天真寺日記

天真寺の日々を綴ります

一枚の壁

2009-03-23 20:35:08 | 日々
いつもお世話になっているHさんにエッセイを書いてと頼まれた。
まつどジャーナル10周年を記念して、読者の投稿を載せるという企画のためだ。

何を書かせて頂こうか?今思っていること?と思いついたのが、今回のテーマ「一枚の壁」でした。
イスラエルとパレスチナ自治区に存在する壁です。

以下原稿です。

「一枚の壁」

「人間とは何だろうか」と時折思うことがある。

漢字で見れば「人の間」と書き、人と人の間を生きていることを教えてくれる。
しかし、その間はみえにくく、知らぬ間に見えない壁を作ってしまうこともある。
人間関係に悩むこともその壁が原因だろう。
その壁が大きくなると、ベルリンの壁・万里の長城などの巨大なものとなる。

今現在建設されている壁も存在する、それはイスラエルが建設しているイスラエルとパレスチナ居住区を分断する分離壁である。

私が3年前NGOの研修にて、現地で見た分離壁の高さは8メートル、コンクリートで作られた頑丈な壁、1キロの造成費2億円という巨大なものでした。
イスラエルは、自爆テロ防止の「security wall」であると主張する。
一方、パレスチナからいえば、自分たちの生活地域を抉る分離壁となる。

イスラエル・パレスチナのともに助け合って生きてきた人々の生活が分断されてしまった。
その壁を一つで、仲間の命にさえ思いを寄せにくくなってしまう。
昨年末からの戦争で「1300人以上の尊いいのちが奪われた」という。
壁一つで尊いいのちも忘れさせてしまう。

私たちの心の壁はどれ位の高さだろうか。
人間という意味を改めて考えさせられる現実である。



テレビ・新聞を通して伝わってくる高さ8メートルの壁と言えば、現実と離れたことのように思う。
が、よく考えれば、私たちもその壁を持っているのではないだろうか。

その壁が他者に対する怒り・腹立ちを生み出す。
時には、自分に向かってくることもある。

しかし、冷静になってみれば、どうでもいいことって多い。

そこで、忘れてはならないことがあるのではないか。
自分の壁の向こうにあるものを見る視点を。
お金では買えないものを失っていることを。

自らを省みる貴重なご縁を頂いた。

(龍)