全日本空輸、ANA が空前の危機に扮している。5100億円の赤字を余儀なくされたニュースは、JAL が倒産した時の悪夢が横切る。ANAは、終戦後、GHQが日本のすべての航空事業を禁止したことに発する。興民社というパイロットや飛行機の整備士などを含む人材を救済する目的でできた会社だ。興民社は、何でもやる会社であった。的屋仕事まで手を染めて、生き抜くことを決めたのだ。日本航空は、政府御用達の親方日の丸の会社で、民間であっても、まさかつぶれる会社だと誰も頭になかった。おごりや傲慢さが重なり、人材も要人系列の子女が、多くはいるようになり、パンアメリカンやTWAが瓦解するのを見ていながら、前方不透明な経営をし続けたつけが、倒産に連なっていった。お客を大事にしてこなった付けは、大きく営業不振なったのが原因である。
そういう中、ANAは、まじめにお客やクレームをしっかり咀嚼しながら、丁寧な経営で、少しづつ、フラッグエアになるべく努力していた。ところが、JALが倒産するや、ANAの態度は、我こそ、ナショナルフラッグエアなりと、勘違いしてしまった。外聞の声を、聞き入れず、社員たちは、外を見る能力に欠け、内部だけを見る症候群に嵌る。JAL の倒産は、役員室に入るドアは、外部に開かなった付けで失脚、その悪癖がわかっていながら、ANA も外部からのニュースを解読せずに、一流面した経営は地獄への門を知るすべさえ忘れていたのだ。確かに、コロナ問題で経営危機に突入したのは、間違いない。しかし、初心を忘れてはいないか、お客に戻ってきてほしいはずだ。きめ細かいサービスはどこに行ったのか。
原点の興民社(ANAの前身)の気概はどこに失せたのか?この際に、経営陣は、もう一度、出発点に戻る勇気を発揮すべきであろう。なければ、経営陣総退陣と相成っても、不思議ではない。国民は、それほどお人よしではないのだ。血税をまたつかわせる気持ちか?
コロナの性にして、逃げてはなるまい。
ナショナルフラッグになりつつあった、ANA は、どこに行こうとしているのか。ANAの未来は、決して明白ではないのだ。
論説委員
デスク 古賀剛大