「農家民宿」(農林漁業体験民宿)をご存じだろうか。農林漁業や田舎の生活を体験したり、郷土料理を味わったりすることができる民宿のことで、「農村民泊」「ふるさと民宿」とも呼ばれている。
奈良県のHPには《既存の観光に対する物足りなさや田舎暮らし志向の高まりを背景に、農山村の素朴な魅力が体感できる農林漁業体験民宿は、やすらぎやゆとりを体感できる宿》《今後も県で、日本の原風景が残る奈良の豊かな自然資源を活かした農林漁業体験民宿の創出を支援し、新たな魅力による宿泊観光客の獲得を目指していきます》とある。基本的には農林漁村にある民宿ということであり、農林漁業体験が義務づけられているわけではない。
現在奈良県下では、5軒の民宿が「農家民宿」として県の認証を受けている。その第1号が、昨年6月、同時に認証を受けた「里舎(みちのりのやど)」(山辺郡山添村広代1222)、「民宿 岡田」(吉野郡十津川村五百瀬47)および「民宿 杉の原」(吉野郡十津川村谷瀬288-1)の3軒だ。あとの2軒は「久庵(きゅうあん)」(五條市阪合部新田町70-1)と「農家民宿 B&B にしみね」(宇陀市室生区西谷513)である。
http://www.asahi.com/food/news/TKY200811010138.html
2/18~19(1泊2日)、山添村の「里舎(みちのりのやど)」に泊めていただいた。ここは、ご主人の個性が光るスーパー民宿であった。その全貌を紹介したい。
※里舎のホームページ
http://joysite.jp/michiyado/
午後4時、里舎ご主人の大久保利洋さんが営む酒屋「凡壺(ぼんこ)」(山辺郡山添村春日1641-1)に到着。大久保さんは酒販店と農業(有機栽培)と民宿の三足のワラジを履いているのだ。乗ってきた車は、ここに駐車。
凡壺(ぼんこ)の店内。こだわりの酒がずらり
里舎で飲むお酒は凡壺で買っていく仕組みで、私は大久保さんの薦めに従い「燗がうまい」という「浦霞」(宮城県塩竈市の酒・一升瓶で2500円)を買い求めた。買ったお酒と荷物は、奥さんが宿まで車で運んで下さる。私は大久保さんの案内で、里山の中を歩いて宿に向かった。
蛍を育てている小川
ユキノシタ
この山歩きが楽しい。クヌギやナラなどの降り積もった落葉が、足の裏をふんわりと受け止めてくれる。そろそろ天ぷらにできそうなユキノシタが、落葉の間に生えていた。大久保さんは、土手の雑草の下に隠れていたフキノトウを、目にも止まらぬ早業で引っこ抜く。これが今晩のおかずになるのだ。「なんで、草の下にあるのが見えたんですか?」「長年のカンやなぁ」。
向かって左半分が大久保邸。民宿は右の和風建築
まもなく丘の上に大久保さんの自宅(&民宿)が見えてきたが、真っ直ぐには向かわず、遠回りをして村の鎮守さま(菅原神社)にお参りする。30分程度の散歩なのだが、小旅行をしているような気分になる。
菅原神社
山の神さま
猪を捕る仕掛け
小一時間ほど経過して里舎に到着。旅行カバンと一升瓶は、すでに届いていた。「用意するから、ちょっと待っててや」と言い残して大久保さんは厨房へ。私は囲炉裏端に陣取る。
営業開始は昨年夏だそうだが、部屋も囲炉裏もピカピカで、杉の香りが素晴らしい。棚の上にあった「おまわり」(メニュー)を見つけた。メニューは毎日変わるとかで、これは前日のメニューだった。「料理は有機農法で育てた野菜と餅だけ。砂糖も化学調味料も使わない」とおっしゃっていた通りのヘルシーな料理の名前が並んでいる。
大久保さん
ビールをちびちび飲んでいるうちに、料理が次々に運ばれてきた。「膾(なます) にんじん だいこん」は、こんな豪華なお皿に載ってきた。
「御浸(おひたし) こまつな」とあったので、小皿の上に乗って来るのかと思えば、こんな大皿だった。朝から村を案内していただいた奥谷さん(山添村観光ボランティアの会副会長)が途中から来られるので、多めに用意していただいたそうだが、それにしても相当のボリュームだ。
口に入れると、これは美味しい。野菜の旨味と甘味が口の中に広がる。程よいシャキシャキ感もある。「菜の花が咲くほど、長いこと育てましたんや」と大久保さん。写真にはないが、有機大豆の「昆布豆」は、コトコト煮込んで豆の旨味を引き出していた。
フキノトウや椎茸などの天ぷら
かさね煮
大久保さんのご自慢が、この「かさね煮 旬やさいてんこもり」だ。「陽」(寒い地域でよく育つ)と「陰」(暖かい地域でよく育つ)の野菜を重ね合わせ、土鍋で蒸し焼きにしたものだ。味付けは粗塩だけだが、土と太陽の恵みを受けて、とても豊かな味わいである。
