闇に響くノクターン

いっしょにノクターンを聴いてみませんか。どこまで続くかわからない暗闇のなかで…。

エトロのジーンズ

2010-03-14 23:20:28 | わが酒と薔薇の日々
Mくんのことを考えると自殺するようなタイプではなかったのになぜ自殺したのかと、ついその原因を考えてしまう。すると同居していたKさんがなぜそれをとめられなかったのかとKさんを非難するような感じになってしまい、なるべくそれは考えないようにしている。実際、そのことで一番苦しんでいるのはKさんなのだから。
Kさんからの第一報によれば、遺書はあるらしいのだが、Mくんの死は地方でのことで、家族が遺体を引き取り、家族だけで密葬するらしい。彼を死に追い込んだ直接の原因は、結局わからずじまいということになりそうだ。
さて、Mくんが自殺するようなタイプできないとおもうのは、二年も彼とつきあった経験から言えるのだが、われわれが別れたいきさつは、どうもはっきりおもいだせない。私の方で彼につきあいきれなくなってふったようなかたちだったのだが、それをどう切り出したか、具体的なことを覚えていないのだ。
それでも、呑みに行く店がだいたい同じなので(知り合ったのもLという店、ここは週末にジャズ・ピアノの生演奏を聴かせてくれるしゃれた店だった)、別れてからもときどき会っていたし、しばらくすると新しい彼氏ができたといって、若い子を紹介してもらった。
それからまたしばらくたって、やっぱり若い子とは続かなかったという報告を受けたのだが、そのあとつきあいだしたといって紹介されたのがKさんだ。
その後も、PCのことでわからないことがあると、PC関係の仕事をしていたMくんを呼び出しては操作を教わったり接続してもらったりしていた。
そのうちこちらもカレシモドキができたのだが、ちょうどそのころ、MくんとKさんが一緒に生活をはじめて新居のお披露目をするというので、カレシモドキをともなってそのお披露目パーティーに行ったこともある(私のまわりでは、カレシモドキにだけは、電話でMくんの死を伝えてある)。
ころころには、互いの恋愛感情はすっかり消えていたが、セックスだけでなく、傷つけあうことも含めて、互いの心の深部に触れるようなことを何度か繰り返したので、私とMくんは、なんの気兼ねもなくいろいろなことが話し合える、ものすごくいい関係になっていたと自分ではおもっている。
と、ここまで書いたら思い出したのだが、二年ぐらい前、彼に誘われて赤坂のホテルを会場にしたあるデパートのバーゲンセールに行ったことがあった。つきあっていた当時も、われわれは一緒に買い物をするのがとても好きだったのだが、このときも、ああでもない、こうでもないとぶつぶつ言いながら、バーゲン会場を長いこと物色して回った。で、結局彼が気に入ったのがエトロのジーンズで、なんだかんだと理屈をつけながら、バーゲン価格で3万円ぐらいするそのジーンズを、いいものが見つかったととても喜んでいた。そのあと、無駄遣いをしたことをKさんに告げ口しないための口止め料とか言って、ホテルのケーキセットをMくんにおごらせて、暗くなるまでホテルのラウンジで雑談をしていた。
そういえば、そのあと、また私のPCがおかしくなって、それをなおしてもらうために来てもらったのが彼とあった最後になったような気がするが、その前にいっしょに行った買い物がとても楽しかったのだろう。エトロのジーンズをはいてきて私に見せびらかしていた。
とここまで書いたら、彼のことをおもいだしてちょっと考えがまとまらなくなってきたので、今日の記事はこれで終わる。