ときわの広場

ときわ動物病院のコミュニティ。診療のお話やしつけ教室の様子など、ざっくばらんに綴っています。

ウサギ専門診療科72 斜頸からの奇跡の快復

2016-11-15 15:35:45 | ウサギ専門診療科
今日は斜頸から奇跡の快復をみせた
たんちゃんのお話です


たんちゃんはある日突然、首が90度近く傾き
眼振もひどく立ち上がることもできず
パニック状態で来院されました

立ち上がろうとする度に体が回転していしまい
自分ではその回転を止めることもできません

飼主様も突然のことにショックを隠しきれない
ご様子でした

斜頸という病気は、それが原因で命を落とす
ことはほとんどありませんが、ごはんが
食べられないなど二次的なことが命を脅かす
場合もあります

そのため、お薬による治療に加えて、
ご自宅でどれだけ手厚い看護をしてもらえるか
がカギとなります

流動食を食べさせてもらったり、
お水を飲ませてもらったり、
転んでもケガをしないように床や壁に
タオルを敷きつめてもらったり、
お尻周りの汚れをきれいにしてもらったり...

そんな飼主様の頑張りがたんちゃんにも
届いたようで、発症から5日目に自力で
立ち上がれるまでになりました

19日目には首の傾きが30度程に改善し
元気に動き回れるようになりました


38日目には首の傾きは10度程になり
そして65日目には傾きがなくなり
完全快復しました!!


