![]() | ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件 (Hitotsubashi Business Review Books) |
楠木 建 | |
東洋経済新報社 |
発売直後に読んだのですが、私自身がまだまだ目先の仕事のことで手いっぱいで頭に入ってこなかった本です。
先日、取引先の専務に勧めていただき、再読。人に勧められると途端に頭に色々入ってくるのが不思議です。。笑
本屋でも結構宣伝してますので、読んだ方も多いはず。500ページを超える大作ですので根気は要りますが、それだけに価値のある内容です。
題名そのもの、優れたビジネス戦略には、優れたストーリーが内在されている、ということなのですが、そのストーリー とは一体どういうものなのか、ということを、実例を踏まえ、懇切丁寧に解説してくれています。
著者が本の中で、「賢者の盲点」とか、「キラーパス」とか表現しているストーリーの肝の部分、ここが通常の企業ではまず見つけられないわけです。
私も前職時代、不毛な戦略会議にずいぶんと時間を割きましたが、誰もが気付くことは戦略ではないし、また、誰もが真似しようと思うことも、武器にはならない、といいます。
時代の流れにいち早く気付き、実行すること、これも著者に言わせれば、「戦略ではない」とのこと。たしかにいわゆる「パイオニア利益」は得られますが、いつかは追いつかれるわけです。
スターバックスやガリバーといったビジネスモデル、外見を真似した会社がたくさん参入してきましたが、結局内在する「ストーリー」が、実は真似できるものではない、というわけです。トヨタの真似を世界中がして、表面的な、或いは、場当たり的な、ご都合主義的な「模倣」をしても、根幹がわかっていなければ結局同じモデルは出来上がりません。ここが「肝」の部分ですね。
とある水産会社のことを思いだしました。
15年くらい前、その会社が外食事業に乗り出したとき、ライバル会社に居た我々は笑ったものです。案の定、撤退(のように見えました)。
外から見たら、「ほらやっぱり失敗した」という感じでしたが、実はすごい計画の「仕掛け」をしていたわけです。今じゃ、同社のブランド水産物は外食業界ではトップクラスの品質評価+価格で流通しており、また、経営するレストラングループも、あちらこちらで取り上げられるほどの名店。
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その業界を知っている(つもりの)「賢い人」が聞けば、「何をバカなことを」と思う。しかしストーリー全体の文脈においてみれば、一貫性と独自の競争優位の源泉となっている。部分の非合理を全体での合理性に転化する。これがストーリーの戦略論の醍醐味です。ストーリー作りで一番面白く、しかし難しいのは、そうした「キラーパス」を組み込む、というところにあります。
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外食経営なんてのは、誰も真似しない、業界では「暴挙」といわれた動きでした。これが実は誰も真似しない「仕掛け」だったんだろーなと。で、今から真似したところで、表面的なことばかりになるので、この会社の優位性はしばらくは揺るがないものとなるのでしょう・・・お見事です。
先のことではありますが、こういった意識を常に持って仕事をしていきたいものです。