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工房 十一椿(toi tsubaki)

久留米絣や 大島紬など 着物を使って洋服やバッグなどの製作・販売を行っています。

紳士物のジャケットの裏地取り換え

2020年09月26日 | 洋裁のコツあれこれ

2020.0926

先日、姉が 兄のジャケットを持ってきました。

見ると・・

 

 

 

袖裏が・・擦り切れています・・。

「こんなになるまで・・よく着てくれたなぁ・・。」

っと私。

 

実は このジャケットは私が 兄にプレゼントしたもの。

あれは・・かれこれ 約30年前・・。

兄より先に就職した私は、当時は 羽振りが良かった?!

・・ので まだ学生だった兄に買ってあげたのが このジャケット!

 

 

まさか・・まだ 後生大事に着ていてくれたとは・・(驚)

 

姉曰く

「うん、よく着てるよ~。」と。

 

っで、デザインもオーソドックスで

見頃裏も型崩れもしていないこのジャケット。

けっこう 重宝しているそうで

袖裏さえ変えれば まだまだ 着られる。

 

そこで 袖裏を取り替えて 復活させることに!

紳士物のジャケットって 

袖裏だけお洒落な柄物の裏地が付いていたりしますが

この裏地、町の手芸屋さんに行っても・・売ってない。

数件回りましたが・・どこにも・・ない。

「今は、裏地自体・・あんまり扱ってないのよね~。」

っとのこと。

仕方ない・・見頃と同じ紺裏をつけるかな・・と

諦めかけた・・その時・・試しに 

ネットで ”紳士 袖裏”で検索すると・・

 

・・・あった!

 

大阪の紳士服屋さんが ネットで 10cm単位で販売をしてました。

 

恐るべし・・ネット世界。

 

・・っで 早速 裏地の取り換え作業に着手!

 

まず 袖裏を外します。

すると・・紳士物の袖の中って・・

 

こんな感じ。

 

ものすごい 分厚い” ユキワタ”がかませてあり

 

 

肩回りが ”毛芯”で強化されています。

 

 

画像で 私が手に取っているのが”毛芯”

紳士物のジャケットでは この”毛芯(馬の毛)”が使われ

婦人服(オーダー)では ”パンピース(固めのローンみたいな芯)”が使われます。

 

どちらも 接着がついていないので

すべて ”八刺し”で 生地に止めつけていきます。

 

婦人服は 基本 生地も柔らかく 

パンピース芯も柔らかいので仕立てにも力がいりませんが

紳士物に使う”毛芯”は硬く その毛芯を見頃に何重にも重ねて仕立てていくので

かなり 力がいる!と言われています。

なので紳士服の仕立て屋さんには 男性が多いですね。

 

・・っで どうやって 袖裏を取り替えるかというと・・

 

取り除いた”袖”を分解して そのまま 型紙として型を取っていきます。

 

 

縫い代を切り取って原寸の大きさにする方法もあるのでしょうが

私は 縫い代を残したまま 新しい裏地の上にのせ

きりじつけ をしていきます。

縫い代を切ってしまうと 伸びたり 地の目が狂ったりするので

縫い代はそのまま残して使用する方がやりやすいですね。

 

 

・・っで 完成!

 

 

 

 

やっぱり 柄物(ストライプ柄)がいいですね。

 

ちなみに・・左の袖口だけが擦れていたので

そこだけ補強しましたが なんで 右ではなく左?なのっと思ったら

きっと・・腕時計ですね・・。

こんなに擦れ方が違うんですね。

 

もし、袖裏を取り替える ことがあったら

左袖口も ちょっと 注意してみておくといいですよ。

 

・・っで 他にも シャツを預かっていたので

これもお直し!

襟が擦り切れてしまったり・・汚れがとれなかったり・・。

 

そんな時は 襟をひっくり返します。

 

意外と・・このお直し依頼 多いですね。

 

他は どこも傷まないのに なぜか 襟ぐりだけが痛む。

不思議です・・。

 

かなり涼しくなってきたので

このジャケットもそろそろ出番かな。

 

「いつでもお直ししてあげるから もうちょっと がんばっといでっ!」っと

ジャケットに言い聞かせ 

今日 送り出しました。

 

*****************

 

ちなみに・・このジャケット どこのブランドだったけ?