これは豆餅。大久保さんのご出身地・岡山県の伝統食品である。それを山添村で再現されたものだ。淡い塩味がついていているので、このまま焼いていただいた。豆の味と香りが、うまく餅とコラボしている。
生卵を濡れた新聞紙で包んで囲炉裏で焼くと、ほっこりしたゆで卵が出来上がる。これらを肴に飲んでいるうち、12時近くなった。大久保さんは「明日の朝、車で神野山(こうのさん、こうのやま)へ行って、ご来光を拝みませんか」とおっしゃったので、お願いすることにした。
翌朝、6時過ぎに起き、大久保さんの車で神野山を登ったが、残念ながら曇り空で朝日は拝めず、景色だけ楽しんで山を降りた。道端で煙が上がっていて、「あれは炭焼きの煙ですよ」とのことだ。今でも昔のやり方で炭を焼いているのだ。
炭焼きの煙
さて期待の朝ご飯は、ご覧の通りの豪華なものだった。おかずはもちろんだが、茶がゆが美味しい。山添村は米がとても良く、またお茶どころなのでほうじ茶も新鮮で香ばしい。これに自家製梅干しがよく合う。
小松菜のお浸しとかさね煮
帰り際に撮らせていただいた写真が、冒頭の奥さんとのツーショットである。昼食用のおにぎり(豆ご飯)とおかず(卵焼きとかさね煮)までいただき、1泊3食付き8300円(税込み)という驚くべき安さである。
1日1グループ限定(10人まで)だそうだが、ここは素晴らしい宿である。これからは春野菜のシーズンだ。もっと多くの方に「里舎」を知っていただき、ご利用いただきたいものである。
http://joysite.jp/michiyado/
奈良県のHPには《既存の観光に対する物足りなさや田舎暮らし志向の高まりを背景に、農山村の素朴な魅力が体感できる農林漁業体験民宿は、やすらぎやゆとりを体感できる宿》《今後も県で、日本の原風景が残る奈良の豊かな自然資源を活かした農林漁業体験民宿の創出を支援し、新たな魅力による宿泊観光客の獲得を目指していきます》とある。基本的には農林漁村にある民宿ということであり、農林漁業体験が義務づけられているわけではない。
現在奈良県下では、5軒の民宿が「農家民宿」として県の認証を受けている。その第1号が、昨年6月、同時に認証を受けた「里舎(みちのりのやど)」(山辺郡山添村広代1222)、「民宿 岡田」(吉野郡十津川村五百瀬47)および「民宿 杉の原」(吉野郡十津川村谷瀬288-1)の3軒だ。あとの2軒は「久庵(きゅうあん)」(五條市阪合部新田町70-1)と「農家民宿 B&B にしみね」(宇陀市室生区西谷513)である。
http://www.asahi.com/food/news/TKY200811010138.html
2/18~19(1泊2日)、山添村の「里舎(みちのりのやど)」に泊めていただいた。ここは、ご主人の個性が光るスーパー民宿であった。その全貌を紹介したい。
※里舎のホームページ
http://joysite.jp/michiyado/
午後4時、里舎ご主人の大久保利洋さんが営む酒屋「凡壺(ぼんこ)」(山辺郡山添村春日1641-1)に到着。大久保さんは酒販店と農業(有機栽培)と民宿の三足のワラジを履いているのだ。乗ってきた車は、ここに駐車。
凡壺(ぼんこ)の店内。こだわりの酒がずらり
里舎で飲むお酒は凡壺で買っていく仕組みで、私は大久保さんの薦めに従い「燗がうまい」という「浦霞」(宮城県塩竈市の酒・一升瓶で2500円)を買い求めた。買ったお酒と荷物は、奥さんが宿まで車で運んで下さる。私は大久保さんの案内で、里山の中を歩いて宿に向かった。
蛍を育てている小川
ユキノシタ
この山歩きが楽しい。クヌギやナラなどの降り積もった落葉が、足の裏をふんわりと受け止めてくれる。そろそろ天ぷらにできそうなユキノシタが、落葉の間に生えていた。大久保さんは、土手の雑草の下に隠れていたフキノトウを、目にも止まらぬ早業で引っこ抜く。これが今晩のおかずになるのだ。「なんで、草の下にあるのが見えたんですか?」「長年のカンやなぁ」。
向かって左半分が大久保邸。民宿は右の和風建築
まもなく丘の上に大久保さんの自宅(&民宿)が見えてきたが、真っ直ぐには向かわず、遠回りをして村の鎮守さま(菅原神社)にお参りする。30分程度の散歩なのだが、小旅行をしているような気分になる。
菅原神社
山の神さま
猪を捕る仕掛け
小一時間ほど経過して里舎に到着。旅行カバンと一升瓶は、すでに届いていた。「用意するから、ちょっと待っててや」と言い残して大久保さんは厨房へ。私は囲炉裏端に陣取る。
営業開始は昨年夏だそうだが、部屋も囲炉裏もピカピカで、杉の香りが素晴らしい。棚の上にあった「おまわり」(メニュー)を見つけた。メニューは毎日変わるとかで、これは前日のメニューだった。「料理は有機農法で育てた野菜と餅だけ。砂糖も化学調味料も使わない」とおっしゃっていた通りのヘルシーな料理の名前が並んでいる。
