青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

狂おしいほど、夏

2012年08月22日 06時24分12秒 | 三岐鉄道・北勢線

(クジラがおるで@三岐鉄道線近鉄富田駅)

関西本線の踏切からぽくぽくと富田の街を歩いて、三岐鉄道電車の始発駅である近鉄富田の駅にやって来ました。JR側はともかく、一応乗換駅ですし駅前周りはそこそこ栄えてるのかなと思いきや何だか区画整理もされてない古い街なんですね富田。時代を感じる旧家が街道沿いにあって、その間に個人商店と銀行がパラパラとある程度。駅前にコンビニ一つありゃしないってのは…白子の駅前ってあれはあれで栄えてたんだなあとつまらぬ感想を抱く(笑)。つーか富田と言えば私的には「トミダノ股割レ」なんですけど、そう言う話はやっぱこの辺りではタブーなんでしょうか…話すと長くなるんで、詳細はググるがよろし。近年新しく改築されたらしい近鉄富田駅、クジラの形を模してるようだがなぜクジラかは不明(笑)。この駅東西に入口はありますけど、西口にしか三岐鉄道の窓口はないのでお気を付け下さいな。ここで一日1,000円の三岐鉄道全線フリーパスを購入しましたが、これ一枚で三岐線と北勢線のどちらも乗り放題と言うかな~りお得なキップです。


何だか天気は一気に回復し、絞れば水が出るような空気の蒸し暑さ。ホームでベンチに座って待っていると程なく折り返しの東藤原行きが到着。車両は三多摩地区の皆さんにはお馴染みの元・西武701系でございます。最近の地方私鉄と言えばどこへ行っても東急車が幅を効かせまくりですけど、三岐鉄道はかなり長い事西武の中古を入れてますね。資本的にはあまり西武とは関係ないとは思うのですけど…鈴鹿山地を越えた近江鉄道は明確に西武系列の会社ですが。

 

西武の701系の三両編成、ほど良くクーラーの効いたガラガラな車内、ロングシートに座れば雰囲気的には西武国分寺線とか多摩湖線とか多摩川線とかあの辺りの感じ(笑)。自分としては西武線って西武球場に行く時にしか使わなかったから、何だか懐かしいよね。まだ車内の壁には「西武所沢車輛工場」のプレートが残っていて、目を閉じて耳を澄ませば聞こえて来るシゲル・マツザキの歌声(ねえよw)。電車は定刻、3割くらいのお客を乗せて近鉄富田を発車。市街地を走る大矢知、平津、暁学園前、山城で3割の半分くらいの客が消え、車両区のある保々で乗務員が交替し、朝明川を渡ると沿線に緑が濃くなり北勢中央公園口。梅戸井からは田園地帯を走って大安、三里と電車は旧員弁郡(現いなべ市)を藤原岳に向かって北上して行きます。


最初の目的地である丹生川で下車。
丹生川~三里の間の田園地帯は三岐鉄道随一の撮影スポット。だいたいウェブで探すとこの辺りで撮られた写真が多いんで、まずは定番でいっちょセメント貨物を抑えてみようっちゅう訳です。さっき車窓から見て撮る場所の当たりは付けたしね。この駅にはボランティアが整備した「貨物鉄道博物館」と言うものがあるのですが、今日は開館日ではないらしい。


駅前の路地を抜けて田園地帯へ。…天気回復しすぎ(笑)。
今日は徒歩鉄なんで大きなスリックの三脚とレンズの入ったカメラバッグ担いでるんだけど、こんな炎天下の中を歩いたらマジで5分で死ねるレベル。ずーっと向こうに農道が線路をオーバーパスするのが見えっけど、あの辺りだよな…と思いながら歩く事15分、撮影地に到着してさっそくアングルを決めていると、乗って来た電車の次の下りがやって来た。


どーよ、この狂おしいくらいの夏(笑)。
発狂しそうなくらいの炎天下、これアメリカ人なら間違いなく車のボンネットの上でBBQを開始するに違いねえなちくしょうめwオーリ持って来いオーリ!(古い)と叫びたくなるのを堪えてファインダーを覗けば、あくまでも緑一色役満確定のどこまでも続く稲田、藤原岳の向こうから沸き立つ白雲。そんなハイコントラストな風景の中を、負けじとハイコントラストな三岐カラーの電車が駆けて行く。


自分が丹生川まで乗って来た西武701系が戻って来たので、今度は藤原岳を手前に引きつけて一枚。
三岐鉄道は当時の小野田セメントがこの藤原岳から産出される石灰石を輸送するために昭和6年に敷設された鉄道なんだけど、北九州の香春岳とか、秋吉台とか、秩父の武甲山とか、日本って鉱物資源に恵まれない国ではあるけど石灰石だけは結構豊富な埋蔵量があるんだよね。削られた山肌がちょっと痛々しいが、藤原岳は文字通り身を削って国土の整備振興に役立って来た山だと言えるのかもしれませぬ。


そしてお待ちかね、東藤原発四日市港行きの重連セメント専貨がタキ1900を連ねて山を下りて行きます。
茶色のD級電機ED45は常時重連で運用に就いておりますが、荷物満載だと一編成でセメント約600トンを牽引する能力を持っているらしい。見た目がちょっと小柄なんでそんなパワーがあるように見えないんだけどね。測った訳じゃないけど、秩父のデキよりちょっと小柄かなあ。ちなみに元々秩父鉄道は秩父セメント系列、三岐は元小野田セメント系列だったんだけど、何年か前に秩父+小野田+日本セメント=太平洋セメントとなりましたので、現在は親会社が同じになってるんですねえ。

太平洋セメントって会社は日本最大のセメント会社ですけど、岩手じゃ大船渡で岩手開発鉄道を、埼玉では秩父で秩父鉄道を、そしてここ三重では三岐鉄道を、それぞれセメントや石灰石の輸送を鉄道を基軸として運営している会社な訳です。
なんて趣味人にやさしい会社なんだろw
足を向けて寝られませんわあ。
コメント
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