gooブログはじめました!

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

 儒教とパワハラ

2022年08月14日 | インポート


 家康が命じて、藤原惺窩や林羅山らが幕藩制度の思想的基礎として体制教育に用いた「儒教=朱子学」は、400年以上にわたって日本人の思想哲学の根底を流れ続けてきたので、現代日本文化を論じるにあたっても、この流れを理解しておかないと、本質的な問題点を明らかにすることは不可能だと私は思う。



 江戸幕府が、藩校や寺子屋などで教書として用いるよう指示したのは、論語や大学、中庸、孟子など儒教定番の四書である。

 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%AB%96%E8%AA%9E

 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E5%AD%A6_(%E6%9B%B8%E7%89%A9)



 これらは孔子思想のエッセンスといわれている。

 日本では、朱子学が体制思想として導入されてから、この四書を基礎とした学問の一大流派が成立し、この人たちを「儒者」と呼んだ。

 大きな特徴として、「身分差別制度」を正当化し、身分の秩序=序列社会を承認して、それに従うことが社会を安定させる原理と考えたことだ。



 身分差別とは、男女では家父長である男が上、権力では統治者が上で、その代理人である役人がいて、その下に士農工商の序列を設け、さらに長幼(年齢)の序列を定めたが、実際には本当に社会的序列を定める本質は財産であったので、幕末には、圧倒的な実力を持った商人たちによって、江戸幕府が崩壊させられた。



 儒教四書の主旨は「五倫」と「五常」である。

 五倫とは、父子の親・君臣の義・夫婦の別・長幼の序・朋友の信の5つ。

 五常とは、仁・義・礼・智・信の5つ。

 社会生活の中で、人として行なうべき道徳の基本となる。この2つが人間社会の身分秩序を支えている本来自然的なものである、という思想が儒教である。



 簡単にいえば、序列が下の者は、上の者に無条件に従えということで、男女では男を優位とし、長幼では老人を優位とし、兄姉を優位とし、権力では統治者に近い者を優位とし、社会を食や家、器物で支える生産者たちを下位に置いた。また、もっとも社会を動かす大きな力を持っているはずの豊かな商人の地位を最下位に置いた。

 これが大きな矛盾点となって、武家社会の儒教体制が崩壊したのである。



 もっといえば、平塚雷鳥が喝破した『元始、女性は太陽であった』の意味は、人間社会で最上位に置かれるべきは「母」である、という考え方こそ、社会を維持する上で、もっとも合理的な思想という意味なのだが、孔子儒教は、この原理論に真っ向から敵対するものだった。



 文化人類学にあっても、人類の古代社会は一様に「母系氏族社会」であったのだが、人類社会の飽和とともに戦争が多発するようになり、男女の地位が逆転させられたのである。

 儒教というのは、母系氏族社会が男系家父長制封建社会に遷移し、それを正当化するために登場したともいえよう。



 この儒教が、現代に至って、社会問題の大半の原因になっている。それは、国家権力に価値を置き、あらゆる社会的不正義の原因となっている序列主義を正当化するものだからだ。

 それは、孔子儒教を、社会や生活の隅々にまで残した韓国北朝鮮社会にもっとも顕著に表れている。



 現代韓国の異様な社会問題の大部分は、実は儒教思想の問題である。それは、「序列の権威」をカサに着て、真実をねじ曲げ、論理を逆立ちさせてまでパワハラを繰り返す社会問題の根底に巨大に横たわっている。



 「ナッツ姫」事件から8年、パワハラ告発が相次ぐ韓国 「カプチル」撲滅の道は遠い 2022年7月6日

 https://globe.asahi.com/article/14661392



 上司が部下に対し、愛犬にエサをやって糞の始末をするよう命じる。航空会社のオーナーの娘は、(自分が乗った)旅客機が滑走路を走行し始めたが、ゲートに戻らせ、彼女をイラつかせた客室乗務員の一人を降ろさせた。ある新聞社の実力者の孫娘は10歳だが、お抱え運転手を侮辱し、役立たずだからクビにすると脅した。



 こうした言動は韓国ではとても一般的で、今では「カプチル(gapjil)」(訳注=直訳は「甲乙」だが、転じて「パワハラ」や「モラハラ」の意味)という言葉が生まれている。

 この言葉は、「gap(カプ)」と「eul(エウル=嫌がる言動)」の混成語で、パワーがある「カプ(甲)」が下位の人(乙)に「嫌がる言動」をするという意味だ。社会的地位が職業や肩書、資産によって決まる韓国の根深い階級社会では、誰であれカプチルから逃れるのが難しい。



