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斎藤精一郎氏の「海外投資立国」論

2010年02月06日 | 感想
2/4(木)、テレビ東京系の「ワールドビジネスサテライト」のコメンテーターでおなじみの斎藤精一郎氏(NTTデータ経営研究所所長、千葉商科大学名誉教授)の講演を聞いた。演題は「日本経済は二番底を回避できるか」だ。以下、堅い話になるが、お付き合いいただきたい。

講演会で私は出たり入ったりしていたので、メモは十分取れなかったが、うまい具合に氏がヨソでされた同趣旨の講演概要が新聞に出ていたので、引用する。見出しは「斎藤千葉商大教授が講演 日本経済展望説く」(日本海新聞 09.12.06付)だ。

《斎藤教授は、1990年以降の日本経済を「失われた20年」と表現。「89年12月に日経平均株価は3万8915円を記録したが、現在は1万円前後。20年間の1年当たりの成長率は0・5から0・8%にとどまり、世界でもまれに見るデフレ状態に陥っている」と説明》。

《日本経済が停滞している理由を「主力の製造業ではよほど円と賃金が安くならないと国内生産はできない。米国が意識的にドル安戦略を取る中で円は高くならざるを得ず、輸出依存の産業構造が成り立たなくなっている」と解説した》。

《打開策として「海外市場でもうける態勢をつくるほかない。海外でもうけた利益を国内で独自サービスや製品づくりに使えば内需産業が生まれる。その際に日本人の凝り性や平等意識の強さが生きてくる」と話した》。



70分の講演会で、斎藤氏は上記の背景や理由をわかりやすく敷衍(ふえん)された。詳細は「NIKKEI NET」のビジネスコラム「斎藤教授のホンネの景気論」で、2回にわたって論じられているので、これを引用することにしたい。1回目は《第92回「2010年の日本経済に何が待ち受けているか ― 『デフレ』と『円高』の下、低成長の『罠』」》だ。ここで斎藤氏が問うているのは次の3点である。
http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/saito.cfm?i=20091225c1000c1

(1)10年の日本経済については巷間(こうかん)「二番底リスク」が喧伝されているが、本当に「底割れ」が起こるのか。

(2)10年の日本の景気回復にとって何が決定的かつ本質的な問題なのか。

(3)フリーフォール(落下型絶叫マシン)を脱した世界経済だが、これまでの財政大出動や金融超緩和策が副作用を金融市場にもたらし、10年に為替、株価、長期金利、原油・金価格などを不安定化させ、本格的な景気回復を妨げないか。

これらの結論は、以下の6点に集約される。

(A)2010年の世界経済は09年のマイナスからプラスの成長軌道に復元するが、その「勢い」は弱く、1~2%の緩やかなものとなろう。

(B)前記の「緩やかな成長」の根因は米国経済が中期的に過剰消費の抑制に動かざるをえず、消費に代わる「新たなけん引役」としての輸出力の増強は簡単にはいかず、5%の自然失業率水準の実現には時間がかなりかかる。

(C)10年の世界経済の主役は中国経済となり、実質成長率で10%台を狙う「勢い」を持つが、対米輸出に代わる成長エンジンとして「資産効果」に依存せざるをえず、中国経済は10年のいつかの時点でバブル崩壊による調整が不可避ではないか。

(D)10年に入ってFRBは景気回復力の弱さ、日銀はデフレ対策や円安戦略を意識して金融超緩和策を結局は長期化せざるをえない。これがこれまでの世界的な未曾有の金融緩和策による過剰流動性と重なって、金融市場を不安定化させ、為替、株価、債券、原油など資源価格などを乱高下させる。各国の財政大出動の結果としての巨額な財政赤字と政府債務残高も加わって、株の高騰や暴落、ドル急落や円急騰、長期金利の上昇、原油高騰などがいつ生起してもおかしくない。だから、市場の乱高下に一喜一憂するのは危険だ。ただ、こうした「市場の未曾有の不確実性」は企業や国民の意思決定や行動に抑制的な効果を持つ。

(E)10年の日本経済は世界景気の緩やかな回復や中国成長の勢いのもと、緊急的な財政対策や緩和的金融政策もあって「二番底」や「景気降下」は回避可能。だが「デフレ」と「円高」の相乗効果から実質成長率で0.5~1%の低空飛行状態で、水面すれすれのクロウリングを余儀なくされよう。日経平均株価は6500~1万2000円で、平均で1万円水準で推移する。09年のバブル後の最安値(7054円、3月10日)を一時的に切るのは、円相場が1ドル=70円台に一時的にオーバーシュート(中国バブル崩壊やニューヨーク株急落などの異変)する特異点が起こりうるからだ。円レートとしては70~100円で、平均で85円前後であろう。だから、市場の一時的、瞬間的な乱高下に一喜一憂や過剰反応は禁物だ。

