ときわの広場

ときわ動物病院のコミュニティ。診療のお話やしつけ教室の様子など、ざっくばらんに綴っています。

ウサギ専門診療科2 仔ウサギの下痢

2013-04-11 16:58:29 | ウサギ専門診療科
こんにちは、岡村です。



初めてウサギさんを家に迎える仔ウサギの飼い主さんは、
おうちにきたばっかりで、突然ウサギの軟便を目にするとあたかも、
この状態はそんなに異常ではないというような錯覚をしてしまうこともあります
軟便を盲腸便かと勘違いして、動物病院に相談にいくべきなのかどうかも判断がつかないのかもしれません。
しかし、仔ウサギの下痢は様子をみずに即診察を必要とする疾患であることを知っていてください
元気もないし、なんだかおかしいという直感が大切です。
慣れた人なら、表情をみればすぐに不調に気づきます。



ウサギさんのお腹はとても大きく、中でも、
食物を貯留させたり発酵させたりする盲腸が物理的にも機能的にも
大きいことがわんちゃんや猫ちゃんと大きく違う所です。
また、食糞をすることからも、消化器官はウサギの成長にとって、
とても大切な機能を果たしているとわかります必要だから糞を食べるのです。
このため、もし、離乳期の仔ウサギたちの消化器に異常があれば、
たちまちに弱っていく事は容易に想像できます。




仔ウサギは、胃のpHが弱酸性で過ごす時期が他の動物と比べて長いことがわかっています。
繊維、タンパク質、炭水化物をミルク以外の自然産物のみから得ようとするには、
pHが強酸になるまで下がる必要があり、だいたい7週齢以降と考えてよいでしょう。
このpHの強酸化と、正常細菌叢の形成は密接に関わっています。
細菌には至適pHがあり、違うpH環境では増殖できません。
弱酸のpH環境で、環境変化などのストレスも引き金となり、
悪玉細菌たちが増殖した結果、腸管毒素が産生され、
仔ウサギを弱らせてしまいます。クロストリジウム性腸炎などがそうです。
また、コクシジウムなど原虫に属する寄生虫の存在も悪い結果につながります
下痢、脱水を繰り返させ、腹痛を伴い、そして仔ウサギたちは弱ってしまうのです。
これらの疾患によって衰弱状態にまでなってしまった仔たちの救命率は残念ながら、
けして高くありません




とてもかわいいレッキーちゃん手をペロペロ舐めてくれます。



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しかし、こんな小さな仔も生命の危機をさまようような辛い体験をしています
適切に保温、補液、哺乳、抗生物質療法などの治療と検査を行うことも大切なのですが、
何よりもこの仔の生命力には感動しました
しんどい時の様子をwebに載せるのもかわいそうなのですが、飼い主さんから許可を得られたので、
状態の悪い仔ウサギさんの様子の参考にしてください。
被毛がパサつき、眼が輝きを失い、奥にひっこみます。
この状態はとてもほっとけず、危険です
改めて飼い主さんに感謝いたします


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病院のお花も新たになりました。
オレンジの花は不死鳥をイメージしたお花らしいです。
縁起よいものを用意してくださったお花屋さんにも感謝です。


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ときわ動物病院
ウサギ専門診療科
〒596-0823
大阪府岸和田市下松町3-4-1
TEL072-493-6710
http://www.tokiwa-v.com

高度検査が必要な場合

2013-04-05 20:03:45 | 院長のつぶやき
こんにちは、岡村です。



動物の医療では、高度画像診断検査ができる病院は限られています。
というのも、MRIやCT、内視鏡などの検査機器は
びっくりするくらい高いので、
すべての動物病院で簡単に導入できるものではありません。
患者さんが多く、これらを使用する機会も多い、限られたごく一部の病院のみが導入できます



しかし、これらの検査機器の結果が、診断の手助けとなる事も多くあります。
特に脳内の病変の時に力を発揮してくれるのが、MRIです。
また、内視鏡は、消化管の奥までのぞける、非侵襲的で組織の生検ができる唯一の手段です。



