事故? 自殺? それとも・・・?
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人里離れた雪山の山荘。
視覚障害を持つ11歳の少年が、血を流して倒れていた父親を発見。
息子の叫び声を聞いて駆けつけた母親が救助を要請しますが、
父はすでに息絶えていました・・・。
父親は当初転落死と思われたのですが、不審な点も多く、
前日に夫婦げんかをしていたことから、
妻であるベストセラー作家のサンドラに夫殺しの疑いがかけられます。
息子に対しては必死に無実を主張するサンドラ。
しかし裁判が進むと、夫婦の間に隠されていた秘密や嘘が露わになっていきます。
無慈悲です。
果たしてこれは事故なのか、自殺なのか、それとも・・・?
事故(事件?)の前、妻に来客があり仕事上のインタビューを受けるはずだったのですが、
夫が大音響で音楽をかけるものだから、録音不能で、
インタビュアーはあきらめて帰ってしまうという一幕があります。
そもそもそんな時に、夫がいかにもうるさい音楽を流したり、
妻がそれを咎められないというところで、
若干いびつな夫婦関係が見えるような気もするのですが・・・。
まあそれでも表面的には普通の夫婦と見えていた2人。
けれどいろいろな問題点が見えてきます。
息子が目に障害を持つに至った事故があり、夫がその責任を感じている。
世間的に妻の方が成功者で、夫は挫折しているように見える。
しかし夫はプライドが高く、人里離れたこの山荘に越してきたのも
そうした心理が関係しているらしい。
そしてまた夫は精神の病を持ってもいる・・・。
終盤でサンドラは言います。
「裁判に勝っても、何も残らない・・・」
この裁判中、彼女は自分でも思い出したくないような夫婦間のどうにもならない気持ちの食い違いというか、
むしろ憎しみあっているほどのひび割れを思い知らされることになるのです。
しかも息子を含めた衆目の前で。
サンドラにとっても酷ですが、息子にとってそれはもっと残酷かもしれません。
夫婦は極力息子の前では争わないようにしていたのですね。
母を信じたいけれども素直に信じることもできない少年の戸惑いもまた切ない。
・・・けれどこの少年のある記憶が、重大な鍵となります。
本作、裁判での決着はつくのですが、それが真実とは限らない
・・・ということなのだと思います。
本当のことは本人にしか分りません!
<シアターキノにて>
「落下の解剖学」
2023年/フランス/152分
監督:ジャスティーヌ・トリエ
脚本:ジャスティーヌ・トリエ、アルチュール・アラリ
出演:サンドラ・ヒュー、スワン・アルロー、ミロ・マシャド・グラヌール、アンロワーヌ・レナルツ
真実は藪の中度★★★★☆
満足度★★★★☆
その理由は、
・息子がどこで親の争いを聞いたが重要なポイントになる一方、
・聞いただけでなく、目撃を示唆するカットがチラッと入る
・ラストの息子のセリフが真実を示している
どう思われますか
確かに、言われてみれば!ですね。
いずれにしても、本作は
裁判結果でめでたしめでたし
という作りにはなっていないわけですね。
貴重なご意見、ありがとうございます。