goo blog サービス終了のお知らせ 

映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ふたつの名前を持つ少年

2016年04月10日 | 映画(は行)
自分がユダヤ人であることは忘れるな!



* * * * * * * * * *

ナチスドイツ占領下のポーランド。
この背景にどれだけの多くのドラマが繰り広げられてきたことか。
そんな中、また一つ、胸に迫る本作です。



ポーランドのユダヤ人強制居住区から脱走した8歳の少年スルリック。
始めは彼と同様身寄りの無い子供たちと生活を始めたのですが、
ドイツ兵に追われ、別れ別れになり、たった一人で森で生きることになります。
森での生活の術は仲間たちが教えてくれた。
しかし、冬の寒さで凍死寸前のところをヤンチェック夫人に救われます。
夫人は彼に、ポーランド人孤児として生きるすべを教えます。
ポーランド人ユレクの名前で、キリスト教のしきたりを覚え・・・。
やがてユレクは、農村の家を回り、働きながら食料や寝床を得て、暮らすようになります。
しかし、ユダヤ人であることを知られてしまったり、
ドイツ兵に追われたり、どこにも長くは居られません。
そんな中で、また一つ彼に過酷な運命が・・・。



どこまでも過酷で理不尽な彼の運命。
けれども彼は別れ際の父の言葉を思い出すのです。

「絶対に生き抜け!」



この刺すように強い眼差し、胸を打ちますねえ・・・。
ところで、このスルリック&ユレクの役はなんと、
双子の少年たちが入れ替わりながら務めていたのですって!! 
へえ~。
ちっとも気が付きませんでした。
なんとも将来が楽しみなステキなルックス・・・。



さてスルリックの父親はまた、こんなことも言っていたのです。

「父さん母さんのことは忘れてもいい。
だが、自分がユダヤ人であることだけは忘れるな。」

少年は実のところ、自分がユダヤ人であるためにこのようなひどい目にあっているので、
そこのところは多分あまり納得が行かなかったのではないかと思います。
ポーランド人として、喜々としてキリスト教の堅信礼を受けたりもした。
だけれども、本作の最後で彼は父の言葉を理解するのですね。
ユダヤ人であること。
それはやはり彼のアイデンティティのみなもとなのだということを。



それにしても、どこの世界にも心ある人もいればまた、そうでない人もいる。
この凝縮された2時間足らずの中に、まさに“世界”がありました。
あるドイツ人将校は、ちょっと自堕落で、
スルリックを追いもするのですがまた、鷹揚な面も覗かせる。
また、ある医師はユダヤ人の手術はしない、などとのたまう。
迷えるユダヤ人の子供をドイツ軍に売り渡す夫婦もいれば、
そっと労り、かくまってくれる人もいる。
キレイ事だけではなく、また残酷すぎることもない。
そういうバランスも素晴らしいと思います。

ふたつの名前を持つ少年 ブルーレイ+DVDセット [Blu-ray]
アンジェイ・トカチ,カミル・トカチ,エリザベス・デューダ,イテー・ティラン,ジニュー・ザマチョースキー
ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社


「ふたつの名前を持つ少年」
2013年/ドイツ・フランス/107分
監督:ペペ・ダンカート
原作・ウーリー・オルレブ
出演:アンジェイ・トカチ、カミル・トカチ、ジャネット・ハイン、ライナー・ボック

歴史発掘度★★★★☆
過酷な運命度★★★★★
満足度★★★★★

「なんらかの事情」岸本佐知子

2016年04月08日 | 本(エッセイ)
どこかできっと自分とつながっている異次元の世界

なんらかの事情 (ちくま文庫)
岸本 佐知子
筑摩書房


* * * * * * * * * *

これはエッセイ?
ショート・ショート?
それとも妄想という名の暴走?
翻訳家岸本佐知子の頭の中を覗いているかのような
「エッセイ」と呼ぶにはあまりに奇妙で可笑しな物語たちは、
毎日の変わらない日常を一瞬で、見たことのない不思議な場所に変えてしまいます。
人気連載、待望の文庫化第二弾。
今回も単行本未収録回を微妙に増量しました。
イラストはクラフト・エヴィング商會。


