青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

箱根のヤマはこのお顔

2014年04月12日 23時09分06秒 | 箱根登山鉄道

(cat walk@大平台駅)

引っ越しっつー大イベントを終えてから一週間、生活の方は慌しさもありながら徐々に落ち着きを取り戻し始めたかな~、と言った塩梅。今日も旧住居の引き払いのために不動産屋に行ったり、残存物を撤去して廃棄処分にしたりと残務処理に追われていたのだが、午後はポツッと時間が空いたのでひとっ走り箱根まで息子とドライブして来た。週中に箱根登山鉄道の新型車両(3000系)が工場から出荷されて甲種輸送されたと言う記事を読んだものですからね…


箱根登山に新車が入る話は確か去年の秋くらいに聞いていたので、特段の驚きがあった訳ではないのですけど、甲種と言う話を聞くといよいよ出来上がっちゃったのねと。んで、新車が入っちゃえばやっぱ旧型車のどれかは玉突きの如く落とされちゃうんだろうなあ…なんてツラツラ考えてたら、何となしに箱根までモハ1&モハ2の顔を拝みに行きたくなってしまったと。そーゆー訳なんであります(笑)。これは108が青塗装を纏っていた時に上大平台信号場で撮った写真なんだけど、やっぱり箱根のヤマはこのお顔が見れないとねえ。


箱根湯本周辺の混雑を避け、風祭から電車に乗って湯本乗り換えで大平台へ。なんか駅の張り紙を見たら今朝(土曜の朝)は初電から7時まで小田原~湯本を運休させて新車の運び込みを行ったらしい。川重の兵庫工場から国府津→御殿場線で松田→連絡線で小田急の新松田→そっからは小田急1000系の牽引で入生田の車庫まで持ってったようですね。入生田の車庫もチラッと見たんだけど、新車ともなれば最近は情報統制も厳しく、さっさと車庫の一番奥底にしまい込まれたようで欠片すら見えませんでしたが。


この時期の大平台と言えば枝垂れの桜。大平台は登山線の沿線では一番の桜の里でもあります。
湯本の喧騒でもなく、宮ノ下の格式でもなく、塔ノ沢の峻嶮でもない大平台。温泉街が箱根の外輪山に囲まれた箱庭のような場所に広がり、春は桜と新緑、初夏の紫陽花、秋の紅葉に冬の雪景色と四季折々があって登山電車を撮ろうと思うとここに来てしまうんよね。そもそもトンネルと隘路が続く登山線沿線で、比較的開けてて色んなアングルが取れるのって大平台界隈しかないとも言えるんだけど…湯本じゃすっかり葉桜だったけど、大平台まで上がってくれば座間に続いてギリギリセーフと言ったところ。今年は見頃の桜をカメラに収める事はついぞ出来ておりません。返す返すも満開の週末に引っ越しなんかしちゃいけねーなとw


登って来る時に、塔ノ沢と出山の信号場で旧型車が続行で下って行くのを確認。今日は出が遅いのでパパッと撮って上がらなきゃいけないんで、好都合の運用状態。まずは大平台への連続勾配で旧車を待ちますが、登山線の撮影は遮断機のない四種踏切で待つ事も多く、「絶対に動いちゃダメだよ!」と強く念押しした上で股の間に子供をガッチリとホールドしておきます。腹の底に響くようなモーター音を奏でながら、山桜の咲く坂道をゆっくりと力強い足取りで登って来る103。


大平台でのスイッチバック時間を利用して、お次は駅先のインカーブ。花曇りの空に色は冴えないけれども、名残の枝垂れを横目に上大平台へ登って行く。110は増結用の両運車ですが、平塚にある東洋工機と言う会社で作られておるそーな。VVVFインバータ装置などの製作でお馴染みの東洋電機製造の子会社だそうだが。


旧車と上大平台で交換した氷河急行色の2000形「サン・モリッツ号」。一応現在では最後の新造車になりますか。新造車とは言えデビューが1989年だからずいぶん長い事登山線は新車を入れてなかったんだねえ。日本一の急勾配を粘着運転で上り下りすると言う任務があまりにも特殊なもんで、装備が複雑かつ高額になるのがネックなんだろうなあ。

 

これも定番大向踏切から金太郎帯の108(両運車)。デビューから幾度となく改造を加えられた車両ですが、屋根の上に乗っている一見クーラーっぽく見えるものは発電ブレーキ用の抵抗器だったりする。制動用の保安機器が床下に収め切れないので屋根上に乗っけざるを得なかった訳ですが、クーラーがなくとも窓を開けていれば箱根の山風とトンネルの冷気で夏でも涼しいためそんなに苦にはならないですね。非冷房がさほど問題にならないと言う部分も、旧型車が長きに亘って現役の戦力として活躍出来ている理由の一つかもしれませんな。


ちなみに旧型車の屋根上は抵抗器の発する熱で真夏になると陽炎が立ち、その熱量たるや凄いものがありまする。非鉄の方にお話すると、運動力を熱に変え排出する事で速度を落とすのが発電ブレーキなんですが、要するに屋根の上に電気ストーブが乗っているようなもんです。まさに山男のアツイ走り、重い荷物を担ぎ上げるシェルパが流し出す汗が如く揺らめく陽炎、無骨ないでたちとそのオトコ臭いトコに魅力があると思うんよねえ。

   

生粋の神奈川県民にとって最もポピュラーな観光地・箱根。その箱根の顔として活躍して来たモハ1・モハ2の旧車グループ。ロマンスカーで食べた森永のアイスクリームとか、うんざりした早雲山でのロープウェイ待ちとか、大涌谷で食べた黒玉子とかと同じように、子供の頃の思い出のひとコマにある人も多いんじゃないでしょうか。

江ノ電の300型と登山のモハ1・モハ2コンビは、神奈川県の重要有形文化財。
いつかヤマを降りる日まで、後輩に負けず末永い活躍を期待したいものです。
コメント
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