 ところが最近は、カプチルに対する反発が起きている。政府機関や警察、市民団体、企業などはウェブサイトや道路に張った横断幕、公衆浴場のステッカーを通じて、「カプチル・ホットライン」の開設を知らせ、権限を乱用する役人や上司を告発するよう人びとに促している。



 脅迫する言葉遣いをしたり、ワイロを贈ったり、下請けを食いものにしたり、賃金の支給が遅れたりするのは、いずれもカプチルに当たる。大学のキャンパスでは、学生たちがセクハラの「カプチル教授」を非難するプラカードを掲げている。



 このキャンペーンはうまくいっているようにみえる。政治家も政府高官も企業の有力者たちも、カプチル・スキャンダルが表面化すれば評判が台無しになるのを誰もが見てきた。カネ持ちや有力者が一気に転落するのを見て、民衆は誇らしく、また、他人の不幸に留飲を下げるのだ。



 カプチルは大統領選挙キャンペーンの争点の一つにもなった。有力候補の李在明の妻は、李が道知事だった時、道政府職員を彼女の召使のように扱い、彼女のために持ち帰り用の食べ物を取ってこさせたり休日のショッピングをさせたりしたとして謝罪を余儀なくされた。李は選挙に小差で敗れた。



 「韓国の人たちは虐待に対して非常に忍耐強く暮らしているが、受け入れられなくなると、それをカプチルだと呼んで強く反発する」とパク・チャンジンは言う。大韓航空(KAL)の元客室乗務員で、小規模な野党「正義党」を率いて反カプチル運動を展開している。

 パクにはその気持ちがわかる。



 KAL会長だった趙亮鎬の長女、趙顕娥は2014年、米ニューヨークのケネディ国際空港で滑走路に向かっていた(KALの)旅客機をゲートに戻らせた。ファーストクラスにいた彼女へのマカダミアナッツの出し方が気に入らなかったからだ。

 彼女はパクともう一人の客室乗務員をひざまずかせ、パクを機内から追い出した後、ようやく同機を離陸させた。



 KALの会長一族は18年にもカプチルの典型を演じた。趙家の次女、趙顕旼(チョ・ヒョンミン)と母親の李明姫が従業員に対し大声を上げて侮辱する音声と動画が明るみに出たのだ。KAL前会長は謝罪に追い込まれ、2人の娘を同社の管理職から追放した。



 そうした行いに対して、韓国人たちがもっと寛容だった時期がある。特に、「チェボル(財閥)」として知られるこの国の複合企業群を運営する超富裕層が関与した場合がそうだったとパク・ジュンギュは言う。

 パワハラ被害者に法的な助言をする市民団体「Gabjil 119」の幹部の一人だ(この団体は「カプチル=gapjil」に、「gabjil」という別のローマ字つづりを使っている)。



 「しかし、人は今や、行動の可否について、もっと高い基準を求めている」とパクは言う。「ある人が権威者に対して『私にカプチルをするのか』と言う時、その告発には強力なパンチ力がある」



 Yun Ji-young, a human rights lawyer, second from left, and Park Jum-kyu, of Gabjil 119, a civil group that provides legal counseling for gapjil victims, center, during a meeting with colleagues in Seoul, South Korea, on April 28, 2022. A backlash against abuse from bosses has erupted in what is a deeply hierarchical society. (Chang W. Lee/The New York Times)



 韓国は世界の裕福な国の中では1週間の労働時間が最も長い国の一つで、カプチルはこの国の悲惨な労働条件の背景にある理由の一つによく挙げられる。この現象には、残業代の出ない超過労働や監督者によるいじめなどさまざまな形態がある。



 ホン・チェヨン(30)は、彼女が以前に働いていた企業の年配の男性管理職たちについて、「おまえたちが結婚できないのはそんな服装をしているからだとかつぶやいて、女性従業員の服について何かと文句をつけながらオフィスをぶらぶらする以外、彼らにはすることがないらしいのが嫌だった」と言う。

彼女がその企業を辞めた理由の一つは、彼らのそうした行動だった。



 企業や政府のエリートたちは「皇帝の作法」として知られるタイプのカプチルで悪名高かった。部下たちに傘を持たせて並ばせたり、一般の人には階段を使わせて自分たちだけがエレベーターに乗ったりすることだ。