(F)10年は本来であれば、世界経済は実質成長率で3%前後の順調な景気回復軌道に乗っていいところだが、リーマン破綻後の未曾有の財政金融発動による急速な回復の「反動」とその「政策的副作用」、さらに米国経済の構造的転換や新興の中国経済の急成長の「調整」などが重なって、イレギュラー・プロセスをたどらざるをえない。だから、こういう場合は過剰反応や一喜一憂するのを慎み、2010年代の基本潮流を冷徹に洞察し、経済、経営そして、むしろ生活の基盤の総点検と再構築にゼロベースから取り組む「好機」と考えるべきだ。

2回目のコラム《第93回「2010年代、日本経済復活の条件――『失われた20年』の停滞を脱せられるか」》では、次のような問題提起がなされている。
http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/saito.cfm

(1)何故、日本人は「20年の停滞」に甘んじているのか

(2)何故、日本は世界経済の構造変化を的確にとらえ、対応できなかったか

(3)何故、日本の政府、日銀など政策当局やオピニオンリーダーは有効な打開策を提示できず、かつ実行できなかったか

(4)では、10年代の日本経済にとって「失われた20年」の罠から脱する必要条件、十分条件とは何か



これに対する斎藤氏の解答は、以下の5点である。

(a)「失われた20年」から日本経済が脱する必要条件、あるいは大前提条件は、多くの国民が現状に強い「危機感」を抱き、突破口を見出す主体は国民自身だという、覚醒(かくせい)と自覚を持つことだ。ところで、長い閉塞の中で多くの国民は現在、深い不安感に捕らわれ萎縮してしまっている。縮み的価値観への傾斜だ。この点で現在の日本には経済を前方に突き動かすエネルギーに欠け、強い「危機感」をテコに国民が主体的に現状突破に挑戦する気概が不在だ。だが、国民の萎縮がさらに進み、「安心」や「安定」に行き着けば、そこで縮み的価値観は伸び的価値観に転換し、国民主体ベースの変革勢力が台頭することになろう。これが「長い閉塞」を突き破る必要条件だ。

(b)09年8月の総選挙による政権交代は、20年間に鬱積(うっせき)した「不安感」にいたたまれず、多くの国民がより可能性のある政治勢力(民主党)目がけてパニック的逃避に走った結果だ。この意味で、国民の覚醒が芽生えた先駆けではある。だが、それはとりあえず50余年政権を担当してきた自民党からの逃避であって、決して国民の主体的な民主党選択ではない。民主党にしても、「失われた20年」の罠から日本を脱却させる「思考の枠組み」「理念体系」「論理体系」などは皆無に近い。だから、現在の民主政権は、今後の本格的な政権誕生までに繰り返されるであろう「政治的止まり木」の役割を持つにとどまろう。

(c)「失われた20年」のトンネルの中で「出口」を切り開く重大な役割を担うのが、新しい国民政党の結成である。これが十分条件だ。これは歴史的役割を担うことを意味するから、理念、論理、情熱、知識などにおいて純粋でいて、強靭(きょうじん)な指導力を持つ、新しい政治哲学を備える政治的勢力であらねばなるまい。

(d)以上(a)~(c)から、必要条件を充たす国民の主体的な覚醒と、この国民の負託に応え得る新たな政治勢力の結成という十分条件が合致するのは、なかなか至難なことだ。したがって、覚醒する国民とそれに呼応する新しい政治勢力が時代的閉塞に風穴を開けるには、最低でも5年前後の歳月が不可欠になろう。だが、一時的な混乱を避けるべく政治的不安定化を嫌い、理念も論理も曖昧(あいまい)な妥協的政治合作は「長い閉塞」からの脱却をかえって遅らせるだけである。このことは「失われた20年」で十二分に体験済みではないか。

