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田中利典師の「ルネサンス!山の宗教(3)困難な時代の庶民の味方 役行者は親しみあるスターです」(産経新聞)

2023年09月19日 | 田中利典師曰く
今日の「田中利典師曰く」は、産経新聞夕刊「新関西笑談」に掲載された「ルネサンス!山の宗教(3)」(師のブログ 2013.8.18 付に全編掲載されたものを分割)、今回は役行者の話だ。師は役行者を〈日本宗教史上、聖徳太子、弘法大師・空海に次ぐスーパースター〉と語る。
※トップ写真は、大峯山・山上ヶ岳で師が撮られたご来光(9/15 林南院開創50周年記念登拝)

また〈奈良の歴史は吉野を含め県内全体で考えるべき〉と指摘される。飛鳥・藤原京と平城京だけでは、古代史だけにとどまってしまう。吉野は古代、中世、近世、近代と、いろんな時代の歴史の舞台として登場する、そのことを忘れてはいけない。なお私の「新関西笑談」(3)は、「OBがボランティアガイド」(2023.12.4 付)だった。では師の記事の全文を紹介する。

ルネサンス!山の宗教(3)2010.10.27
困難な時代の庶民の味方 役行者は親しみあるスターです。
金峯山寺執行長 田中利典さん 


--修験道(しゅげんどう)の開祖、役行者(えんのぎょうじゃ)(役小角(おづぬ)、7~8世紀)はどのような人物だったのでしょう
田中 役行者が生きた時代は豪族たちの群雄割拠から「日本」としてまとまって歩み始めたころです。内政的に大変革期で、外圧もあった。役行者は日本が産声をあげたときに活躍し、宗教的に象徴化された存在となった。国家体制が形成される際には庶民側の論理が蹂躙(じゅうりん)されるのが常で、役行者は庶民側に立った。それがために「続日本紀」にあるように伊豆島に流されました。

--流罪ということは、いかに庶民らへの影響力が大きかったかということでしょうね
田中 役行者は困難な時代に庶民側に立ち、反体制的なものが伝えられていく。日本宗教史上、聖徳太子、弘法大師・空海に次ぐスーパースターといえます。庶民の味方だったゆえに土俗的信仰である修験道の開祖となった。伝説も多く、そこに親しさとおおらかさが感じられます。

--空を飛んだという伝説はどう思われますか
田中 五穀・塩を断つ行をすると、体がものすごく軽く感じられる。そんな体験からするとまんざら空想の世界とも思えません。修行で心身離脱するのかもしれない。それに、役行者はお母さんに関する伝説も多い。非常にお母さん思いの庶民派だったのでしょう。全国各地で寺を開くが、住んだ寺はないというのもいかにも役行者らしい。

--そんな役行者が山上ヶ岳で感得した蔵王権現はどのような神なのですか
田中 恐ろしいお姿をした蔵王権現は内憂外患の時代に、役行者が悪魔をやっつける本尊を願って、出現した。現在も人心が虫食まれる悪世で、蔵王権現の人々を導く強い力が求められています。

--時代性が似ていると
田中 日本の人口は順調に増え続けてきたが、ここにきて減り始めました。これは大きな変化で、過去の節目を考えるべき。日本が成立し始めたとき蔵王権現が出現した。蔵王権現は力強い怒りの姿だが、その奥に仏の慈悲を秘めている。そんな神を生み出したあり方を考えるべきでしょう。蔵王権現は青黒い肌が慈悲を表しており、じっと拝んでいると、「怒」が次第に「恕(じょ)」(許すこと)に変化していきますよ。

--それは不思議ですね
田中 今は「仏像ブーム」ですが、仏像は見るのではなく、拝むものです。特別開帳では蔵王権現の前に発露の間を設けているので、さあ、あなたも正直に心の中をさらけ出して拝みなさい。

--怒の中に恕を秘めた蔵王権現を生み出した吉野・大峰は奥深いですね
田中 吉野は歴史上わりあいと反体制側に立ってきた。後醍醐天皇も南朝を開かれるなど、吉野は役行者以来反体制の精神が脈々と受け継がれている。壬申(じんしん)の乱で勝利した大海人(おおあま)皇子(天武天皇)以外はみな敗者だが、吉野は聖地性を持ち続け、再起を図る場として崇(あが)められたのです。

--再起を図る場というのはおもしろい。そうして吉野の歴史は1300年間連続しているのですね
田中 平城京は奈良時代にしか出てきませんが、吉野は日本史上連続して登場する。それに、平城京は飛鳥や藤原に都が転々とした末に誕生した都で、その間に聖地、吉野にも人々の行き来があった。奈良の歴史は吉野を含め県内全体で考えるべきです。(聞き手 岩口利一)
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