最初の重症な状態から後遺症が残ることも
考えられただけに、この快復には目を見張る
ものがありました

飼主様がたんちゃんをご家族の一員として
大事に看護していたからこそだと思います


また、たんちゃん自身の頑張りにも感動です
どんな困難にも負けず、一生懸命前向きに
生きるウサギさんの底力って
すごいですよね




ときわ動物病院
〒596-0823
大阪府岸和田市下松町3-4-1
072-493-6710





ウサギ専門診療科71 膀胱結石と子宮疾患と臼歯過長の併発

2016-10-23 09:55:11 | ウサギ専門診療科
今日は膀胱結石と子宮の病気と臼歯過長を
同時に起こしてしまったウサコちゃんのお話です。

ウサコちゃんは5歳のミニウサギさん

血尿と食欲が落ちているとのことでご来院されました。

血尿に関しては...
避妊手術を受けていない女の子のウサギさんでは、
尿に血が混じった場合、膀胱炎か子宮の病気の
どちらかがが疑われます

実際には子宮が原因であることの方が多いのですが
ウサコちゃんの場合はめずらしく両方でした

膀胱の中に結石ができていて、膀胱炎が起きていました。

横向きのレントゲン写真で、左側が頭側です。
赤い矢印の先にある白色の丸いものが結石

ウサコちゃんは何度も何度もおしっこの姿勢を
取っていました
常に残尿感のような気持ち悪さと
痛さがあったはずです

また子宮も一部に腫れがありました

一方、食欲不振の原因は臼歯過長。
臼歯(奥歯)が伸びて舌に当たり、食べたくても
食べられない状態

こんなに病気をいくつも抱えながら、
ウサコちゃんは懸命に頑張っていました

ご来院された日からすぐに入院
翌日には手術を受けることになりました。

膀胱から取り出した結石です。

術後は、おしっこも順調に出せるようになって
元気に退院していきました

ウサコちゃんがスッキリした明るい表情に
なったのを見て、わたしもとても嬉しくなりました


病気は常にひとつではなく、重なってしまうことも
あります
でもそれぞれの病気のサインをウサギさんは
出してくれています

ウサコちゃんは、
① 赤色のおしっこをする
② 食べない
③ 何度もおしっこの姿勢をとる
...という3つのサインを出していました

こういうサインを見逃さないように、
普段からよく観察してあげましょう
そして、おかしいな?と思われたら
できるだけ早く受診するように
しましょうね



ときわ動物病院
〒596-0823
大阪府岸和田市下松町3-4-1
072-493-6710

ウサギ専門診療科70 肝葉捻転

2016-09-15 17:42:36 | ウサギ専門診療科
今日は肝葉捻転のお話です

肝臓はいくつかの切れ込みがあり
それぞれを葉(よう)と呼びます

その中の一葉(いちよう)がくるっと
ねじれてしまうのが捻転です

捻転すると肝臓内の血管もねじれて
血が流れなくなり、激痛が走ります

もちろん元気がなくなりますし
食欲も減退します
痛みでじっとして動けなくなることも
あります

まるちゃんは来院されたときには
貧血でお顔は真っ青
いつものまるちゃんの元気が
少しもありませんでした。

これはタイヘン!!と緊急入院

画像診断の結果、肝葉捻転が疑われました

治療方法は外科手術でねじれた肝葉を切除する
ことですが、まずは貧血が進行していたので
輸血をし、状態が安定するのを待ってから
開腹手術となりました

供血してくれたのは同居ウサギのサスケちゃん。

普段からまるちゃんと仲良しです

入院中もサスケちゃんがまるちゃんを心配して
大好きなおやつも半分をまるちゃんのために
残していたそうです
なんて優しい子

サスケちゃんのおかげでまるちゃんは
無事に手術を乗り越えることができました


術後、痛みからも解放されたまるちゃんは
順調な快復をみせてくれました

1ヶ月経った今では、すっかり元通りの
元気なまるちゃんです

カメラに向かってこのキメ顔!!

今回、飼主様はまるちゃんを助けるために
必要なことは、すべて快くご協力くださいました
その優しさと素早い判断がまるちゃんの命を
救うことにつながったと思います
飼主様の愛情ってすごいですね



ときわ動物病院
〒596-0823
大阪府岸和田市下松町3-4-1
072-493-6710

ウサギ専門診療科69 2度の手術

2016-08-26 19:19:22 | ウサギ専門診療科
今日は腹腔内膿瘍と毛球症で2度の手術を受けた
6才4ヶ月齢のココちゃんのお話です

ある日、急に食欲も元気もなくなったココちゃん

もともと触診で見つかっていた下腹部の塊が
急に大きくなり、痛みを訴えていました
様々な検査の結果、お腹を開けることになりました。

そこには2個の膿瘍があり、ひとつはきれいに摘出、
もうひとつは腸管と膿瘍が癒着していたため
できる限りの除去になりました

手術は無事に乗り越え、痛みも取れましたが
元気と食欲にムラがある状態


良いときと悪いときを繰り返しながら
約2ヶ月間、飼主様はお薬をあげたり
すりおろしニンジンを作ったり
食べたペレットの量が何gかを
毎日記録してくれていました

体力的にも落ち着いたところで、
2回目の手術となりました

今度は胃の中に溜まっていた
毛球を除去する手術です

長年の蓄積で大きな塊となって
胃もたれを起こし続けた原因です

2度目の手術も無事に乗り切ってくれたココちゃん。
本当によく頑張りました
今はとても元気で食欲も旺盛です


ウサギさんの消化管にメスを入れることは
できるだけ避けたい大きな手術です

そのリスクをご理解いただき、2度の手術を
決断することは飼主様にとって
本当に苦渋の決断だったと思います

でもその想いがココちゃんの元気を
取り戻すことにつながりました


ココちゃんは、これからも飼主様の愛情を
たくさん受けて健康で幸せな毎日を送って
ほしいなぁと思います


ときわ動物病院
〒596-0823
大阪府岸和田市下松町3-4-1
072-493-6710



ウサギ専門診療科68 皮膚無力症(エーラス・ダンロス症候群)

2016-08-02 10:40:57 | ウサギ専門診療科
今日は皮膚無力症のお話です
エーラス・ダンロス症候群とも呼ばれます。

みるくちゃんは生後間もない頃に
畑にいたところを助けられ
現在の飼い主様に大切に人工保育で
育てられたウサギちゃんです

初めて来院された時には89gで
片手の掌に乗ってしまうほどの
小さな赤ちゃんウサギでした



飼い主様の懸命な努力の甲斐あって
すくすくと大きくなりました

ある日突然、皮膚を持っただけで
簡単に裂けてしまう事態が起こりました

病理検査の結果、皮膚無力症
(エーラス・ダンロス症候群)の可能性が高い
ことが分かりました

皮膚無力症とは、皮膚の異常な脆弱性を示す
遺伝的疾患で、皮膚の成分であるコラーゲンや
繊維の形成がうまくできず、薄くてとても弱い
皮膚になってしまう病気です

みるくちゃんの皮膚は皮膚の下の筋肉や血管が
透けて見えるほど薄いのです

残念ながら治療法はありません
とにかくケガをさせないことが大切です。

飼い主様は、みるくちゃんがケガをしないように
細心の注意を払って、環境づくりをされています。

そのおかげで生後3ヶ月が過ぎた今では
1.34kgまでになりました



本人はケガなど全く気にすることなく
元気に走り回っているそうです

そんな様子をハラハラしながらも
微笑ましく見守っている飼い主様の
大きな愛情に、みるくちゃんも
順調に育つことでと応えている気がします

治らない病気と分かった上で、そのことをしっかり
受けとめて愛情深く対応される飼い主様の寛容さは
本当に素敵だなぁと思います



ときわ動物病院
〒596-0823
大阪府岸和田市下松町3-4-1
072-493-6710