大久保さん
ビールをちびちび飲んでいるうちに、料理が次々に運ばれてきた。「膾(なます) にんじん だいこん」は、こんな豪華なお皿に載ってきた。
「御浸(おひたし) こまつな」とあったので、小皿の上に乗って来るのかと思えば、こんな大皿だった。朝から村を案内していただいた奥谷さん(山添村観光ボランティアの会副会長)が途中から来られるので、多めに用意していただいたそうだが、それにしても相当のボリュームだ。
口に入れると、これは美味しい。野菜の旨味と甘味が口の中に広がる。程よいシャキシャキ感もある。「菜の花が咲くほど、長いこと育てましたんや」と大久保さん。写真にはないが、有機大豆の「昆布豆」は、コトコト煮込んで豆の旨味を引き出していた。
フキノトウや椎茸などの天ぷら
かさね煮
大久保さんのご自慢が、この「かさね煮 旬やさいてんこもり」だ。「陽」(寒い地域でよく育つ)と「陰」(暖かい地域でよく育つ)の野菜を重ね合わせ、土鍋で蒸し焼きにしたものだ。味付けは粗塩だけだが、土と太陽の恵みを受けて、とても豊かな味わいである。
これは豆餅。大久保さんのご出身地・岡山県の伝統食品である。それを山添村で再現されたものだ。淡い塩味がついていているので、このまま焼いていただいた。豆の味と香りが、うまく餅とコラボしている。
生卵を濡れた新聞紙で包んで囲炉裏で焼くと、ほっこりしたゆで卵が出来上がる。これらを肴に飲んでいるうち、12時近くなった。大久保さんは「明日の朝、車で神野山(こうのさん、こうのやま)へ行って、ご来光を拝みませんか」とおっしゃったので、お願いすることにした。
翌朝、6時過ぎに起き、大久保さんの車で神野山を登ったが、残念ながら曇り空で朝日は拝めず、景色だけ楽しんで山を降りた。道端で煙が上がっていて、「あれは炭焼きの煙ですよ」とのことだ。今でも昔のやり方で炭を焼いているのだ。
炭焼きの煙
さて期待の朝ご飯は、ご覧の通りの豪華なものだった。おかずはもちろんだが、茶がゆが美味しい。山添村は米がとても良く、またお茶どころなのでほうじ茶も新鮮で香ばしい。これに自家製梅干しがよく合う。
小松菜のお浸しとかさね煮
帰り際に撮らせていただいた写真が、冒頭の奥さんとのツーショットである。昼食用のおにぎり(豆ご飯)とおかず(卵焼きとかさね煮)までいただき、1泊3食付き8300円(税込み)という驚くべき安さである。
1日1グループ限定(10人まで)だそうだが、ここは素晴らしい宿である。これからは春野菜のシーズンだ。もっと多くの方に「里舎」を知っていただき、ご利用いただきたいものである。
http://joysite.jp/michiyado/
> 薪割り・餅つき・石釜ピザ・食事は口コミ通り。そんな中風邪
> 気味の夫が印象に残ったのは五右衛門風呂だったようです。
いろんな体験が充実してきましたね。私は時間がなかったので、周辺の散策と、あとはもっぱら、囲炉裏端でお酒をいただいていました。
何より、大久保さんご夫妻のおもてなしが素晴らしい宿です。もっと多くの方に、ご利用いただきたいですね。
薪割り・餅つき・石釜ピザ・食事は口コミ通り。そんな中風邪気味の夫が印象に残ったのは五右衛門風呂だったようです。あんなに寒い夜だったのに湯冷めどころかじ~んと芯から温まり驚きました。飽きないようにと木工所でWECOMEボード体験や地元CAFEにと気遣って下さったりして粉雪舞う1月末もなかなか楽しく過ごしました。
秋には果樹園が出来る予定とか・・次回にはぜひその収穫で何を作らせてくれるのかしら?今からワクワクしています。
本当によくしていただきまして夫の風邪も無事回復しました。豆餅とお野菜を送って下さり全体一物とかかれていたので里芋は皮ごと食べましたが香ばしくて驚きました。ありがとうございました。
> 山添村に関する部分の引用を快諾していただき、ありがとうございます。
どういたしまして。奥谷さんに教わったことを文章にしただけですので、いくらでもお使い下さい。貴HPには工事中のところが多いですが、ぜひ早く完成され、多くの方にこの素晴らしい村をPRしていただきたいと思います。
始めまして、山添観光ボランティアの中森と申します。副会長の奥谷さんより連絡をいただきました。
私は山添村観光ボランティアホームページのお手伝いをさせて頂いております。
昨年より始めているのですが、思うように進まず困っていました。この度は鉄田様のブログから山添村に関する部分の引用を快諾していただき、ありがとうございます。
私自身なかなか時間が取れないのですが、早速、使わせて頂きまして、ホームページの内容を充実させていきたいと思います。