「愛と死と憎悪が渦巻くメカニカルタウン。非情の犯罪捜査に挑む、心優しき戦士たち。彼ら、特捜最前線」ある世代の方々にとって、生涯忘れることのできないであろうこのナレーションで始まる刑事ドラマの傑作、それが特捜最前線です。
私が愛してやまないこのドラマがこの11月、待望のDVD-BOX化されます。これを機に、特捜最前線について語ってみたいとの思いにかられ、知人の勧めもあって、こうした場を設けさせていただきました。特捜最前線を愛する方はもちろん、聞いたことはあるが見たことはないという方も、お付き合いただければ幸いです。
では、まずは、このドラマの主役である“心優しき戦士たち”を紹介しましょう。
沈着冷静なナイスミドル、二谷英明演じる神代(かみしろ)課長。
人情派の叩き上げ、大滝秀治演じる“おやっさん”こと船村刑事。
ハードボイルドな野生派、仮面ライダー1号こと藤岡弘(今は藤岡弘、)演じる桜井刑事。
泥臭く粘り強い捜査が売り物の重鎮、本郷巧次郎演じる橘刑事。
体育会系の熱血派、アカレンジャーこと誠直也演じる吉野刑事。
真面目で不器用な温厚派、現在は衆議院議員の横光克彦演じる紅林刑事。
孤児院出身で陰のあるクールガイ、スカイゼルこと夏夕介演じる叶刑事。
この中核メンバー7人以外にも、初期には庶民派のコメディレリーフ兼泣かせ役の西田敏行演じる高杉刑事(のちに転属)、仮面ライダーストロンガーこと荒木しげる演じる津上刑事(のちに殉職)が、そして中期には、刑事くんこと桜木健一演じる滝刑事(のちに退職)が、さらに末期には、光速エスパーこと三ツ木清隆演じる犬養刑事、必殺渡し人の大吉こと渡辺篤演じる時田刑事、若手の阿部祐二演じる杉刑事と、6名の刑事がレギュラーメンバーとして参加しています。
「特捜最前線」というドラマの魅力を理解するには、他の著名な刑事ドラマとの比較が有効だと思います。「特捜」を含めて“刑事ドラマ四天王”といわれる「太陽にほえろ!」「Gメン75」「西部警察」(世代によっては、「あぶない刑事」「はぐれ刑事純情派」を加える場合もありますが)を例にとって考えてみましょう。
たとえば「太陽にほえろ!」では、若手刑事が犯罪捜査を通じて成長していく姿がドラマの軸となっており、刑事ドラマであると同時に青春ドラマだと言えると思います。
「Gメン75」では、刑事たちの心理よりも、むしろ事件の推移や背景となった社会情勢(政界汚職やベトナム戦争、基地問題など)そのものがドラマの主軸であり、刑事ドラマであると同時に犯罪ドラマだと言えるでしょう。(なお、有名な香港編がスタートした後期以降はだいぶ印象が変わっています)
「西部警察」は、カーアクションや銃撃戦、大掛かりな爆破などが見所であり、刑事ドラマであると同時にアクションドラマだと言えます。
そして我らが「特捜最前線」は、犯罪者たちの歩んできた人生、そして捜査を通じてそこに重ね合わせられる刑事の人生を描いており、刑事ドラマであると同時に人間ドラマであると言いたいのです。
先に、このドラマの主役、と言いましたが、実際の主役は彼ら刑事たちではなく、毎回登場する犯罪者たちと言えるかもしれません。犯罪者たちが心ならずも手を汚すに至った経緯、それこそがドラマの核であり、そこを緻密に描き出した脚本と演出こそが、特捜最前線を傑作たらしめている最大の理由ではないでしょうか。
もう一つ、分かりやすい例として、昔ホイチョイプロの本で読んだと記憶している、各ドラマの特徴を示す典型的なシーンがあります。
やむにやまれぬ事情から犯罪者となった者が、刑事たちの捜査によって追い詰められる。刑事ドラマにはありがちなシーンですが、上記のドラマでは、それぞれどのような展開を見せるでしょうか?