 政界実力者の一人、金武星は17年、空港で助手にスーツケースを相手の方を見もせず寄越したが、それがある種の「皇帝の作法」の象徴になった。そして後日、彼は人びとの嘲笑の対象になった。



 カプチルの起源がかつての軍事独裁政権にあるとみる人もいる。軍事独裁政権の支配者たちは、今日でも浸透している命令順守の文化を押しつけた。メディア研究者のカン・ジュンマンはカプチルに関する自著の中で、韓国社会の「基礎構造」と「根深い沈滞」が、国民が中毒症状を起こしている序列至上主義に投影されていると指摘している。



 「職場でカプチルに苦しんでいる人は、電話でコールセンターの従業員と話すときのように自分の方が立場が上にあると自らカプチルを犯すのだ」とチョ・ウンミ(37)は言う。彼女は、経営者の暴言が理由で4月に事務用品工場を辞めた。



 最近のカプチルに対する内部告発の傾向は、韓国の司法制度への深い不信感も反映している。自分たちは超法規的存在であるかのように振る舞う企業エリートたちを、裁判所はめったに罰することがないと人びとは言っている。

ハンファ企業グループの会長、金昇淵は07年、従業員に暴行したが、ほんの短期間収監されただけだった。



また、SK企業グループを運営していたファミリーの一員チェ・チョロンは10年、アルミ製の野球用バットで労働組合員を殴打したが、執行猶予つきの刑を言い渡されただけだった。



 カプチルの被害者が自分たちの苦情を法的に訴える手段を使い果たした場合は、通常、携帯電話のカメラやソーシャルメディアを使って世論という「法廷」にパワハラをした者をさらすのだ。18年には、ネット上のファイル共有会社の代表者ヤン・ジンホが、元従業員を情け容赦なく平手打ちにした動画が出回った。



 17年には、医薬品会社・鍾根堂の会長イ・ジャンハンがお抱え運転手に罵詈雑言をあびせる音声ファイルが登場した。「おまえのような倅を育てた親父はどんな野郎なんだ」。イは、そう罵倒したのだ。

 ヤンは暴行や他の犯罪で投獄され、イは謝罪のための記者会見を開くことを余儀なくされた。



 反カプチル運動にもかかわらず、韓国が労働環境の公正さや社会の平等性を高める道のりは遠いかもしれない。

 職場におけるハラスメントを罰する法律が19年から施行されているが、違反者に対する罰則は懲戒処分か最高8000ドル相当の罰金が科せられるだけである。昨年のGabjil 119による調査だと、29%近くの労働者が職場での虐待を報告した。



 「カプチルは今でも、その会社内で対処すべきものとみなされている」と、カプチル被害者を支援する人権弁護士ユン・ジヨンは指摘する。「その問題を外部に持ち出す人には、強い敵意が向けられる」とユンは言う。



 Gabjil 119のパクは、さらなる説明責任が求められなければ、上司の虐待に苦しめられている韓国人労働者たちにとって、状況はほとんど変わらないだろうと懸念している。

 「韓国人は軍事独裁に幕を引いたし、大統領を弾劾した」とパクは指摘する。「しかし、我々はまだ、職場文化を変えなければならないのだ」と言っている。(抄訳)

**************************************************************

 引用以上



 上の告発文章を読んでいて、我身の体験を思い返した人が少なからずいたと思う。

 私もそうだ。大企業の工場に納品に行ったとき、完全に見下されて奴隷のような扱いを受けて不愉快極まりない思いをさせられたことは一度や二度ではない。

 特に「縦型社会」といわれる封建的価値観を残した風通しの悪い企業の多くで、それは起きる。支配的企業の底辺に配置された担当者が、立場を背景に威張り散らすのだ。

 まるで納品業者が困り果てるのを楽しんでいるかのように見える。



 これが「儒教」=序列主義の行き着く社会なのだ。企業よりも、むしろ権力をカサにきた役人たち=警察官や行政官が、そうした庶民への見下しを行って我々を不愉快にささせることが多かった。それは半世紀前、1970年代まで、日本社会文化の常識だったといっても過言ではない。



 先日、私が言いがかりをつけられて検挙された交通取締でも、警官という権力をカサにきて、馬鹿げた不合理な取締を行って成績を上げようとしてた連中の根底にある思想は、序列主義であるというしかない。

 その後、私は、県公安委員会に申立書を送ったのだが、予想通りクソを拭く役にも立たない下劣な回答書を送ってよこした。木で鼻をくくったような官僚文書の典型で、弱い立場の庶民を守るための立法である警察法79条の主旨などカケラもなかった。



