映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

渇水

2023年06月18日 | 映画(か行)

雨不足に、心もひりついて

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市の水道局に勤める岩切俊作(生田斗真)。
相棒・木田(磯村勇斗)と共に、水道料金を滞納している家庭を回り、
料金徴収および水道を停止する「停水執行」の業務に就いています。

日照りが続き、市内に給水制限が発令される中、
貧しい家庭を訪問し、忌み嫌われる仕事を続ける毎日。
岩切は、妻子との別居生活も続いていています・・・。

そんなある日、岩切は育児放棄を受けている幼い姉妹と出会いますが・・・。

長期による水道料金の未払いで、水道が止められてしまう。
電気でもしんどいですが、水は下手をすると命に関わります。
普通に大人でも困惑するところですが、
母親が出かけたきり何日も戻らず、取り残された子どもたちにとって、
その出来事はあまりにも理不尽です。

あくまで仕事と割り切って規則に沿ってやるしかない、と岩切は思っています。
母親が何日も不在、お金もほとんど残っていないと知る岩切は
水を止める前に、子どもたちのために、家の中のあらゆる容器に水をためてやります。
いくら何でもまもなく母親は帰ってくるだろうと思って・・・。
しかしこの母親(門脇麦)は予想以上にクズ。

是枝監督の「誰も知らない」を思い出しました。
その作中でも、子どもたちは公園の水を汲んでいた。
ところがです、本作は給水制限のために、公園の水も止まってしまった。
いよいよ命に関わります。

岩切は今まで自分が妻や子供ときちんと向き合ってこなかったことを悔いています。
それは、母に取り残された子どもたちを見てしまったから。
親と子は単に血のつながりでできているのではない。
日頃からのふれあいと信頼感が大事であることが身にしみる・・・。

そして、岩切はある日ついに自身のモットーを破り捨てる!!
うんと煮詰まって焦げ付きそうになった岩切の最後の決断が、本作のミソです。

作中、「太陽の光や空気と同じに、水はタダでもいいんじゃないか」、
という話が出ます。

いや、でも川の水ならともかく、水道の水となれば、
その施設や浄化に多大な費用がかかるわけで、タダというわけには行かないのかも・・・。
でも、経済的に本当に困っている人が、水まで取り上げられるというのはやはり理不尽です。
つまり少なくとも一般家庭で使用する水については
無料という制度があってもおかしくない気はしますね・・・。

ともあれ、見応えのある作品です。

<シネマフロンティアにて>

「渇水」

2023年/日本/100分

監督:高橋正弥

原作:河林満

出演:生田斗真、門脇麦、磯村勇斗、山崎七海、柚穂、尾野真千子

 

日照り度★★★★★

理不尽度★★★★★

満足度★★★★☆

 



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