「太陽にほえろ!」であれば、若手刑事が絶叫とともに犯人を殴り倒し、手錠を掛けるでしょう。「Gメン75」であれば、犯人同士の仲間割れよって射殺され、刑事たちはやりきれない顔で犯人の死体を見下ろすでしょう。「西部警察」であれば、団長が躊躇なくショットガンで射殺するでしょう。そして「特捜最前線」では、各話の主役刑事が暑苦しくも悲痛な顔で説得し、犯人を自首へと導くはずです。
好き嫌いは別として、こうした固有のカラーが各ドラマの売りであり、それぞれの番組が強烈な個性をもっているからこそ、今なお多くの者の心を捉えて離さないのだと思います。
十代の私は、「太陽」の熱心な視聴者でした。二十代の私は、「Gメン」のクールさに惹かれました。その頃の私にとって、「特捜」は地味な番組でしたかなったというのが正直な感想でした。(ちなみに、西部警察はあまり評価してません。)しかし、三十代になって、「ファミリー劇場」で第1話から「特捜」を見る機会を得たとき、私はこのドラマ世界にのめり込むようになり、以来、ほとんど欠かさずに視聴を続けてきました。それは、三十を越えて、初めて「特捜」の描いた人生の機微が、少しは理解できるようになったからでしょうか。
今回のDVD化に伴って、CS「ファミリー劇場」での放送が、毎週二話ずつに拡大されることになり、刑事ドラマや時代劇、特撮、アニメ等を週に三十時間近く録画視聴する私にとっては、正直言って癒し痒しです。とはいえ、この機会を逃すわけにもいきませんので、何とか追いかけていきたいと思います。また、見たそばから忘れてしまうことの無いように、これから毎週視聴するたびに、ストーリーと、ちょっとした感想を記録にとどめたいと思います。他人に見てもらうというよりも、自分の記憶にとどめるための覚え書きのようなものですが、どなたかの視聴の参考にでもなれば嬉しいな、と思います。
私が愛してやまないこのドラマがこの11月、待望のDVD-BOX化されます。これを機に、特捜最前線について語ってみたいとの思いにかられ、知人の勧めもあって、こうした場を設けさせていただきました。特捜最前線を愛する方はもちろん、聞いたことはあるが見たことはないという方も、お付き合いただければ幸いです。
では、まずは、このドラマの主役である“心優しき戦士たち”を紹介しましょう。
沈着冷静なナイスミドル、二谷英明演じる神代(かみしろ)課長。
人情派の叩き上げ、大滝秀治演じる“おやっさん”こと船村刑事。
ハードボイルドな野生派、仮面ライダー1号こと藤岡弘(今は藤岡弘、)演じる桜井刑事。
泥臭く粘り強い捜査が売り物の重鎮、本郷巧次郎演じる橘刑事。
体育会系の熱血派、アカレンジャーこと誠直也演じる吉野刑事。
真面目で不器用な温厚派、現在は衆議院議員の横光克彦演じる紅林刑事。
孤児院出身で陰のあるクールガイ、スカイゼルこと夏夕介演じる叶刑事。
この中核メンバー7人以外にも、初期には庶民派のコメディレリーフ兼泣かせ役の西田敏行演じる高杉刑事(のちに転属)、仮面ライダーストロンガーこと荒木しげる演じる津上刑事(のちに殉職)が、そして中期には、刑事くんこと桜木健一演じる滝刑事(のちに退職)が、さらに末期には、光速エスパーこと三ツ木清隆演じる犬養刑事、必殺渡し人の大吉こと渡辺篤演じる時田刑事、若手の阿部祐二演じる杉刑事と、6名の刑事がレギュラーメンバーとして参加しています。
「特捜最前線」というドラマの魅力を理解するには、他の著名な刑事ドラマとの比較が有効だと思います。「特捜」を含めて“刑事ドラマ四天王”といわれる「太陽にほえろ!」「Gメン75」「西部警察」(世代によっては、「あぶない刑事」「はぐれ刑事純情派」を加える場合もありますが)を例にとって考えてみましょう。