 世界でもっともひどい儒教的パワハラに苦しむ韓国の実態は、儒教圏内にある日本の問題でもある。

 もう一つ紹介しよう。



韓国で職場ハラスメント禁止法が施行 労働者の7割が「いじめ」被害 2019年7月17日

 https://www.bbc.com/japanese/49012337



 韓国で16日、職場でのいじめ行為を禁止する改正労働基準法が施行された。これにより、対応が不十分な雇用主は、最長3年の禁錮刑や、最大3000万ウォン(約275万円)の罰金などが科せられる可能性がある。

 韓国で雇用主に対し、ハラスメント行為への対応を義務づけるのは今回が初めて。



 この改正労働基準法により、労働者は、うわさ話を広められたり、会社の会合への出席を強要されたりするなどのハラスメント行為を受けた場合、通報できるようになる。

 さらに、健康面に支障をきたした場合には、賠償請求も可能となる。

 一方で雇用主は、被害者本人や、職場いじめを報告した労働者に対し、解雇を含むいかなる措置を講じることも禁止される。



 労働者の7割がいじめを経験

 職場でのハラスメント行為は、韓国国内にまん延している。

 同国の国家人権委員会によると、国内の労働者の約7割が上司や同僚からのいじめを受けたことがあると報告している。

 労働者の1割以上が日常的に被害を受けている一方で、被害者の約6割は、被害を訴えるなどの行動を起こせずにいるという。



 いじめガイドライン

 企業側の理解を深めるため、韓国政府はハラスメントと見なされる行為に関するガイドラインを公開した。



 例えば、酒やタバコ、会食への参加の強要はもちろんのこと、同僚に関するうわさ話や、個人的な情報の拡散が、ハラスメントに当たる。他の人たちの前で暴言を浴びせたり、恥ずかしい思いをさせたりすることも含まれる。



 「カプチル」撲滅

これまで、嫌がらせ行為などを通報することは、韓国国民にとってハードルが高かった。労働者を守る法的枠組みが欠如していたことから、多くの人は声を上げることをためらっていたとみられる。

 この改正労働基準法は、職場における「カプチル」(韓国語で、権力者による嫌がらせ行為などを意味する)を一掃することを目的としている。



 2014年、大韓航空の当時の副社長だった趙顕娥(チョ・ヒョンア)氏が、旅客機内でのナッツの出し方をめぐり、客室乗務員を機体から降ろすよう要求した、いわゆる「ナッツ・リターン」事件などが、「カプチル」の例として挙げられる。



 大韓航空を傘下に持つ韓国の財閥、韓進グループの趙亮鎬(チョ・ヤンホ)会長を父に持つ趙氏は、米ニューヨークのジョン・F・ケネディ空港から搭乗した旅客機内で、客室乗務員がマカデミアナッツを提供する際に皿にあけてではなく、袋のまま提供したため、機体を滑走路から出発ゲートに引き返させ世間の注目を集めた。



 この事件は韓国で激しい注目を集め、チェルボといわれる財閥に支配されたビジネスシステムをめぐる国民的議論が再燃した。

**********************************************************************

引用以上



 儒教が韓国に導入されたのは、たぶん日本の南北朝時代(900年くらい前)で、実際には600年くらい前に最盛期を迎え、以来、韓国社会の思想的礎となってきた。

 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%9D%E9%AE%AE%E3%81%AE%E5%84%92%E6%95%99



 朝鮮といえば序列主義の差別社会、現代韓国では、ほぼ6階級あるといわれるが、北朝鮮は凄まじく、自称平等の社会主義であるのに51階級(3大階層51個分類)にも区分されているという。

 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%87%BA%E8%BA%AB%E6%88%90%E5%88%86



 こうした儒教=朱子学の思想的土台を十分に理解しておかないと、現代日本における地位を背景に威張り散らす「パワハラ」問題の本質を理解できないし、解決することもできない。

 朝鮮でも日本でも、儒教国家に共通するのは、人と人が初めて出会うとき、必ず「相手は自分より上か下か?」との見分け、という対人文化の愚かさを克服することはできない。



 自分より目下ならパワハラが許されるというわけだ。韓国が日本に対して起こしている問題の大半も、韓国人が身分序列として日本人を下に見ているという事情からきている。

 次の世代が解決すべき第一の問題は、この意味で、パワハラの原因になっている序列主義=身分差別を、どう廃棄してゆくかということなのだ

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。