(e)55~85年に、自民党政権によって日本は歴史的にも画期的な「栄光と繁栄の30年」を享受してこられた。この戦後型の経済立国モデル(輸出主導経済)は、あくまで日本のキャッチアップ過程にあってのみ有効であった。この立国モデルが21世紀の現在、有効性を維持できるわけがない。この経済立国モデルからの大転換こそが経済学的な「失われた20年」の罠から日本を脱却させる、唯一の選択なのである。その選択とは筆者がこれまでも、そして今回も本コラムで強調する「海外投資立国」だ。この経済大転換には明治維新や戦後経済復興と同等の、否それ以上の知力と蛮力に裏打ちされた政治的革新力が不可欠である。その可能性の「光」が見えるまで、日本経済の「暗夜行路」は続く。



要点は以上であるが、民主党政権の誕生を「パニック的逃避」とは手厳しい。先日、田中秀征氏(もと経済企画庁長官)は《自民党は老朽住宅、風雪に耐えてきて頑丈であったが耐用年数が過ぎて劣化、屋根だけ残ってる感じ。民主党はというと仮設住宅の名がふさわしい、見てくれ良く入ってみたが期待はずれ 分解しそうな状態》とたとえたというが、言い得て妙である。
http://moriokamasahiro.net/archives/427

斎藤氏の第93回コラムには、数々の印象的な文章が登場する。《小泉時代に就職氷河期は消滅したかに見えた。この間、非正規雇用が一般化、賃金格差が顕在化はしたものの、多くの国民は小泉改革で日本経済が復活したと錯覚し、安心した。だが、復活に見えた日本経済は実はサブプライム・ローンの拡大をベースとした世界同時好況によって日本の輸出が急増大した、いわば僥倖(ぎょうこう)の賜物(たまもの)だった。このことはサブプライム禍が世界的に最も軽微だった日本経済が最もリーマン・ショックの負の効果を蒙った事実が証明する》。

《何故、日本はこれほど長期間の停滞に甘んじてきたか。一言でいえば、国民の意識や価値観が結果として日本経済を長い停滞に甘んじさせてきただけでなく、むしろその状態を強めている》《マルクス主義的唯物史観では経済的、社会的基盤(下部構造)が意識、価値観(上部構造)を決定する。だが、成熟社会では価値観などの上部構造が経済といった下部構造を動かし、決定する場合が多い。この文脈で日本人の「閉塞の20年」の帰結の「縮み的価値観」が「拡張的価値観」に主体的に転換するとき、日本経済は内向きエネルギーから解放され、外向きのエネルギーにけん引されて成長軌道に乗ってこよう。この転換の契機は日本人の価値観が現行の「萎縮」から脱皮するときである》。

《何故、世界環境の構造変化を見抜けなかったか。一言でいえば、国民に危機感がなく、一時不安感を持ったが、政策当局や識者たちの「もうすぐ良くなる」とか「構造改革で日本経済復活は確実」との言わば「大本営的神託」に呪縛され、国民が期待感を持ち続けたためだ。それらが「根拠なき言辞」と気づいたとき、多くの国民は生活や雇用、さらに将来について強い不安感にさいなまれ、ただただ萎縮化するほかなくなった。だから、国民は何故、こうした状況に陥ってしまったかについて20年間の閉塞を凝視する余裕もない》。

《日本経済の「失われた20年」を振り返れば、政策当局も識者たちも日本経済が置かれた客観的状況を的確に把握していないことが分かる。その根因は前述の「猫の目式の分析枠」に固執し、日本経済について正確なカルテが不在だったことだ。「失われた20年」のもう1つの元凶は、「誤ったカルテ」の下に効能のない処方を行ってきたことだ。カルテが誤っている以上、投薬や手術の処方が効果に欠けるのは当然だが、ここで注意すべきはカルテが正しくても、効果のない処方が施された可能性が高いことだ》。

斎藤氏の提言の結論は、以下の文章に集約されている。《この20年の政策経験の結果から明らかなように、日本経済の巨額なデフレギャップを埋めていくのに、財政政策はむろんのこと金融政策も所詮、世界的に過剰流動性を漏出させるだけで効果はほとんどない。では通念化された経済学から離れて、デフレギャップの解消は可能か。唯一の道は日本企業が収益拡大を図る機会を探ることだ。企業が収益を増大すれば、企業投資、そして雇用増加を通じた個人消費の拡大につながるからである》。

