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田中利典師の「蔵王供正行/第42日 70歳の自分に会いたい」

2024年06月15日 | 田中利典師曰く
久々の「田中利典師曰く」は、〈蔵王供正行42日目「70歳のたなかりてんに会いたい…」〉(師のブログ 2015.6.11付)である。師は2012年に東京で開催された奈良県寺社シンポジウム(有楽町の朝日ホール)で、唐招提寺・石田長老の謦咳(けいがいに)に接する。
※トップ写真は利典師。奈良まほろばソムリエの会の講演会で(2024.6.9 撮影)

〈お坊様はこうでないといけない。賢しらに弁舌を並べたて、べらべらしゃべるより、ため息ひとつで皆をほっとさせ、癒やしと安心を与える、そういう境地にならないといけないなあ〉と思う。今年(2024年)、師は69歳となった。来年、師はどんなお坊さんになっておられるのだろうか。では、全文を紹介する。

「70歳のたなかりてんに会いたい…」
蔵王供正行42日目(6月11日)。曇りのち雨。今日の一日。
5時に起床。
5時40分、第83座目蔵王権現供養法修法 於脳天堂
7時、本堂法楽・法華懺法         於本堂 
9時10分、第84座目蔵王権現供養法修法 於脳天堂
10時30分、本堂法楽・例時作法     於本堂
12時半、水行              於風呂場
13時、法楽護摩供修法          於脳天堂
14時、法楽勤行             於本堂

参拝者4名。ちょっと前に紹介された毎日新聞の記事を見て舞鶴からおいでになった方2名と本宗の宗会正副議長2名が行見舞いに御来山。

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「70歳のたなかりてんに会いたい・・・」
ここ5年ほど前から「70歳のたなかりてんに会いたい」というのが私のささやかな目標である。先日、全国放映をされたNHKEテレの「こころの時代」の中でも、浜中アナのインタビューにそう答えて、結構、受けた。

まあ、なぜそういう想いを抱くようになったのか詳しくは覚えていない。最初は漫然と思っていただけだったが、それが強烈に目標と変わったのは3年前に東京有楽町の朝日ホールで行った奈良県寺社のシンポジュウムでの、ある出来事がきっかけであった。

そのときは金峯山寺をはじめ、東大寺、春日大社、法隆寺、興福寺、石上神宮と奈良を代表するそうそうたる名刹寺社の管長さんや宮司さんが一同に顔をそろえ、奈良の魅力をそれぞれが語ったシンポであった。

シンポは1部、2部形式で行われ、私は薬師寺の山田管長さんとともに1部の最後の舞台を担当した。山田管長さんはいつもの鮮やかで流ちょうな弁舌で会場を魅了されていた。私も負けじと、必殺技である「さんげさんげ、ろっこんしょうじょう…」の掛け念仏を、観客席の奈良県知事をはじめ、南都の寺社の管長様、宮司さま、そして1000人ちかい聴講者の全員を立たせて大合唱し、これでもかというほど、盛り上げて、1部を締めくくった。

そして小休止を挟んでの第2部。実はこれだけ盛り上がった会場で第2部の冒頭に出演される方々は大変だろうなと固唾をのんで思ってみていた。ところがである。ステージ半ばの席にすわるやいなや、「はぁ~」とため息ひとつ。そして「わしゃ、こんなとこにでて、しゃべるのかなわんわ」とこぼされたのが、唐招提寺の石田長老さまである。

このため息ひとつで、会場の聴衆の心はわしづかみにされてしまった。…そして、そのあともぼそぼそと、「池の鴨が…」と話される長老の不思議なワールドが繰り広げられ、傍で見ていて、めちゃめちゃ負けた感を覚えたのであった。

お坊様はこうでないといけない。賢しらに弁舌を並べたて、べらべらしゃべるより、ため息ひとつで皆をほっとさせ、癒やしと安心を与える、そういう境地にならないといけないなあ…と、目から鱗の気持ちで、憧れをもって、長老様を仰ぎ見ていた。

「70歳のたなかりてんに会いたい」というのは実はそういうお坊さんになっていたいという、私のささやかな目標でもあるのだ。ともかく、そのためにも、今日一日の修行を頑張ろうと思う。
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