ごく一部の病院以外では、高度画像診断検査が必要ないかといえば、そういうわけでもありません。
病気は病院を選びません
うちでは自院で検査をすることができないので、
懇意にしている先生のところに連れて行って検査をしてもらうか
飼い主さんに連れて行ってもらっています。状態やタイミングによりけりです。
そして、帰ってきてから画像診断医の意見も交えて、
検査結果を受けての治療プランの相談を飼い主さんと行います





MRI検査が大きく診断の手助けをしたわんちゃんのケースの紹介です。
脊髄疾患や脳内疾患の鑑別のため、検査を受けてきてもらいました。
結果、病変がみつかり、より適切な内服薬の組み合わせによる管理を行うことができ、
検査前に比べ症状を落ち着けることができています。







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次は、内視鏡のケースです。
上部消化管や下部消化管の炎症性疾患や腫瘍性疾患の鑑別にはとても有用です。
万能ではありませんが、低侵襲性で組織の生検が可能なところは素晴らしい
このケースではオペレーターの意見や病理組織検査の結果を待って相談となります。


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重篤な病態とどう闘っていくかは高度画像診断検査が非常に有用です。
このやり方だと、ボクが信頼する第3者(画像診断医、オペレーター、病理医)の意見も交えて
患者さんと病態のことを考えられますので、
まるで、獣医師が増えたみたいな考え方の上で診断ができるわけです
この事に関しては、うちは獣医師1人ですので、実は結構なメリットだと思っています
今後も、検査が必要な場合は、相談の上、実施していきたいと思います


動物の産婦人科

2013-04-04 12:09:45 | 院長のつぶやき
こんにちは、岡村です。


この春は、動物たちの出産のご相談がいくつかありました。
いつの場合でも、
出産、新生仔の誕生はとても感動的で、母の強さというものを強く感じます


妊娠が発覚したなら、その段階で検診を受けるのがよいでしょう。
出産の心づもりが飼い主さんにも必要です。
母体の健康状態、エコーで胎児の状態を把握すると同時に、
飼い主さんは何頭出産するのかを知っておく必要があります。
もちろん数によっては胎児の大きさも変わり、
帝王切開すべきかどうかも検討しなくてはいけません


飼い主さんの出産準備の仕方、周産期の母体の変化について、
出産の手順を知り、何をすればよいか、
難産かどうかの判定で、タイミングを見逃さないために何に着目しておくべきか、
出産後、母が仔の世話をしない場合も考えられ、これの準備もいります
病院で聞いたり、いろいろ本を読んだりして勉強しなくちゃいけません


わんちゃんはたくさん情報があります。
猫ちゃんは、野良猫ちゃんたちのイメージから、昔は勝手に難産が少ないという印象だったのですが、
実は効率よく着床する動物であるだけで、難産も比較的目にします。
妊娠に気付かれないケースが多く、出産予定日を把握しづらいことも多々あります。
モルモットさんは、出産させるまでの年令が若い時に限ることは有名です
ウサギさんも効率的な着床をし、比較的上手に産んでくれますが、
環境的不備や母体状態、胎仔の状態によっては難産になることもあります。
鳥さんは、無精卵も産卵します。発情期になるとお腹がふくれてきて、体調を崩しやすいのが特徴的です
鳥には横隔膜がないため、卵の存在はそのまま腹腔臓器や肺や気嚢を圧迫してしまいます。
適切な環境、栄養を整えても、苦しがって産卵しない場合は補助が必要です。







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このエックス線写真では、鳥さんのお腹の大部分をしめる卵を映し出しています。
卵によって臓器が圧迫され、みるからに苦しそうです。
このケースでは出そうで出なかった一個を、
用手補助にて卵をだし、もう1個は環境整備をすることで無事うんでくれました



出産には十分な栄養補給と環境整備、それから、飼い主さんの心の準備がとても大切です