映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「慈雨」柚月裕子

2019年08月22日 | 本(ミステリ)

16年前の事件が呼び起こすもの

慈雨 (集英社文庫)
柚月裕子
集英社

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警察官を定年退職し、妻と共に四国遍路の旅に出た神場。
旅先で知った少女誘拐事件は、16年前に自らが捜査にあたった事件に酷似していた。
手掛かりのない捜査状況に悩む後輩に協力しながら、
神場の胸には過去の事件への悔恨があった。
場所を隔て、時を経て、世代をまたぎ、織り成される物語。
事件の真相、そして明らかになる事実とは。
安易なジャンル分けを許さない、芳醇たる味わいのミステリー。

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警察を定年退職した神場が妻とともに四国遍路の旅に出ます。
総て徒歩で、全行程2ヶ月かかるというその旅の合間に、
少女誘拐殺人事件を知り、後輩からの協力依賴を受けることに。
と言っても、事件の進捗状況の報告を時折電話で受けるだけなのですが。
しかし神場は、この事件に見捨てられない強い思いを感じる。
というのも16年前、神場が関わった少女誘拐事件と本件が酷似しているのです。
その時の犯人は逮捕され、現在も服役中。
でも神場は知っている。
かなりの確率でそれは冤罪で、真犯人は別にいる。
けれど行動に出られなかった自分を、神場はずっと責め続けていたわけです。
この度の四国遍路の旅も、そうした思いの果てのこと。
そして今、彼は恐れる。
その真犯人こそが今回の事件の犯人なのではないか・・・。

 

警察官という仕事に誇りを持ち人生を捧げた男の物語。
自分や当時の警察の欺瞞が暴かれれば、自らは苦境に立つことになる。
しかしそれでも、覚悟を決めて真相を暴こうとする・・・、
高潔です。
感動作。


・・・ではありますが、若干天の邪鬼な私は
こういうあまりの「高潔さ」には引いてしまうところがありまして・・・。
確かにご立派なのですけれどねえ・・・。
それとこの奥様があまりにも「男」に都合の良い女なのが、またちょっとイヤ・・・。
女性の作者なのになあ。

お遍路さんの旅はちょっと憧れるところもあったのですが、
これを読むとやはりいかにも大変そうなので、やっぱり私には無理みたいです(^_^;)

「慈雨」柚月裕子 集英社文庫
満足度★★★☆☆



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