姉と二人でタグを確認しながら・・

”PEYTON PLACE”のロゴに

二人で同時に

「懐かしい~~~~!!」

 

当時は まだまだ バブルの名残が残っていた時代。

日本のデザイナーが活躍した時代。

コシノジュンコ、ケンゾー、ヤマモトカンサイ・・・。

そして、国内ブランド、いわゆる DCブランドが流行した時代。

物価も高く ブランド服なんて お高くて

私ごときには とうてい 手の出ない時代でした・・。

まぁ、だから ”洋服は自分で作ろう!”‘っという発想のもと

今があるっと言えるのかもしれないですが・・(苦笑)

 

なので・・就職して羽振りがよかった?!っとはいえ

兄へのプレゼントは 私としてもかなりの大奮発。

それを こうして まだ 着ていてくれていることは

ほんとに有難いことですね。

 

まぁ・・兄が それを覚えているのかどうかは謎ですが

当時から付き合っていた姉が しっかり覚えてくれていて

こうして 大切にしてくれているのが ほんとにうれしいです。

 

あれから 約30年

今は ”倍返し”以上に 兄夫婦にはお世話になっています。

 

感謝感謝。

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カビの生えた本革のコート

2017年12月04日 | 洋裁のコツあれこれ

2017.1204

12月に入り 寒くなってきました。

深夜の冷え込みは・・5度

日中の最高気温も 10度程度。

 

・・で

 

そろそろ コートの出番!

 

・・ですが いざ 皮のコートを引っ張り出してみると

 

「きゃぁ~~~~!!!カビが生えてる!!!!」

 

 

・・なんてことも・・・(泣)

 

 

 

・・・っで 本革のコートのカビ取りをやってみました。

 

 

まず・・裏地の裾をめくって 中の状態を確認・・。

 

 

 

 

うおあ~~!! 真っ白・・・・。

 

思ったより・・ひどかった・・

 

実は・・裏地の背中の部分にまで カビが吹き出していて

これは・・大変な事態かも・・・

・・っと覚悟していましたが これほどまでとは・・。

 

・・っで

 

カビ取り対処方法として・・

 

タオルを 水で湿らせて硬く絞ります。

その硬く絞ったタオルで 拭き取ります。

 

 

 

しっかり 拭き取ります。

 

 

 

 

 

この時、縫い代内側や・・

 

 

 

 

 

ポケットの際・・まで しっかり確認します。

カビは・・あんがい・・隅々まで入り込んでいます・・・

 

・・っで 拭き取った箇所 と カビの生えた箇所 比べると・・

 

 

 

 

 

こんな感じ。

 

・・っで 全部 拭き取って・・

 

 

 

 

 

こんな感じ。

 

 

 

隅々まで しっかり拭き取ったら

風通りのいいところで 陰干しします。

 

 

 

 

 

カビは 根が残っていると また 生えてくる可能性があるので

しっかり乾燥させます。

 少なくとも 一か月ほどは しっかり乾燥させます。

 

この後、カビが生えてこないのを確認したら

裏地を閉じます。

 

革のコート 復活!です。

 

 

 

 

 

 

尚、カビの状態によっては・・

・カビが取れない

・逆にカビが広がった

・シミになった・・・などの

トラブルが起こる可能性もあります。

 

あくまでも 革のコートのカビ取り方法の一つのやり方として

参考にしていただければ幸いです。

 

不安な場合などは 無理せず クリーニングにお出しくださいね。

 

 

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ワイヤーを入れて裾巻ロック

2015年06月16日 | 洋裁のコツあれこれ

2015.0616

先日 社交ダンスの衣装の裾上げを頼まれました。

ダンス衣装の裾は ワイヤーが入ってますので












・・このワイヤーを入れながら巻ロックをしていくことに・・。



・・っで ロックミシンに・・















ワイヤー(テグス)付け巻ロックのアタッチメントをとりつけ

ワイヤーを入れる”穴”にワイヤーを差し込みセットして いざっ!











・・っで あとは ミシンを踏んでいくだけ。







すると こんな風に ワイヤー(テグス)が巻こまれて

巻ロックができます。



簡単簡単!



・・っでも・・

一見 キレイにワイヤーが入り 裾は 波打っているようにみえますが

実は 生地は 縮んでいる状態。











なので ある程度 縫ったら 布をしごいて生地を伸ばしておきます。

(画像は 生地をしごいて 生地が寄った状態)




アタッチメントの後ろあたりまでしごいて 生地がよったら

ワイヤーをつまんだまま すぅ~っとゆっくりひっぱります。








すると まだ 出てきていない部分(巻き込まれていないワイヤー)が

するする~っと 引っ張られてでてきます。



これを繰り返しながら ワイヤーを入れていきます。



面倒ですが・・

この作業を 途中途中で 繰り返していかないと

一周 回った頃には かなりの生地の縮みがでていますので


(初めてこの作業をやった際)

全部を 伸ばしていく作業だけで・・・・2時間かかりました・・(涙)





・・っで 出来上がりは・・









こんな感じ。





ダンス衣装用の生地は とっても繊細な生地が多いので

無理に引っ張ると

すぐに解けてしまいますので そぉ~っと扱うこと

お勧めです。



大変でしたが

良い勉強になりました。

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体型の補正から・・

2013年07月03日 | 洋裁のコツあれこれ

2013.0703

突然ですが・・


これ 何をやっているかわかりますか?












