9月21日は中秋の名月。月の出の時間は東の空に雲があり、月の出を見ることはできなかったけれど、その後、天高く昇ってきたまんまるお月さまが、きれいな姿を見せてくれました。桃の節句(雛祭り:3月3日)や、七夕(7月7日)は新暦で祝うようになったので、桃の花の季節や織姫(おりひめ)や牽牛(けんぎゅう)が、空高く昇る季節と少しずれてしまっているけれど、中秋の名月は旧暦で祝うので、澄み切った秋の空に輝く月を愛(め)でることができています。
「きのおうち」の裏には、真っ赤な彼岸花が咲いています。春の桜はその年の気候によって早く咲いたり遅く咲いたりするけれど、彼岸花はその年の気候に関わらず、毎年秋のお彼岸を待っていたかのように花を咲かせます。不思議なものです。彼岸花の別名は「曼殊沙華(まんじゅしゃげ)」これは梵語(サンスクリット語)で「赤い花」「葉に先立って赤花を咲かせる」という意味があるそうです。彼岸花は田の畔道などにもよく植えられています。これは彼岸花の球根に毒があり、モグラなどがそれを嫌って畔を掘り起こすことがないからとのこと。
9月の中旬から10月にかけて、道を歩いていると、どこからともなく良い香りが漂ってくることがあります。周りを見渡すと、オレンジ色の小さな花を咲かせているキンモクセイ(金木犀)が。キンモクセイの別名は「千里香」、遠くまで香りが届くので、結構離れたところに咲いていることもあるようです。このキンモクセイは、春のジンチョウゲ(沈丁花)、夏のクチナシ(梔子)と共に「三大香木」と呼ばれ、人々に親しまれています。
秋の空といえば、魚のうろこのような「うろこ雲(巻積雲)」や、もこもことした「ひつじ雲(高積雲)」。うろこ雲は5, 000mから13, 000mという高い空に浮かんでいます。一方のひつじ雲は、2,000mから7,000mの空に浮かんでいる雲です。昔からの言い伝えに「うろこ雲は雨」というのがあります。うろこ雲がだんだん下がって大きく見えるようになってきたら、雨が降る確率が高くなるそうです。
園舎とてんしの家の間、祈りの部屋の横からは「リーリーリー」という虫の声が聞こえています。これは何の鳴き声でしょうか?姿を見ずに泣き声だけで聞き分けるのはなかなか難しいものです。虫の鳴き声は「むしのこえ」の歌詞がヒントになるようです。
あれ松虫が、鳴いている ちんちろちんちろ、ちんちろりん
あれ鈴虫も、鳴きだした りんりんりんりん、りいんりん
秋の夜長(よなが)を、鳴き通すああおもしろい、虫のこえ
きりきりきりきり、こおろぎや がちゃがちゃがちゃがちゃ、くつわ虫
あとから馬おい、おいついて ちょんちょんちょんちょん、すいっちょん
秋の夜長を、鳴き通す ああおもしろい、虫のこえ
(文部省唱歌:作詞作曲不詳)
これから日ごとに深まりゆく秋。「芸術の秋」「読書の秋」「スポーツの秋」「実りの秋」そして「天高く馬肥ゆる、食欲の秋」。いろいろなことに取り組みやすい気候になっていきます。
子どもたちの感性を育てるためには、まず周りにいるおとなが、自然の変化や環境に感動することが大切です。身の回りの変化に気づくことができること、そして、そこから「何だろう?」「どうしてだろう?」「どうなっていくのかな?」と興味関心を持つことが、子どもたちの「知的好奇心」へとつながり、一人ひとりの成長の糧となっていきます。
秋の日々や秋の夜長、親子一緒に五感を研ぎ澄まし、自然からのメッセージを受けることができると良いですね。
(園長 鬼木 昌之)