* * * * * * * * * *

先に読んだ同じ著者の「ねにもつタイプ」があまりにも面白かったので、
その第二弾である本作も迷わず手に取りました。
これはエッセイというよりも、すでに未知なる異次元の世界への旅。
ただしやはり先に読んだ「ねにもつタイプ」のインパクトが強かった・・・。
どんなものにも「慣れ」はあるものです。
でも多分、こちらを先に読んだ方は、
やっぱりこの「異界」に驚かされるに違いありません。


* * * * * * * * * *

あのダース・ベイダーも夜は寝るのだろうか。
・・・という疑問から発した妄想の世界。
ダース・ベイダーは一日の終り、自室に入って黒マントを脱ぎ、ヘルメットも脱ぐだろうか。
一日の終りにはじめて顔に頭に涼しい風を感じてやっと人心地をつくだろうか・・・
うーむ、考えたこともなかったですが・・・。
これはあれですねえ、例えば会社で偉そうにふんぞり返っている重役が、
帰宅してステテコ姿になっている悲哀とか、そういう雰囲気がありますねえ・・・。

* * * * * * * * * *

「日本タイトルだけ大賞」は、内容は関係なくタイトルのインパクトのみで決められる賞。
2011年度の大賞は「奥の細道・オブ・ザ・デッド」で
「息するだけダイエット」や「薄毛の食卓」などがノミネート・・・・。

* * * * * * * * * *

人は死ぬ前に思い出が走馬灯のように目の前に立ち現れるという。
だからいつ死が襲ってきても構わないように
走馬灯の手入れをしておかなくてはならない。
歯車の一つ一つに油をさして、錆びついたところがないかどうか点検する・・・。

* * * * * * * * * *

そうそう、私も驚いた話が一つ。
アスパラを食べた後に尿が変な匂いになる、という話。
うん、そうだよ、それ常識でしょ、と私は思っていたのです。
ところが日本ではそういう現象が起こるのは人口の一割しかいないとのこと。
えー! 私は皆そうなのだと思っていました。
そうじゃなかったんですか。
欧米ではかなり常識的な話らしいのですが・・・。
少なくとも私と岸本氏はある意味同類なんですね・・・。
だからこんなにシンパシーを覚えるのかしらん??? 
私も<アスパラ秘密結社>に入会しよう。


・・・こんな感じで、きっとどなたにも琴線に触れる部分があると思います。
やっぱりユニークな本。

「なんらかの事情」岸本佐知子 ちくま文庫
満足度★★★★☆

マリーゴールド・ホテル 幸せへの第2章

2016年04月07日 | 映画(ま行)
事業拡大はいかに



* * * * * * * * * *

前作「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」がとても好きだったので、
迷いなく見ましたが・・・。


インド、ジャイプールで余生を過ごそうと思ってやってきたイギリス人シニア達。
若き支配人ソニー(デブ・パテル)は、
副支配人ミュリエル(マギー・スミス)とともにホテル拡大を狙って奔走中。
なんと意外にも冒頭は、アメリカにいる二人から始まるんですよ! 
マリーゴールド・ホテルが軌道に乗ってきたので、同様のホテルをもう一つ作りたい。
その資金調達のためにやってきたのです。
その審査のために、近々調査員を派遣すると言われて帰国する二人。



さてマリーゴールド・ホテルでは、目下ソニーと彼女の結婚式を控えて、
準備で慌ただしい。
ただしその当のソニーは、ホテル拡張のことに夢中で気もそぞろ。
結婚式なんかどうでもいいと思っているようなのですが・・・。
そんな時、不意にやってきたホテルの客ガイ・チェンバース(リチャード・ギア)。
ソニーはこれが調査員だと勝手に思い込み、さっそくゴマをすり始めますが・・・。



私の好きなキャラクターはジュディ・デンチ演じるイブリン。
彼女は70半ばにして、この地で仕事を始めるのです。
始め、ひたすら余生をのんびり過ごしたいと思い
ここへやってきた彼女だったわけですが、
意外にもまだまだ「余生」ではない、新しい人生を歩み始めた。
いくつになってもこんな風に生きがいを持つのはステキなことだな。
って、仕事を引退したばかりの私が言うのも変ですが。
(今はひたすら休みたいので、勘弁を)