ボディー(トルソー・マネキン)に綿をペタペタ・・・。




実は これ 体型補正をしているところです。





人の身体は 基本 前屈み・・


ある程度の年齢になると しだいに 背中が丸くなり


それと同時に バランスを取るかのように



下腹が出てきます。




日々、その姿勢をとっていると その姿勢が普通になり

その姿勢のまま 肉づき

その体系が 自分にとって楽な姿勢・体系になってしまいます。



で・・そうなってくると

今までの洋服が 身体に合わなくなってしまいます





今回は その洋服の補正をする前に・・

先ず ボディ(トルソー・マネキン)を補正するところから

始めます。




ボディーの上に 綿や肩パットをペタペタと貼り付け













背中 肩甲骨周辺を丸く補正します。




そして 下腹の位置にも ペタペタ・・貼り付けます。











こんな感じになります。


実は・・このボディの補正をやってからでないと

型紙だけでは わからない部分がたくさんあります。


ゆとりの入れ方や

肩の位置などなど・・



実際に

このお客様の体系をかたどったボディーに

補正した型紙をのせて確認作業をしていくのですが

やはり 紙面上では 見えていなかった部分 たくさんありますね・・



そして この補正で 一番気をつけないといけないのは・・









肩線です。


背中が丸い肩は ほぼ 肩線の位置が 前に移動しています。


定規をあてているところが 実際の標準 肩の位置ですが

背中が丸くなると 自然に 首が前にでてくることも多く 

女性は 特に 家事や炊事など 前屈みでする作業が多いため

前肩になる傾向が多いといわれています。



「・・・前肩・・肩線???・・じゃぁ その肩線 どうやって決めるの?」




っと思われる方 多いと思いますが




肩線は 自分の首の付け根の真横の固い骨から

肩先の出っ張っている骨の線をつないだ線になります。



この線上に 洋服の肩線がのっかっていると

着心地がよくなり

“肩のり”がいい服っという言い方をします。





上着を着てみて

その肩線が 自分の肩線の位置より 

もし後ろにあったら・・

肩線の位置を 移動してみるといいかもしれませんね。


「以前は そうでもなかったのに 最近 着心地が悪いなぁ・・。」


とか


「着ていて 後ろに引っ張られる・・気がする。」




という服があったら

先ずは

この肩線・肩のりを注意してみるといいですね。


ちなみに・・



40年前の洋裁教室では

“自分の体系のボディ(トルソー・マネキン)”を作るところから

習ったそうです。


なので その当時 洋裁学校に通った方は

“マイボディ”を持っていたそうです・・。

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鉄まんとお袖

2013年05月19日 | 洋裁のコツあれこれ

2013.0519

洋裁アイテムには

さまざまなモノがありますが

その中で・・


「これ 便利だなぁ~」


っと思うアイテム“鉄まん”があります。



アイロン台の一種です。











パンツや袖など 筒状になったものを

アイロンで割る時など とても便利。

同じ用途のもので“袖馬(そでうま)”というのもあります。

アイロン台なのに・・・名前が 馬・・・




気になる方は 「アイロン台 馬」で検索すると

いろんな“馬”?が出てきますよ





この鉄マン(たぶん 鉄でできたまんじゅうの略だとおもうのですが・・。)


*まんじゅう=アイロン台の一種で 丸い饅頭の形をしたものをいいます。







“縫い目を割る”以外の 使い方でも大活躍する洋裁便利アイテムの一つです。


鉄マンは 表面は平らで 楕円形の形をしており

この両端の丸い部分で 袖山の丸みを作れるようになっています。











例えば・・・袖がこんな風にあるとします。

















袖をふっくら付けたい時 袖山に“イセ込み”をいれます。






*イセ込みの入った袖を 一般的に“ジャケット袖”といい

 それに対し イセをいれない袖を“シャツ袖”といいます。






縫い代の部分に ぐし縫いをします。

(この時、糸は しつけ糸を二重にして使います。)















ぐし縫いは 二本入れると よりキレイにイセ込みが入りますよ。










そして 先ほどの鉄マンの丸が大きいほうに・・・










カパっっとかぶせます。












そして ギュギュ・・っと ぐし縫いの糸をひっぱると


こんな風に丸くなります。




それを・・・









アイロンで軽く押さえます。


この時 ギャザーにならないように キレイになじませていきます。






表がなじんだら・・











今度は 反対側(裏側)に袖をかぶせ

縫い代が鉄マンの表にくるようにかぶせ











縫い代の部分のイセを キレイにアイロンで潰していきます。




すると・・・











こんな風に 鉄マンからはずしても 丸く形が出来上がります。





この袖を・・・・










見頃にくっつけてみます。


袖が形作られてます。









袖山がキレイにおさまると(袖が肩にのっかるともいいます。)

このように 袖山にマチ針一本 刺しただけでも

袖は きちんと形づくられるようになります。










袖つけは難しい・・・




っとおもわれがちですが 実は・・このイセ込み次第なんですよ。





ぜひ 今まで苦手だった方は

この鉄マン(袖マン)でのアイロン処理を試してくださいね。

見違えるほど 簡単に袖がつくようになりますよ


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