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ストーリーとしての競争戦略

2011-02-15 | 
ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件 (Hitotsubashi Business Review Books)
楠木 建
東洋経済新報社


発売直後に読んだのですが、私自身がまだまだ目先の仕事のことで手いっぱいで頭に入ってこなかった本です。
先日、取引先の専務に勧めていただき、再読。人に勧められると途端に頭に色々入ってくるのが不思議です。。笑

本屋でも結構宣伝してますので、読んだ方も多いはず。500ページを超える大作ですので根気は要りますが、それだけに価値のある内容です。

題名そのもの、優れたビジネス戦略には、優れたストーリーが内在されている、ということなのですが、そのストーリー とは一体どういうものなのか、ということを、実例を踏まえ、懇切丁寧に解説してくれています。
著者が本の中で、「賢者の盲点」とか、「キラーパス」とか表現しているストーリーの肝の部分、ここが通常の企業ではまず見つけられないわけです。
私も前職時代、不毛な戦略会議にずいぶんと時間を割きましたが、誰もが気付くことは戦略ではないし、また、誰もが真似しようと思うことも、武器にはならない、といいます。
時代の流れにいち早く気付き、実行すること、これも著者に言わせれば、「戦略ではない」とのこと。たしかにいわゆる「パイオニア利益」は得られますが、いつかは追いつかれるわけです。

スターバックスやガリバーといったビジネスモデル、外見を真似した会社がたくさん参入してきましたが、結局内在する「ストーリー」が、実は真似できるものではない、というわけです。トヨタの真似を世界中がして、表面的な、或いは、場当たり的な、ご都合主義的な「模倣」をしても、根幹がわかっていなければ結局同じモデルは出来上がりません。ここが「肝」の部分ですね。

とある水産会社のことを思いだしました。
15年くらい前、その会社が外食事業に乗り出したとき、ライバル会社に居た我々は笑ったものです。案の定、撤退(のように見えました)。
外から見たら、「ほらやっぱり失敗した」という感じでしたが、実はすごい計画の「仕掛け」をしていたわけです。今じゃ、同社のブランド水産物は外食業界ではトップクラスの品質評価+価格で流通しており、また、経営するレストラングループも、あちらこちらで取り上げられるほどの名店。

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その業界を知っている(つもりの)「賢い人」が聞けば、「何をバカなことを」と思う。しかしストーリー全体の文脈においてみれば、一貫性と独自の競争優位の源泉となっている。部分の非合理を全体での合理性に転化する。これがストーリーの戦略論の醍醐味です。ストーリー作りで一番面白く、しかし難しいのは、そうした「キラーパス」を組み込む、というところにあります。
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外食経営なんてのは、誰も真似しない、業界では「暴挙」といわれた動きでした。これが実は誰も真似しない「仕掛け」だったんだろーなと。で、今から真似したところで、表面的なことばかりになるので、この会社の優位性はしばらくは揺るがないものとなるのでしょう・・・お見事です。

先のことではありますが、こういった意識を常に持って仕事をしていきたいものです。

「この国を出よ」

2011-01-29 | 
この国を出よ
大前 研一,柳井 正
小学館


大前研一氏と、ユニクロの柳井さんの対談形式の本です。題名に惹かれて読んでみました。
非常にお勧め、特に、若い方には是非読んでもらいたい本です。

折しも海外の格付け会社から国債の格付けランクを落とされたばかり。確かに個人資産が1000兆円ある国とはいえ、国家予算の半分以上を借金で賄っている現状は、「異常」としかいいようがありません。
それでも税金上げるな、とか、とにかくお金、保障ばかり強請る国民にも、相当責任あります。

役人や政治家、或いは会社の幹部がとかく「目を背けたく」なるような現状をしっかりととらえ、ズバッと切り捨てています。
普段漠然と思っていた不安感がどこから来るのか、非常に明確にしてくれる本でした。

なお、決して日本を捨ててしまえ、という本ではなく、国際社会からどんどん孤立し、おかしな方向に行ってる日本を一回飛び出し、世界に揉まれ、グローバルな視点と強いリーダーシップを身につけ、再度日本に戻ってきてくれ、という流れでした。


これからの正義の話・・・ 食品版

2010-12-26 | 
これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学
マイケル・サンデル,Michael J. Sandel
早川書房