さて、そんな彼女へ思いを寄せるダグラス(ビル・ナイ)は、
彼女の気持ちを慮って、なかなか踏み込めない。
いい年した老人たちなんですが、こういう思いの切なさはいくつになっても同じものなんですねえ。
若い人には違和感あるかもしれないけれど、
私も似たような年齢になると、それはアリだろうと思います・・・。



というわけで、まあ楽しませてはもらいましたが、
けれどもわざわざ続編を作るほどのことはなかった、
というかむしろ、なくても良かった、というのが正直な感想です。
前作がいい感じで一つの完成形でした。
本作は蛇足。

「マリーゴールド・ホテル 幸せへの第2章」
2015年/イギリス・アメリカ/123分
監督:ジョン・マッデン
出演:ジュディ・デンチ、マギー・スミス、ビル・ナイ、デブ・パトル、リチャード・ギア

異国情緒度★★★★☆
満足度★★★☆☆

バベットの晩餐会

2016年04月06日 | 映画(は行)
真の“おもてなし”とは



* * * * * * * * * *

舞台は19世紀後半、デンマーク辺境の小さな漁村。
質素な生活を送る初老の姉妹が住んでいます。
彼女らの今は亡き父は牧師で、村人の信頼を集めていました。
姉妹はその志を継ぎ、結婚など考えたこともなく、
ひたすら質素に敬虔に村人の世話をしながら過ごしてきたのです。
かつては光り輝くように美しく、そのあまりの清廉さに、
町から来た俗物の青年士官が手を出すこともできず、
己の人生を見つめなおしてしまったくらい。
ある時、パリコミューンで家族を失ったフランス人女性バベットがやってきて、
家政婦として姉妹に仕えるようになります。
そしてさらに十数年。
ある日、バベットは宝くじを当てて大金を手にします。
そして、村人のために晩餐会を開きたいと申し出るのです。



バベットが手配した食材が届いたのを見て、姉妹は恐れおののきます。
生きたままのウミガメやらウズラやら・・・。
悪魔の食べ物・・・?
ふだん、干しガレイとパンのビールスープ(?)みたいなものしか
食べたことがないのですから仕方がない。
冒頭にも出てくるカレイを干してあるシーンには
思わず親しみを感じてしまいました。
そのまま焼いて食べればいいのに、
水に浸してズクズクに煮たりしちゃうのにはがっかりでしたが・・・。
姉妹は村人と相談します。
晩餐会では決して食べ物のことを口にしないで、
ひたすら牧師の思い出を語り合おうと・・・。
まあ、つまり料理のことは無視してしまえということですね。
しかし当日、バベッドが調理し、運び込まれる料理の
なんと素晴らしく美味しいこと!!。
ワインやシャンパンも、実は超高級品なのですが、
村人たちはそんなことは知りません。
料理を口に運ぶと、自ずと顔がほころんでくる。
でも、約束があるので、みな笑顔のままで、亡き牧師の思い出を語り合います。
オーバーな料理への賞賛も何もないし、わかったような薀蓄もない。
一人、パリから来た将軍だけがその真価に気づいたのですが。
でも誰もが満ち足りた思いで食事をし、穏やかに思いを語る。
まさに、至福の時を彼らは過ごすことになります。



真の愛とは。
人生とは。
やんわりとした料理の湯気で、これらのテーマを包み込んでいるようです。
見ている私たちも、実に満ち足りた思いにさせられます。
清貧とゴージャスが同居している・・・というのもステキ。
真の「おもてなし」とはこういうものなのでしょうね。


「バベットの晩餐会」
1987年/デンマーク/102分
監督・脚本:ガブリエル・アクセル
原作:カレン・ブリクセン
出演:ステファーヌ・オードラン、ビアギッテ・フェダースピール、ボディル・キュア、ジャン=フィリップ・ラフォン、ビビ・アンデショーン
清貧度★★★★☆
ゴージャス度★★★★☆
満足度★★★★★

