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特殊清掃「戦う男たち」コメント公開

戦友の意見交換の場として公開しています。

壁彩(公開コメント版)

2014-02-05 09:01:37 | ゴミ屋敷 ゴミ部屋
「鍵は開けておくから、勝手に入って下さい」
依頼者の男性は、電話でそう言った。
依頼の内容はゴミの片付け。
男性は、ゴミ部屋の主だった。

百聞は一見にしかず。
原則として、作業には、事前の現地調査が必要。
口頭での説明や写真からは、十分な情報が得られないからだ。
私は、本件でも、現地調査の必要性を説明。
そして、他人の部屋に勝手に上がりこむことも躊躇われるので、男性にも、立ち会ってくれるよう依頼した。
しかし、男性は、仕事が忙しくてそれが無理の様子。
平日は帰宅が遅く、土日も予定が入っているとのこと。
私は、家財の毀損や貴重品の滅失等のクレームは受け付けないことを了承してもらい、単独で現地調査を行うことにした

訪れた現場は、古い小規模マンション。
男性の部屋は一階の一室。
私は、部屋番号に間違いがないかを慎重に確認し、ドアノブをゆっくり握った。
そして、ゆっくりドアを引き、片足を一歩前に出しかけた。

それまで、幾多のゴミ部屋を見てきた私。
少々のことでは驚かない。
しかし、ここは少し事情が違った。
玄関ドアを開けると、すぐに壁。
ゴミがきれいに積み上げられ、それが垂直の壁を形成。
それは、まるで、古来の地層のようにみえ、「美しい」といえば語弊があるけど、感心してしまうくらいの光景だった。

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痩心(公開コメント版)

2014-01-11 08:43:32 | ゴミ屋敷 ゴミ部屋
ゴミの片付け依頼が入った。
電話の向こうは、中年女性の声。
現場は、女性が暮す賃貸アパート。
間取りは2DK。
床一面をゴミが覆い尽くし、更に、それが結構な厚さに堆積しているとのこと。
「どれくらいの費用がかかりそうですか?」
との問いに、私は、想定の概算費用を返答。
「やっぱり、それくらいかかりますか・・・」
女性は、その金額を聞いて、しばし沈黙。
声のトーンを落とし
「分割で払うことはできますか?」
と、言いにくそうに訊いてきた。
女性の資力が乏しいことは、聞かずとも明白だった。

代金の分割払いは原則として可能。
しかし、そこには、おのずと条件がつく。
頭金の金額、月々の支払金額、支払期間、安定収入の有無etc・・・当社にとって受忍できる範囲のリスクを超える場合は、契約することができない。
しかし、それも原則。
諸条件をクリアすることも大事だけど、最後は人物で判断する。
イザとなった場合、契約書も契約書も何の役にも立たないから。
(それが痛い思いをする原因にもなるわけだけど。)
そこで、私は、質問がプライベートなことに及ぶことをあらかじめ詫びて、女性の経済力を知るべく、色々と質問をしてみた。
すると・・・
職業は派遣スタッフ。
月の収入は十数万円、しかも不安定。
クレジットカードの与信はなし。
資産や預金類、担保になりそうなモノもなし。
お金を貸してくれそうな人も保証人になってくれそうな人もいない。
・・・とのこと。

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短気は損気(公開コメント版)

2013-11-18 08:49:33 | ゴミ屋敷 ゴミ部屋
「引越しをするのでゴミを片付けてほしい」
そんな依頼が入った。
「うちに頼んでくるわけだから、何か事情があるんだろうな・・・」
私はそう思いながら現地調査の日時を設定した。

訪問した現場は小さな一戸建。
家屋の周囲にはゴミやガラクタが散乱しており、家の中が“案の定”であることをうかがわせた。
私は、家の前の路上に車とめ、約束の時間がくるまで待機。
自分でいうのもおかしいが、変なところで几帳面な私は、約束の時刻ピッタリになったところで車を降り、玄関のチャイムを押した。

家の中からは、恥ずかしそうな物腰と気マズそうな表情をもって依頼者がでてきた。
そして、
「驚かないでくださいね」
「靴のままでかまいませんから」
と、外からの視線を避けるようにそそくさと私を家の中へと促した。

室内は、玄関土間からゴミ、ゴミ、そしてまたゴミ・・・
依頼者は、長年にわたって生活ゴミを蓄積。
本当の床なんてどこにも見えておらず、ゴミで埋め尽くされていた。
依頼者は、近々、引っ越す予定。
そのため、“このゴミを片付けたい”とのこと。
ただ、依頼者は“特殊清掃でなんとなる”と考えている様子。
私は、実現不可能な期待を持たせてはいけないので、ゴミの撤去と清掃だけでは原状回復はできないことを伝えた。
それを聞いた依頼者は動揺。
顔をこわばらせたまま黙り込んでしまった。
そうは言っても、このゴミを片付けないと何も始まらない。
私は、作業の内容とかかる費用を説明し、当方に作業を依頼するかどうか充分に検討するよう伝えた。

調査を終え外に出ると、私の車の脇に初老の女性が一人立っていた。
そして、私を見つけると恐い顔で睨みつけ、
「オタクが片付けんの!?」

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迷 ~中編~(公開コメント版)

2012-04-29 09:55:08 | ゴミ屋敷 ゴミ部屋
私は、イヤな思い出をグズグズと引きずりやすい。
忘れたほうがいいことはなかなか忘れられず、忘れてはいけないことは簡単に忘れてしまうタイプ。
女性宅から引き上げてから数日は、何となくそのことが気になっていた。
が、結局のところ、ベースは冷酷・冷淡。
その出来事は日ごとに私の脳表から消え、そのうち、脳裏からも消えていった。

それから、何日か経った後、私の携帯が鳴った。
ディスプレイには見慣れない番号。
“折り返し着信”の表示もなし。
それは、狭い人間関係の中で生きている私にとっては珍しいこと。
「もしもし???」と、私はよそ行きの声で電話をとった

電話の向こうは、中年の女性の声。
女性は、はじめに名を名乗ったのだがピンとこず。
「娘のアパートのことなんですが・・・先日、見に行ってもらったそうで・・・ゴミを片付けたいのですが・・・」
説明を受けると、頭の???は一つ一つ消えていった。
相手は、私が片付けを断ったゴミ部屋の女性の母親だった。

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迷 ~前編~(公開コメント版)

2012-04-21 10:51:56 | ゴミ屋敷 ゴミ部屋
つい先日、携帯電話を忘れて出勤したことがあった。
ケータイを持っていないことに気づいたのは、通勤の途中。
時計がわりに時間をみようとしたときのことだった。
一瞬、失くしたことを心配して肝を冷やしたが、家に置いてきたことをすぐに思い出してホッ。
ただ、とりに引き返すと遅刻は必至・・・
しかし、引き返さないと、一日中、不便な思いをしてしまいそう・・・
私は、迷った。
ただ、急な出動がないかぎり、その日は外出の予定はなし。
結局、「ま、なんとかなるだろ」と、自分に似合わないポジティブな考えを持って、そのまま出勤した。

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