今、話題の書。
売れてる割には難解で、最後まで読み終えている人は少ないのではないか、という記事がでてました。
特に、NHKでやってるこの人の授業 を観たことのある方にはわかると思いますが、以下、食品について、マイケル・サンデル氏が授業を行ったら・・・という仮想。。笑

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マイケル・サンデル (以下 M)

「賞味期限が切れているけど、十分食べられる商品を市場に流す行為について、どう思うかね? そこの君・・?」

学生 A (以下 SA)

「それは消費者をだましている行為になるから、許されるべきではないと思います。」

M:「では、表示を張替え、消費者は全く気付かないとしたら、どうなるかな? 騙されている認識が消費者にはないわけだが」

A:「相手が知らないから許される、ということにはならないと思います。

M: 「なるほど。では視点を変えよう。日本のある町に、災害で食べ物がまったく届かない地域があるとしよう。そこには、冷蔵庫があり、賞味期限の切れてはいるが、十分食べられる食品がたくさん入っている。この場合、企業がこの商品を流通させることは、やっぱりまずいのかな? だれか・・・? 君・・」

SB: 「それは、被災者が他に食べるものがなく、選択の余地がないうえ、被災者が了解していれば食べられると思います」

M: 「被災者が了解していれば、許されるわけだね」

SB: 「 はい 」

M: 「では、一般の市場でも安いのであれば、賞味期限が切れた商品を食べたい、という人たちもいる。これは、本人が了解していたら、売っても構わないのかね? さて、売っても構わないと思う人、手を挙げて・・・」

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っと、こんな感じの授業になるのではないかと。。笑

この続き、一時間ぐらい語れそうですので、この辺で。
あの人の授業を観たことある方なら、わかっていただけるかと。。。



象の鼻としっぽ

2010-12-02 | 
象の鼻としっぽ
細谷 功
梧桐書院

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コミュニケーションギャップのメカニズム、と副題があるこの本。仕事でよく感じていることを論理的に解説してくれています。

簡単にいえば、象、という事実はひとつ。かたやお尻だけ見て象を語り、かたやしっぽだけ見て象をかたっていたとすれば、意思など伝わる訳ない。。ということです。
仕事をしていると、細かいところでは言った言わない、のレベルから、勘違い、思いこみ(それも自分の希望的な思いこみ)などで、話しがかみ合わないことが多々あります。
で、皆自分が見ているものがすべて、自分がすべて、と思うわけです。

こう客観的に解説すると納得なのですが、社会の中で仕事をしている以上、誰でも皆、このギャップを味わっていると思います。
日本人同士でも日常的に起こること・・それが異文化の方々とコミュニケーションをとらなければならない、となると、まず伝わってない、と、思うのが一番なのかな・・と感じます。

会社員時代は、それでもこちらの論理で押し切ることも多々ありました。ですが、今はそうはいきません。
ともすると相手も自分と同じように物が見えてると思ってしまうわけで、「そうじゃないんだよ」「伝わっている。。と思うのは、幻想なんだよ」と、再認識させてくれる本でした。

個人的には今年読んだ本の中でも結構お勧めの部類に入ります。

マボロシの鳥

2010-11-16 | 
マボロシの鳥
太田 光
新潮社

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久しぶりに本の記事です。

爆笑問題の大田光氏が書いた、短編小説集です。テレビや新聞などで話題だったので、昨日購入、読了です。

なんというのかなー。さすが多才な人だな、というのが印象。 子供のころに読んだことがある、或いは、昔テレビで見たことがあるような、ないような・・ そういったショートストーリーが集まってます。 なんか、色々自分で書きながら実験している感じ・・?
私はこういった本をほとんど読まないので、誰に似てるとか、どんな感じとか、言いづらいですね。
ただ、一瞬にして、その情景が浮かんでくるような描写の仕方はさすがです。

頭を切り替えたいとき、ちょっとディスコネクトしたいとき、などいいかもしれません。

ソトコト

2010-09-29 | 
SOTOKOTO (ソトコト) 2010年 10月号 [雑誌]

木楽舎

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発売中の10月号、「魚食&国産食材事典」 という特集です。

昨日、青森の田向商店 田向さんが上京、同社も記事に取り上げられているこの雑誌を紹介してもらいました。

この手の特集を組む雑誌はいままでもいろいろありましたが、雑誌自体のコンセプトがしっかりしているため、視点が一定で読みやすかったです。
(ロハスピープルのための快適生活マガジン ということです)

