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田中利典師の「ルネサンス!山の宗教(1)山嫌いの『へなちょこ山伏』聖なるものに守られながら歩く」(産経新聞)

2023年09月15日 | 田中利典師曰く
今日の「田中利典師曰く」は、「ルネサンス!山の宗教(1)」(師のブログ 2013.8.23 付)。利典師は産経新聞からインタビューを受けられ、それが「新関西笑談」欄(産経新聞大阪夕刊)に、5回にわたって紹介された(2010.10.25~29)。
※トップ写真は、吉野山の馬酔木(3/28撮影)

半5段(紙面の1/6)という大きな記事である。師はこれをブログに一挙に掲載されたが、もったいないので、私は今日から1回ずつ分割して、紹介させていただく。

実は「新関西笑談」欄には、私も登場する(師の3年後の2013.12.2~6)、初回は「カルチャーショック」の話だった。和歌山県人の私が奈良に来て驚いた話の紹介だったが、利典師の初回は、修験道に関する深イイ話だ。では、第1回の全文を以下に貼っておく。

ルネサンス!山の宗教(1)2010.10.25
山嫌いの「へなちょこ山伏」 聖なるものに守られながら歩く。
金峯山寺執行長 田中利典さん


平城遷都1300年祭が開催されている平城宮跡(奈良市)に立つと、遙か遠くに吉野・大峰の山々が神々しく見える。奈良の宗教文化を知るには平城京だけではまだまだ甘い! 古代から僧侶や貴族らは吉野・大峰の神仏を崇拝してきた。

吉野山・金峯山(きんぷせん)寺(奈良県吉野町)では今、ど迫力で平成の魑魅魍魎(ちみもうりょう)を払う蔵王権現立像(重文)を特別開帳中。この聖地から、自らを「へなちょこ山伏」と揶揄(やゆ)しつつも「修験道(しゅげんどう)ルネサンス」を唱える田中利典・同寺執行長(55)が熱弁をふるう。(聞き手 岩口利一)

--あえて野趣ある響きの「山伏」と呼ばせていただきますが、山伏の世界に入られたきっかけは
田中 2歳のときに重い肺炎になりました。その際、山伏で祈祷(きとう)師の父が母に「わが子の命も救えないのか」と言われ、父は大峰・山上ケ岳(奈良県天川村)の蔵王権現に「この子が無事5歳になったら一緒に参る」と願を懸けた。そのおかげで治って、5歳になると山上ケ岳に連れて行かれたのです。

--その後は
田中 私の意思とは関係なく、2歳の大病が縁で気がつくと山伏になっていたという感じです。ただし、山は嫌いで、山伏になっていなかったら山なんかに絶対行ってない。半分、仕方なく山に行くようになった。そのうち「大峯奥駈(おくがけ)道」(吉野~熊野の山々にのびる修行の道)を歩くようになり、7、8回目のときに山の修行も素晴らしいと思うようになりました。

--山が嫌いだったとは意外ですね
田中 はっきり言って私は「へなちょこ山伏」ですわ。体力もなく、何とか自分の体を持って上がるだけで精いっぱい。それが気がつくと、大峯奥駈は16回ほどになりました。山伏の父が願を懸けたおかげで大病が治って山に連れて行かれたことを思うと、山伏への道が自然に開かれていたような気がします。

--山修行に対する気持ちはどう変化したのですか
田中 山に行くと臭くて、かゆくて、痛くて、寒くて、暑くて…。本当に嫌なことばっかり。でも、毎年行っていると歩くだけで精いっぱいだったのが、だんだんと体がなじんできて周りが見えるようになる。仲間の浮き浮きした気持ちが分かるし、自分自身もそう。毎年同じ道だが、毎年歩く自分が違うし、気象も風景も違う。山は毎年行かないと分かりません。

--厳しい山修行にどのようなありがたさを感じられますか
田中 私たちは山に神仏がいることを前提に歩きます。神仏に実際に出会うわけではないけれども、拝みながら歩くうちに自分を超えた聖なるものの存在を感じ、守られながら歩いていることのありがたさをかみしめるようになります。

--日常生活にはない、大自然の中での貴重な体験ですよね
田中 自分一人で生きているのではなく、自然の恩恵を受け、人々に助けられながら関係性を持って生きていることが、1日12時間ほど歩くとだんだん分かってくる。苦しさの中で自我の枠が外れる瞬間がある。どんなにつらい奥駈でも、終わって帰って来ると今年は素晴らしかったなと思うようになりました。

--山での失敗談もあるでしょう
田中 いっぱいありますよ。私はもともとひざが悪く、山に行くとつらい。34歳くらいのときにそのひざを痛めて、普段なら午後4時ごろに到着する前鬼山に9時ごろに着いた。遅れる人の気持ちがよく分かりました。人間はやはり失敗を重ねて成長するのですね。
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