特捜最前線日記

特捜最前線について語ります。
ネタバレを含んでいますので、ご注意ください。

第258話 ヨコハマストーリー!

2006年10月23日 22時17分27秒 | Weblog
脚本 藤井邦夫、監督 天野利彦

都内のホテルで身元不明の女性が殺害された翌日、桜井はある少女に呼び出され、横浜に向かった。少女は、自分の姉が殺された女性と一緒にいるのを見たと告げ、姉を捜して欲しいと桜井に頼む。
その姉妹は、7年前に桜井が逮捕した麻薬密売グループのボスの娘だった。その頃、潜入捜査のためボスの屋敷に運転手として住み込んでいた桜井は、当時17歳だった姉から想いを寄せられ、捜査のために姉の気持ちを利用する形となった。父親が逮捕されたとき、すべてを知った姉は、桜井をナイフで刺した。苦い思いで過去を振り返る桜井に、妹は言う。「姉さんは、桜井さんのことが本当に好きだったから刺したんです。ずっと覚えていてもらうために。」
それ以降、姉はホステスとして辛い思いをしながら、妹を育ててきたのだという。最近になって、今は貿易会社を営んでいる当時の秘書に再会し、援助を受けるようになったが、姉は妹にも居所を明かさず、月に一度だけ生活費を届けに来るのだという。「姉は、桜井さんに『幸せを呼ぶ御守り』と言ってもらったウサギの足の御守りを、ずっと大切にしていました。でも、あれ以来、姉が幸せだったことなんて一度もなかった」妹の言葉が、桜井の胸に突き刺さる。
捜査が進むなか、殺された女は売春婦で、売春組織のボスの正体を知ったために殺されたことが判明。その正体が、かつての秘書ではないかと睨んだ桜井は、秘書の居所を追う。だが、秘書は売春組織のアジトである花屋で死体となって発見された。
一方、殺された女の爪の間に残された毛を調べていた船村は、それがウサギの毛だと突き止める。真相を悟った桜井は、姉の居所を突き止めるべく、妹に全てを明かした。姉が売春組織のボスで、しかも殺人を犯したことにショックを受け、呆然とする妹。
「姉は、人手に渡ってしまった家を買い戻すのが夢だと言っていました。」妹の呟きをヒントに、かつてのボスの屋敷に踏み込む桜井。果たして、そこには姉がいた。自分の正体を知った女を殺したのも、一緒に国外に逃げようという秘書を殺したのも自分だと告げる姉。「何故、秘書まで殺した」と聞く桜井に、姉は答える。「あなたとの思い出の残ったこの家を離れたくなかったから。」すがりつく姉を引き剥がすように、駆けつけた橘らに押し付ける桜井。連行される姉の姿を見て、泣き崩れる妹を抱きしめる桜井の表情は、やりきれない悲しみに満ちていた。

捜査のために他人の好意まで利用しなければならない、刑事という仕事の哀しい宿命を描いた一本です。かつて17歳だった姉の想いと、現在17歳の妹の想い。両者をうまく対比できればもっと深みが増したかとも思いますが、やや淡白に終わってしまったというのが正直な印象。それにしても、妹に向けた桜井の「君には姉さんのようになって欲しくない」という台詞は、残酷に思えてなりません。