① 「がたがたがた」⇒ 「ぐらぐらぐら」⇒ 「どしん」⇒ 「どきどき」⇒ 「えーんえーん」 ⇒ 「ぎゅー」⇒ 「くすんくすん」 ⇒ 「なでなで」⇒ 「すやすや」
②「ぎー」⇒ 「そろそろ」⇒ 「きらきら」⇒ 「にこにこ」 ⇒ 「どんどんどん」⇒ 「びりびり」⇒ 「ぴょんぴょん」
ここに並べたのはオノマトペ。「擬態語」や「擬声語」と呼ばれるもので、様子や物音、声などを表しています。オノマトペを並べるだけでも、何となくその場の様子を思い浮かべることができますね。ちなみに①は、突然地震が起き、怖くて泣いてしまった子どもが、おうちの方に抱っこしてもらって安心した様子、②はクリスマスの朝、起きてきた子どもがドアを開けるとサンタさんからのプレゼントがあり、包装紙を破って手に取り大喜びしている様子をイメージしたものです。
世界の言語の中で、英語にはおよそ1,000~1,500、フランス語には600ほどのオノマトペがあると言われています。日本語には4,500ほどがあり、世界の言語の中でオノマトペが多い方だそうです。
オノマトペは漫画の中でも多く用いられています。「Dr.スランプ」に登場するアラレちゃんが走っているシーンでは「キーン」という音が鳴り響き、スピードを感じることができます。漫画の神さまと呼ばれる手塚治虫は、何も音がしない様子を「しーん」というオノマトペで表しました。以来、しーんと表すと静かな情景を想像することができるようになりました。
宮沢賢治の物語にはオノマトペがたくさん用いられています。「風がどうと吹いてきて、 草はざわざわ、木の葉はかさかさ、木はごとんごとんと鳴りました。」(注文の多い料理店)「天の川のひとつとこに大きなまっくらな孔が、どほんとあいているのです。その底がどれほど深いか、その奧に何があるか、いくら眼をこすってのぞいてもなんにも見えず、ただ眼がしんしんと痛むのでした。」(銀河鉄道の夜)その情景だけでなく、背景にある不気味さや不思議な感覚がオノマトペによって強調されています。
このように、オノマトペを上手に活用することで、その場の情景や心情を細やかに表現することができるものです。
幼稚園に通う子どもたちは、日々の生活の中で多くのことばを吸収しています。初めは意味が分からないことばも、繰り返し耳にするうちにその意味や使い方を身に着けています。その能力は大きく、親や先生が気付かないうちに多くの言語を獲得し、子どもの口から発せられたことばに、いつの間にそんな言葉を覚えたのと驚くことも多いものです。それだけの力を持っている子どもたちだからこそ、普段の生活の中では豊かな言語体験を持たせてあげたいものです。
子どもたちが好きなことば遊びに「しりとり」があります。年齢が上がるにつれ知っていることばが増えて長く続けることができるようになり、子どもたちも喜んで取り組んでいます。さらに、ことばを活用したり、ことばの裏に込められた思いや情景を思いめぐらす力を養うために、オノマトペを使ったことば遊びも楽しいものです。
「るんるんって、どんな気持ち?」「では、反対に悲しい気持ちはどんなことばがあるかな?」「ぐっしゃーてどんなときに使うかな?」「スイカを食べる時の音をいっぱい考えよう。」「今から言うことばに合わせて動いてごらん『ぎゅーんぎゅーん』『ぷるぷる』」「ねこが怒った時の声を出してみて。」などいろいろな遊び方があるものです。
教育の基本の一つは子どもたちの学びの環境を整えることです。子どもたちの感性を養い、コミュニケーション能力を高めるためにも、オノマトペを意識しながら子どもたちに多くのことばにふれる場を提供していけると良いですね。
(園長 鬼木 昌之)