食べないほうがよい魚(資源の枯渇、あるいは生態系や現地の人々の生活を悪化させている魚)としてリストアップされてるのは、扱ったことのある魚ばかり。。汗
クロマグロにカジキ、オレンジラフィーに赤魚、タコに海老、輸入養殖サケ 等々・・

逆にエコロジカルな魚として取り上げられているのが
サンマにスルメイカ、カタクチイワシ、国産鮭、ホタテ、牡蠣、ゴマサバ などなど。。
これもおいしいものばかり。
ちなみに、4つのS(工場の5Sとは違いますよ・・)がポイントだとか。。

Small  小さめの食物連鎖の底辺にいる魚は成長が早く繁殖力があり寿命も短いので、汚染物質も少ない。

Seasonal  旬の魚  味も栄養もパワーアップ

Silver  光りもの。DHA、EPA カルシウム、タウリンなどが豊富

Shellfish  貝。海水をろ過して水質をきれいにしてくれ、養殖するときも餌が要らないので環境に優しい

勉強になります。。



永遠のゼロ

2010-09-16 | 
永遠の0 (ゼロ)
百田 尚樹
太田出版

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出張中、一気に読みました。
ゼロ戦乗りの話。
第二次大戦って、私が生まれるちょっと前に終わったばかりだったわけです。当時はそこらじゅうにいた戦争体験者も年老い、生き残った人たちも高齢化。
事実がだんだん見えなくなり、我々自身も「日本が悪かった」などという教育を受け・・

個別の回想録が非常に読み応えがあっただけに、トータルのストーリーが陳腐な感じがするのが残念でした。なにか、書いている人が二人いるのではないか、という感じのアンバランスさでした。
私が引き込まれたのは、戦争体験者の個別の回想録。実話・調査を相当されたとのことで、リアルで重い話しがほとんどでした。私が知っている実話もずいぶんと織り込まれていました。

非常につまらない話ですが。
就職直後、都内某所でアパート暮らしをしているとき、真裏、窓の下が墓地でした。
で、夏のある夜、「俺たちだって死にたくて死んだわけじゃないんだよなー」「あのときは、仕方なかったんだよなー」という夢というか、声というか、を聞いたことがあります。
はっきり覚えているのですが、非常に穏やかな、雑談のような感じで。話しているのは二人の方でした。
霊感が強いわけではなかったのですが、それ以来、兵隊さんたちの気持ちが気になって仕方ないんですね。靖国通いもそんなところからです。 
また、その他の理由(私と直接面識のある方で聞いたことのある方も多いと思いますが)もあって、特攻のことはとにかく気になります。

どこで読んだのか、聞いたのか忘れましたが、
「この身体はこんなに元気なのに、もうすぐ死ぬんだなー」と行って特攻機に乗っていった方がいたそうです。

この小説、「死」を拒んだ戦闘機のり の話しです。生に執着し、そして最終的に特攻で散っていった架空の人を題材にしていますが、当時、こういった考えを持っていても果たして行動できたかどうか・・

心に残る一冊となりました。

ロングテール

2010-09-12 | 
ロングテール(アップデート版)―「売れない商品」を宝の山に変える新戦略 (ハヤカワ新書juice)
クリス アンダーソン
早川書房

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北の社長に薦められて読んでみました。
いつも思うのですが、人から本を薦められるのは大好きです。自分じゃ絶対に読まないような本と出会え、また、それからいろいろと学べたりもします。
薦めてくれた人のことも少し分かるような気がしますし。。

「ニッチ商品の集積がヒット作を凌駕する」ということをいろいろな事例を挙げ、説明しています。
我々の常識といえば、いわゆるパレート理論、80対20 の法則です。この本では、パレートを否定しているのではありません。

こと商売について言えば、消費者は今までのように限られた情報から商品を選ぶのではなく、無限とも思えるネット上の情報に触れ、本当に自分のほしいものが選べる時代になっています。志向の多様化の元は、こういった情報量の拡大が発端になっていると言えるでしょう。
音楽にしろ、映画にしろ、昔のような売れ行きは示さなくなりました。なにせ自分の志向に合ったものをネット上でいくらでも探すことができるわけです。
そういった特殊な志向というか、ニッチな市場を満たすことができる周辺環境が、ニッチ市場の可能性を飛躍的に伸ばしています。この部分がロングテール ということになるのでしょう。