《この日本企業の収益増の基盤はどこにあるか。例えば、内需が拡大する中国、インドなどへの直接投資(生産や販売拠点)に加え、労働集約的な生産拠点としてインドネシア、ベトナム、トルコ、中南米への直接投資、さらに高質製品の生産・販売拠点として北米やユーロ圏への直接投資を漸次積極化する。それらの地域で確保する収益は、一部をグローバル化のための海外でのM&A(合併・買収)に使い、一部を日本国内に還流させて内需向けの製品の研究開発・生産の拡充に振り向ける。こうした内需開発によって企業投資や国内雇用が増大してくれば、日本国内に新たな内需産業が創出される》。これが斎藤氏の「海外投資立国」論なのである。

当日の講演会では、斎藤氏はもっと時間をかけて分かりやすい言葉で説明されたのであるが、要約すると上記のとおりである。日本の「失われた20年」の問題点をえぐり出し、日本がめざすべき「海外投資立国」への道を説く、とてもスリリングな講演会であった。
ジャンル:
経済
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6 コメント

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起死回生に向けた策 (あをによし南都)
2010-02-06 12:09:23
海外投資立国全く同感です。そのためには日本国内のあり得ないほど高い法人税率を下げ、いびつな税体系を修正し、海外先進国比較でありえないほど低い消費税を高めないといけないでしょうね。
米国も欧州も法人税率は20-30%のレンジの企業が多いのに日本は40%台ですからかなり厳しい戦いになっています。
このままキャッシュフローが先細り、投資しないと大変なことになります。日本の技術もこのままではアジアに追いつかれるものも多く今のうちに10年、20年先を見据えた開発、投資をしておかないともう赤字国債を国内資金で買えなくなってしまうのは自明の理です。
海外の企業とのバトル、競争でどう日本の企業が生き残っていけるか、に全てがかかっています。
スリリングな講演 (tetsuda)
2010-02-06 13:01:54
あをによし南都さん、コメント有り難うございました。

> 海外の企業とのバトル、競争でどう日本の企業が
> 生き残っていけるか、に全てがかかっています。

全くその通りです。将来を見据えた戦略を今から打ち出さなければ、日本の将来は危ういです。斎藤氏の「国民の意識や価値観が結果として日本経済を長い停滞に甘んじさせてきただけでなく、むしろその状態を強めている」という言葉のもつ意味は重いです。
門外漢 (畳薦)
2010-02-07 20:04:58
 私はこうした話題には門外漢ですが、それ故に相変わらず繰り返される「成長戦略」とかすぐ口から飛び出す「活性化」とか・・・・踊らさせられたくないなー
 非成長経済論がないものかしらんと思う。
生き残り策 (tetsuda)
2010-02-08 05:51:19
畳薦(たたみこも)さん、お久しぶりです。コメント有り難うございました。

> 相変わらず繰り返される「成長戦略」とかすぐ口から
> 飛び出す「活性化」とか・・・・踊らさせられたくないなー

ここで議論しているのは、行け行けドンドンの「成長戦略」ではなく、日本の生き残り策です。現状の巨大なデフレギャップ(超過供給、つまり需要<供給)をどのように解消するかという問題です。

> 非成長経済論がないものかしらんと思う。

根本的には、仏教の「少欲知足」でしょうね。それを人々が良しとすれば問題はないのですが…。
Offshore Fund (MILLIONAIRE)
2011-07-19 19:55:02
こんにちは、いつも楽しく拝読しております。

今回の震災により、自分の資産が不動産に偏っていることが気になり、国際分散投資のために海外積立投資を検討しています。

下記のサイトによると、個人でも月々5万円程度から投資でき、ヘッジファンドの年利回りは10~20%のファンドが多いとのことです。
「みんなの海外投資」(http://www.minkaigai.com/
新興国を中心にポートフォリオを組めば、さらに収益率は上がるようです(リスクもですが)。

この時代にそんな利回りが可能なら投資してみようと思います。投資助言業者を使えば、香港に海外口座を作らなくても国内から投資できるとのことですから、英語が苦手な私でも大丈夫なようです(積立期間中に業者がつぶれなければですが)。

なでしこジャパンのように最後まで諦めず、1億円貯まるまで頑張ります。
教育投資 (tetsuda)
2011-07-19 22:01:03
MILLIONAIREさん、コメント有り難うございました。スゴいハンドルネームですね。

> 個人でも月々5万円程度から投資でき、ヘッジファンドの
> 年利回りは10~20%のファンドが多いとのことです。

月5万円だと、10年で600万円、運良く倍になったところで1,200万円。1億貯めるには…。若いうちは、ご自分に投資されてはいかがでしょうか。これなら見返りがなくても諦めがつきますし…。

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