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田中利典師「宇宙飛行士と山伏」(3)伝統教団も、時代性・社会性が必要

2023年04月12日 | 田中利典師曰く
金峯山寺長臈(ちょうろう)田中利典師の「宇宙飛行士と山伏」(全5回)を追っかけている。師は2007年12月13日、JAXA(宇宙航空研究開発機構)主催「宇宙ことづくりフォーラム大阪講演会」で、「山に伏し野に伏す修験道の世界:宇宙飛行士と山伏修行」という講演をされた。
※トップ写真は、吉野山の桜(2023.3.28撮影)

講演録は残っていないがこのあと、JAXA理事の小林智之氏から公式サイト用のインタビュー取材を受けられ、師はその内容を5回に分けてご自身のブログにアップされた。第3回の今回のタイトルは「時代性、社会性が大事」だ。

小林氏はJAXAでも、5年前、10年前に立てた計画にとらわれるあまり、時代性や社会性を欠くケースがあると言う。利典師は、伝統教団も、時代性・社会性をもっと注視しなければいけないと説く。では全文を師のブログ(2016.1.4付)から抜粋する。

「時代性、社会性が大事」ー宇宙飛行士と山伏③
 ~田中利典著述を振り返るH28.01.04

小林:確かに、内向きというのは、JAXAもそういう内向きになることがよくあります。今、先生がお話されたものと合うかわかりませんが、元々、宇宙開発の計画を立てた、そのときはその時代を考えて、恐らくこれがあればこうなるだろうという想定の元に作った。それが、計画が5年、10年と経っていく中でその計画自身が硬直化してしまった。

田中:時代の方が早く動いていますからね。コンピュータがこんなに便利になるとは誰も思わなかったわけでしょう。「宇宙大作戦」のエンタープライズ号に出てくる話よりもはるかに個別のコンピュータのありようは上回っていますからね。

でも、やっぱり国がやる仕事とか、組織がやる仕事というのは、非常にレスポンスが悪いので、作った計画を後生大事にしてしまうところがあって、…これは何が問題かというと、時代性と社会性を著しく欠いてしまうことになる。

だから、常にものを成していくためには、外を見ていないといけないところがありますよ。これはJAXAだけではなく、お寺でもそうですよ。いや、寺なんてその最たるものなのかもしれません。役所と寺は同じくらい、内向きでレスポンスが悪いってこと。だって、伝統教団といいますけど、明治以降は、新興宗教、新宗教と言われる勢力の方がはるかに画期的なことをやってきたわけでしょう。

伝統教団、…いわゆる700年前、あるいは1000年前にできた教団とかお寺のことですが、そういう組織は長い年月の中で硬直化していて、時代性や社会性を持つのが非常に苦手なのです。だからある種、時代性にはそぐわないことになる。ただお寺の役割はお役所や企業などとはちょっと違うところもあるので、一概には言えないところもあります。

たとえば伝統行事を続けるというのは、時代性とか社会性だけを見ると続けていけなくなってしまうところもあるので、時代性を欠くこともそれはある程度仕方が無いことなのですが、それでも、人間が関わる組織の中というのは、常に新しく社会に対しての視点を持っていないといけないと思います。それはお寺も同様だと私は思っています。

私がこのお寺に入った頃に可笑しいと思ったのは、修験道の修行は結構一般の人が一緒に参加できるようになっていて、伝統教団の中では他があまりそういうことをしないだけに、その点ではすごく優れているのですけれどね。たとえば毎年7月8日に蓮華入峯修行という、吉野から大峯山山頂まで24kmの山道を歩いていく修行があるのですが、この行に一般の人の参加を募集しているのです。

ところが、以前からちゃんと募集していると寺では澄まして言っているのですが、これが可笑しいのです。私が入山したころの募集方法は、うちの機関紙に書いてあるだけです。うちの機関紙を一般の人は読まないでしょ。これは一般募集とは言わないじゃないかと(笑)。

しかし、彼らはそれが一般募集だとずっと言ってきている。あ、お寺ってそういうところなんだ、内側しか見ていないんだということに気づくのです。それで、私は、インターネットで募集したり、大法輪という宗教雑誌に広告を載せたり、ホームページや近鉄の広報と協力してチラシを作ったりしたのです。そうすることで一般の人の参加は激増したのですよ。

一般の人というのは、本当に一般の人ですからね。うちの機関誌は一般の人は読まない。組織って長くやっているとそういう普通のことにさえ気づかなくなってしまうのでしょう。

~JAXA(宇航空研究開発機構)宇宙ことづくりプログラムインタビュー(2008年2月)より(インタビュアー:JAXA理事 小林智之氏)

**************:

年末、ちょうどお釈迦様の成道会の日に、Amazonの僧侶派遣業の応募が世間の話題となったが、その後、仏教界の内外でさまざまな意見が出た。私もいくつか意見を述べたが、いづれにしろ、今の仏教界を支えてきた檀家制度自体がもう時代性を失っているのは間違いない。

もともと江戸時代2000万人から2500万人の日本社会で作られた制度だから現在のように12600万人を越える人口には合っていない。制度組織というのは3,4割の増加ならなんとか対応出来るが、3倍、4倍を超えて一億人も増加したら、制度自体を見直さないとどうにもならないのだ。

そういうところを創価学会や数多(あまた)の新宗教が補填してきたが、もう持たなくなって久しい。そこを仏教界はおざなりにしてきたから、これから更にその崩壊度は急になるだろう。もちろん、それが果たして日本社会にいいものをもたらすどうかは、別の問題なのだが…。

一部のお寺や、僧侶の中では、そういう危機感をずいぶん前から持って、様々な活動がされてきたが、宗門にしろ全仏にしろ、肝心の仏教界自体は、さほどの危機感なく、今日まで唯々諾々と来たのが事実だろう…。さてさて。
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