案内できた。普段は通りすがりの他人に気を配ったりしない人間だが、「すみません!」という声を聞いて反射的に行動に移れたのはよかった。

<旅の会計> 16978
■1日目 12080
JR (東京)~水戸 運賃2210 自由席特急料金1300
マクドナルド ソーセージマフィンとチキンクリスプマフィン 200
水戸芸術館タワー 200
水戸芸術館『3・11とアーティスト:進行形の記録』展 800
JR 水戸~日立 570
宿(2食付) 6800

■2日目 4898
ローソン 洋風ミックス弁当398 クリームドーナツ105 ミルクティー95
JR 日立~(東京) 運賃2520 自由席特急料金1780

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