「名もなき日々を 髪結い伊三次捕物余話」 宇江佐真理 

2016年04月04日 | 本(その他)
思いがけずすれ違う幼なじみの二人に、涙

名もなき日々を 髪結い伊三次捕物余話 (文春文庫)
宇江佐 真理
文藝春秋


* * * * * * * * * *

絵師を目指す伊三次の息子・伊与太は
新進気鋭の歌川国直に弟子入りが叶い、ますます修業に身が入る。
だが、伊与太が想いを寄せる八丁堀同心・不破友之進の娘・茜は、
奉公先の松前藩の若君から好意を持たれたことで、
藩の権力争いに巻き込まれていく。
伊与太の妹・お吉も女髪結いの修業を始め、若者たちが新たな転機を迎える。


* * * * * * * * * *

本作では伊与太の身に変化があります。
これまで修行していた師匠が急逝し、行き場を失ってしまったところを、
新進気鋭の絵師、歌川国直に拾われ、弟子入りが叶うのです。
国直は若く気さくで、伊与太には居心地が良さそうなのが良かった!


「手妻師」はある手妻師(=手品師)が興行主との諍いで興行主を殺めてしまうという、
事件そのものは単純な話なのですが、
伊三次とその手妻師、手妻師の母親とのやり取りがなんとも人情深い、
ステキなストーリーになっています。
そしてラストがまたイカシてるのです。
これぞイリュージョン!!


松前藩の跡目争いに巻き込まれストレスを爆発させて
事件を起こしてしまった茜は、一旦松前藩の下屋敷に居を移します。
そこでは穏やかな日々を過ごせているのが幸い。
しかし、その後に一波乱あるのは間違いありません。
そんな時に偶然道端で伊与太と茜がすれ違う。

「お嬢、お務めがんばれ。つらいことがあっても辛抱しろ」

思わず、呼びかける伊与太でしたが、茜は仕事中。
でもその後で、茜は必死で嗚咽を堪えているという場面があり、
思わずもらい泣き・・・。
実際どうなっちゃうのでしょうねえ。
茜が松前藩若君の側室に??? 
そ、それだけは勘弁を・・・。


そしてラストではついに龍之進のところで第一子誕生!!
おめでとう!!
龍之進もこんな時代の常識を破り、
妻の出産に立ち会っちゃいました!! 
彼がこんな風にしきたりとか常識をあっさりと踏み越えてしまうところが好きです。


そうそう、本作で龍之進と鉈五郎が飲みながら語り合うシーンがあって、これがいい。
龍之進は子供の頃から嫌味な物言いをする鉈五郎が苦手だったのですが、
今のような歳になって、結局は信頼のおける友人関係となっている。
いいもんですよね、友達って。


さて、現在発売されている文庫版の伊三次シリーズは本巻が最後なのですが、
実はまだ文庫化されていない単行本があと3冊もあります。
文庫化を待つか、あるいは・・・。
気がはやりますが、ここのところ伊三次に集中しすぎているので、
少し時間を置きたいと思います。


「名もなき日々を 髪結い伊三次捕物余話」 宇江佐真理 文春文庫
満足度★★★★★

エヴェレスト 神々の山嶺

2016年04月03日 | 映画(あ行)
エヴェレストに役者根性を見た!



* * * * * * * * * *

夢枕獏の原作を読んだのは随分前だったと思います。
やはり、自分が登山をするわけではないけれど、山の物語は好き。
一ヶ月以上のネパールロケ、標高5200メートルで撮影とのことで、
期待も高まります。



ネパールの首都カトマンズ。
山岳カメラマンの深町(岡田准一)は、古道具屋であるカメラに目を引かれます。
それは、イギリスの登山家ジョージ・マロリーが1942年6月
エヴェレスト登頂に挑んだ時に使われたカメラと同型のもの。
彼は下山することなく行方不明となったため、
登頂に成功したのか否か、未だに謎のままとなっているのです。
もしこのカメラがジョージ・マロリーのもので、彼がエヴェレスト山頂に立ったのなら、
カメラのフィルムにその映像があるはず・・・! 
にわかに興味を掻き立てられた深町でしたが、ちょうどそこへ、
これは自分のところから盗まれたカメラなので、返してほしいという人物が現れます。
その男の連れが、かつて天才クライマーと呼ばれながら、
行方不明となっていた羽生丈二(阿部寛)。
羽生が再度エヴェレスト登頂を目指していることを直感した深町は、
その姿をカメラに収めるため、羽生に接近します。
それはまた、ジョージ・マロリーのフィルムの謎の興味でもあったのですが。



