映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

椿の庭

2022年07月10日 | 映画(た行)

美しい和の庭と共に・・・

* * * * * * * * * * * *

長年連れ添った夫を亡くし、古い一軒家に暮らす絹子(富司純子)。
娘の忘れ形見である孫娘の渚(シム・ウンギョン)との2人暮らしです。
夫と子どもたちとの想い出がつまったこの家。
庭は美しく手入れされていて、その季節ごとにそれぞれの花が咲き乱れます。
ところが税金対策として、この家を手放さなければならないことになったのです。
どうにも気が進まない絹子でしたが・・・。

しっとりと落ち着いた和風の庭。
藤とツツジが咲き乱れる冒頭シーン、美しいですねえ・・・。
この家には夫婦と娘2人が住んでいたのですが、
長女は韓国の男性と駆け落ちして、渚が生まれたのです。
ところが、その後長女夫婦は事故で亡くなってしまい、
孫の渚がこの家に来て住んでいるというわけ。
渚は日本語を話すことにほぼ不自由はありませんが、読み書きを目下勉強中。
次女・陶子(鈴木京香)は結婚し、家を出ていますが、
ときおりこの実家に顔を出します。
姪の渚にとっても気安い存在。

女ばかりの3代。
これぞ「和」という感じの生活スタイル。
ロケ地は葉山だそうですが、北海道にはこういう家が少ないので、
ちょっと憧れてしまいます。
しかも海が見えるなんて!

それにしても慣れ親しんだ自分の家から去らなければならないというのは、
絹子さんのような年齢ではいかにもつらいですよね。
せめて、この家で亡くなるまで暮らすことができるようにしてくれればいいのに・・・
と私などは思ってしまったのですが、
いやいや、絹子さんはもうすっかりその気なのでした。

作中、金魚やハチなど、この家の庭で生きていたものたちの「死」が描かれます。
そして、ラストには思いがけないショッキングなシーンも。
いわば「家」の死か。

命や、形のあるものはいつか必ず消え去っていく。
それでも、それらは私たちの心の中に受け継がれて残っていく・・・
そういうものなのかも知れません。

絹子さんの生き様は、まさに“椿”。
地に落ちても美しく凜として静か。

富司純子さん、まさにこういう風に年を取りたいと思う女性像でした。
あ、いや、私すでに手遅れですし、そもそも土台がちがうもんなあ・・・。

着物を着替えるシーンなどもあって、
これが実に手慣れていてさすがだなあと思いました。
こういうのを見ると和服に憧れます・・・。
けど、それもすでに手遅れ。
お金がないとダメですし・・・。

<WOWOW視聴にて>

「椿の庭」

2020年/日本/128分

監督・脚本・撮影:上田義彦

出演:富司純子、シム・ウンギョン、鈴木京香、チャン・チェン

 

和風美度★★★★★

満足度★★★.5

 



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