さて、自分の商品にあてはめた場合、あくまで「実体」のある商品をリアルな商品として在庫していくことが基本なわけです。このロングテールの考え方、私にはまだストンと落ちてこないのが現状。
早速、北の社長に相談し、いろいろとご意見を聞かせていただきました。。
同じ作者の「Free」を読めば、もう少し思考が柔軟になってくるとか。

私にとっては、本の内容自体だけでなく、内容についていろいろと話しの相手をしてもらえることが非常にありがたいことでした。
 
しばらく時間を置き、この本と私の仕事がつながるときを待つことにします。

何事も熟成が必要・・かな・・・

「値引きして売れるなら捨てるよりマシ」は本当か?

2010-07-31 | 
「値引きして売れるなら捨てるよりマシ」は本当か?―将来どちらのほうが儲かるかで考える損得学
古谷 文太
ダイヤモンド社

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ドラマ仕立てになっていますが、
※ 値引き要求に応じるべきか否か
※ 山積み在庫 安くても売れるなら、捨てるよりマシは本当か?
※ 簿価400万円、 まだ使えるのにもったいない・・は正しいか? (償却残の考え方)
※ 新規投資プロジェクト、やるべきかやめるべきか?

という章仕立てで、会社でよくある意思決定がいかにいい加減か・・ということを易しく説いています。

私に若い部下がいたら、間違いなく読ませたい本でした。

結構易しい内容でしたが、私も改めて考え方を徹底しなければ・・と気づいたこと。

「損得の勘定は過去に支払ったお金は考えず、今からのお金で考える」
という点。

簡単に言うと、

「今までこれだけお金つぎ込んだんだから、もったいない・・」という発想で事業を継続すること。

つぎ込んだお金は取り返しがつかないのですから、事業を撤退しようが継続しようが考慮する必要はないわけで、今後どうなるか・・のみに焦点を絞って考えるべきもの。
結局仕事してると「感情」で動くことが多いですから、「これだけ苦労したのにもったいない」という発想で物事を考えてしまいがちです。
ですが、実際にはそのあともマイナスがかさむ、あるいは、費用対効果が見込めないのであれば、とっとと撤退したほうがいいわけで、この辺をドラスティックに判断できるか否かが生き残る会社とそうでない会社の分かれ目だったりするわけです。

「損得計算表」という著者オリジナル?の事業分析表(とても簡単)などは、今すぐにでも使える考え方でした。。

若いビジネスマンに本当にお勧めの本です。。。



「星野リゾートの教科書」

2010-07-25 | 
星野リゾートの教科書 サービスと利益 両立の法則
中沢 康彦
日経BP出版センター

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親から受け継いだ軽井沢の老舗温泉旅館から、日本各地でリゾートを運営する企業へ飛躍させた社長の話。
目を引いたのは、「教科書通りの経営」という言葉。教科書、すなわち本屋に溢れている本から良書を選び、読み込み、そして実際の経営に当てはめていき、結果を次々と出している、ということらしいのです。

私もそうですが、「本」の自分にとって都合のいい部分だけを取り込み、わかった気になってしまうことがあります。
星野社長の場合、

1.本を探す  書店に一冊しかないような古典的な本ほど役にたつ
2.読む  一行ずつ理解し、わからない部分を残さず、何度でも読む
3.実践する 理論をつまみ食いしないで、100%教科書通りにやってみる

という姿勢を徹底しているそうです。
紹介されている本の何冊かは、私も読んだことのあるもの。具体的な事象にどのようにその本の理論を応用したか、実例がたくさん挙がっています。
星野社長は、そのときに解決したい問題に「適切」な本をしっかりと選び、それを徹底的に読み込み、そして、自分の事象に当てはめて実践。うまくいかないのは本のせいではなく、なにか実践方法に問題アリ、と考え、改善を図っていく、という徹底ぶり。

「経営判断の根拠や基準となる理論があれば、行動のぶれも少なくなる」 
本は、そのぶれを起こさせない軸となるそうです。

本を乱読することがなにかもてはやされ、一冊のうち数行でもいいから役に立てばいい。。という感じで読書数を煽る風潮があります。
私もそれに乗って?? たしかに乱読傾向。。というか、本を買い漁るのが一種の趣味と化しています。
でも、実際「本」は、使い方次第。。

机の脇に積まれた本の山を眺めながら、読書の仕方、変えないとまずいなーと思ってしまいました。。