羽生の人間性が、本作のメインですね。
彼はかつて登山に同行した相方を死なせてしまっているのですが、
自分が助かるために見捨てたというウワサが流れているのです。
そのことについての弁解もせず、
ひたすら孤独に山を目指す羽生の生き方にのめり込んでいく深町。



ここでは、岡田准一さんは好青年ではなくて、
ちょっと強引でやさぐれた感じのカメラマン。
なるほどー、なんだかぐんと演技の幅が広まった感じで悪くはありません。
そしてまた、その岡田准一さんを背負って崖を登ってみせた
阿部寛さんにはとにかく拍手!!
・・・いやはや、役者さんも楽ではありませんね。
そしてまた、日本の山を舞台にしたストーリーの吹雪のシーンなどは
時々、え?これだけ?と思ってしまうことがあります。
北海道人としては、まあ最近は少なくなりましたが、
平地でも死にそうな吹雪に遭遇することもあるもので。
ところが今作の吹雪のシーンは、さすがエヴェレスト、
ホンモノは違う!! 
こりゃたまらん・・・と見ているだけでも思いました。
実際、大変なロケだったらしいことがよくわかりました。


映画作品でそういう感想を抱かせてしまうのは、
実はダメなのだろうとは思いつつ・・・。
だって、フィクションなのに現実を思い出してしまっているということですもんね。
というわけで、ストーリー自体より、
キャストやスタッフの皆様に敬意を表したくなってしまったという作品でした。
そういうことが気になってしまったので、本で読んだ時のほうが感動したような・・・。



「エヴェレスト 神々の山嶺」
2016年/日本/122分
監督:平山秀幸
原作:夢枕獏
出演:岡田准一、阿部寛、尾野真千子、ピエール瀧

極限の地・酷寒度★★★★★
根性度★★★★☆
満足度★★★☆☆

国際市場で逢いましょう

2016年04月02日 | 映画(か行)
血と汗で作り上げた幸福



* * * * * * * * * *

韓国の激動の時代を家族のために生きた、一人の男の生涯を描きます。


釜山の国際市場という商店街で
「コップンの店」という古い小さな店を営んでいる老人・ドクス。
新しいビルを立てるために、店を売らないかと再三言われているのですが、
頑として売ろうとしません。
そんな彼が、自分のこれまでの生涯を思いうかべます。


ドクスは少年時代、朝鮮戦争で父と末の妹と離れ離れになってしまったのです。
別れ際に父はドクスにいいます。
「オレがいなくなったら、長男のおまえが家長だから、お前が家族を守れ」と。
父との約束を守ろうと、ドクスは母と弟・妹のために必死で働きます。



西ドイツの炭鉱や戦時下のベトナムへ出稼ぎに行き、
まさに生死をかけながら働く。
そうした血と汗の代価で家族を養ってきたのです。
そんな中で、ドクスがこの店にこだわる理由も分かるのですが、
はっとさせられます。
またついには生き別れた妹と再開する経緯も、涙・涙・・・。
今のドクスはそこそこ生活も安定し、妻と子供たちや弟と妹のそれぞれの家族。
みんな揃うとかなりの大所帯の幸せな一族。
ここまでにどれだけの苦労があったのか・・・
それはもう孫達などには想像もつかない出来事。
その成果をドクスは誰に自慢するわけではないけれど、
きっとどこかで父が見ているに違いないと思うのです。
しみじみ来ます。
戦争で分断された国の悲劇。
それでも人々は生きていくのですよね。



ドクスの幼なじみにして親友であるダルグの
とぼけた雰囲気がまたいいんだなあ。
なんだかんだと言いつつ、常に生死をともにしてきた2人の絆もまた、見逃せない。


それにしても米軍兵のジープに群がって
「ギブミー、チョコレート」と叫ぶ子供たちの姿は万国共通だったのですね!!
韓国の歴史を知るにも、良い作品です。

国際市場で逢いましょうDVD
ファン・ジョンミン,キム・ユンジン,オ・ダルス,チョン・ジニョン,ユンホ
ビクターエンタテインメント


「国際市場で逢いましょう」
2014年/韓国/127分
監督:ユン・ジェギュン
出演:ファン・ジョンミン、キム・ユンジン、オ・ダルス、チョン・ジニョン、チャン・ヨンナム

歴史発掘度★★★★☆
家族の絆度★★★★★
満足度★★★★★

セカンドステージへ!