たとえば「太陽にほえろ!」では、若手刑事が犯罪捜査を通じて成長していく姿がドラマの軸となっており、刑事ドラマであると同時に青春ドラマだと言えると思います。
「Gメン75」では、刑事たちの心理よりも、むしろ事件の推移や背景となった社会情勢(政界汚職やベトナム戦争、基地問題など)そのものがドラマの主軸であり、刑事ドラマであると同時に犯罪ドラマだと言えるでしょう。(なお、有名な香港編がスタートした後期以降はだいぶ印象が変わっています)
「西部警察」は、カーアクションや銃撃戦、大掛かりな爆破などが見所であり、刑事ドラマであると同時にアクションドラマだと言えます。
そして我らが「特捜最前線」は、犯罪者たちの歩んできた人生、そして捜査を通じてそこに重ね合わせられる刑事の人生を描いており、刑事ドラマであると同時に人間ドラマであると言いたいのです。
先に、このドラマの主役、と言いましたが、実際の主役は彼ら刑事たちではなく、毎回登場する犯罪者たちと言えるかもしれません。犯罪者たちが心ならずも手を汚すに至った経緯、それこそがドラマの核であり、そこを緻密に描き出した脚本と演出こそが、特捜最前線を傑作たらしめている最大の理由ではないでしょうか。
もう一つ、分かりやすい例として、昔ホイチョイプロの本で読んだと記憶している、各ドラマの特徴を示す典型的なシーンがあります。
やむにやまれぬ事情から犯罪者となった者が、刑事たちの捜査によって追い詰められる。刑事ドラマにはありがちなシーンですが、上記のドラマでは、それぞれどのような展開を見せるでしょうか?
「太陽にほえろ!」であれば、若手刑事が絶叫とともに犯人を殴り倒し、手錠を掛けるでしょう。「Gメン75」であれば、犯人同士の仲間割れよって射殺され、刑事たちはやりきれない顔で犯人の死体を見下ろすでしょう。「西部警察」であれば、団長が躊躇なくショットガンで射殺するでしょう。そして「特捜最前線」では、各話の主役刑事が暑苦しくも悲痛な顔で説得し、犯人を自首へと導くはずです。
好き嫌いは別として、こうした固有のカラーが各ドラマの売りであり、それぞれの番組が強烈な個性をもっているからこそ、今なお多くの者の心を捉えて離さないのだと思います。
十代の私は、「太陽」の熱心な視聴者でした。二十代の私は、「Gメン」のクールさに惹かれました。その頃の私にとって、「特捜」は地味な番組でしたかなったというのが正直な感想でした。(ちなみに、西部警察はあまり評価してません。)しかし、三十代になって、「ファミリー劇場」で第1話から「特捜」を見る機会を得たとき、私はこのドラマ世界にのめり込むようになり、以来、ほとんど欠かさずに視聴を続けてきました。それは、三十を越えて、初めて「特捜」の描いた人生の機微が、少しは理解できるようになったからでしょうか。
今回のDVD化に伴って、CS「ファミリー劇場」での放送が、毎週二話ずつに拡大されることになり、刑事ドラマや時代劇、特撮、アニメ等を週に三十時間近く録画視聴する私にとっては、正直言って癒し痒しです。とはいえ、この機会を逃すわけにもいきませんので、何とか追いかけていきたいと思います。また、見たそばから忘れてしまうことの無いように、これから毎週視聴するたびに、ストーリーと、ちょっとした感想を記録にとどめたいと思います。他人に見てもらうというよりも、自分の記憶にとどめるための覚え書きのようなものですが、どなたかの視聴の参考にでもなれば嬉しいな、と思います。