2016年04月01日 | インターバル
セカンドステージへ!!



私、この3月31日を持ちまして定年退職いたしました。
丸40年の勤務を終了し、ホッとしているところです。
(…年齢まるわかり!!)


そこで、本日4月1日からは晴れて自由の身!! 
待ちこがれたことではありますが、やはりちょっぴり寂しさも・・・。
「やめたら、まず何をするの?」とよく聞かれたのですが、
私は「まず、何もしないの!!」とお答えしました。
まあ、私の<何もしない>=<映画を見る・本を読む>なんですけどね。
他にやりたいことも幾つかあり、ぼちぼちと始めようと思います。
時間の余裕はできますが、
このブロク更新はこれまでと同じペースで行こうと思います。
毎日更新できなくはないでしょうが、
ブログだけの毎日にしたくない、という気持ちもありまして。
でも、ここのところすっかりご無沙汰になっていた、
「たんぽぽ工房」は、再開できるかもしれません。



さて、ついでに映画や本の近況などを・・・


「グイン・サーガ」のこと
栗本薫さん亡き後、別の方々に書き継がれている「グイン・サーガ」。
読んではいたのです。
そして、当ブログでご紹介もしたとおり、読めばそれなりに面白くはある。
ですが、どうも読むまでがすごく億劫で、なんだか苦痛すら感じてしまう。
なぜなのか? 
ストーリーはかなりユニークで思いもよらぬ方へ転がって行き、退屈はしない。
でもやはり、ギュッと読者を引き付ける「何か」が足りない。
どこまでもニセモノ感がつきまとう。
やはり栗本薫さんでなければ・・・と思ってしまう。
これはもう、宿命ではありますが、
でも、無理に読むことなんて全く「読書の楽しみ」に反します。
本当に残念ではありますが、
「グイン・サーガ」についてはこの先は読むこと、ご紹介することを断念いたします。


「マネー・ショート 華麗なる大逆転」のこと
見たんですよ、一応。
私は以前から経済ネタに弱いという自覚はあったのです。
でも、映画評論の方が、「分かりやすい解説も入っている」
というのを真に受けて見てみたのですが、完敗。
そもそも、リーマン・ショックが起こった仕組みさえよくわかっていない私。
「世紀の空売り」と言われたって、そもそも「空売り」って何?というレベル。
そういうことに深くこだわらず、大筋だけ愉しめばいいのかもしれません。
でも意味不明のことがストレスになってしまって、ちっとも楽しめない。
本作を「よかった」という人を私は尊敬します。
・・・そんなわけで、とてもブログ記事にはできませんでした。


「味わう」こと
私の書いているものは一体何なんだろう・・・としばしば思っていました。
もちろん、評論などという大それたものではない。
やはりあくまでも感想文なのだろうな。
でも最近ピッタリの言葉を見つけました。
それが「味わう」という言葉。
そうなのです、私は映画や本を「味わって」いるのだなあ。
甘いもの、辛いもの、酸っぱいもの・・・
味には色々あるように映画もいろいろ。
人の好みもいろいろ。
激辛を好む人もいるけど、私にはムリと思うこともある。
納豆みたいにクセのあるものは好きな人もいるけど、嫌う人もいる。
時には、うまみや塩味、酸味や甘みの絶妙なハーモニーにうっとりすることも。
そういう感覚を表現するために、
素材や見た目、温度やスパイス、気づいたことを書き綴る。
・・・まあ、そういうことなのです。
いやはや、はじめて10年近く経った今頃気づくなんて。
でも、人生のセカンドステージにたった今、決して遅くはない気づきです。
そのように気づけばまた、書きようもあるというもの。
今後ともまた、よろしくお願い致します。