映画と本の『たんぽぽ館』

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マイ・サンシャイン

2018年12月29日 | 映画(ま行)

起こるべくして起こった暴動

* * * * * * * * * *


1992年ロサンゼルス暴動の影で、あったかもしれない物語。

1992年、ロサンゼルス、サウス・セントラル。
ミリー(ハル・ベリー)は、
家族と一緒に暮らすことができない子どもたちを預かり、育てています。
隣人のオビー(ダニエル・クレイグ)は、
子どもたちの騒々しさに文句をつけていましたが、実は、そっとミリーたちを見守っていたのです。
その頃、人々の関心を引く2つの事件があります。

15歳の黒人少女が万引きしたとの疑いを持った女店主が
彼女を射殺したラターシャ・ハーリンズ射殺事件。

黒人男性が4名の白人警官に過剰な暴力を受けたロドニー・キング事件。

女店主は執行猶予付き判決、4人の警官は無罪、という判決が出たところで、
アフリカ系アメリカ人の不満が爆発。
ロスで大きな暴動が発生してしまったのです。
ミリーやその子どもたちも不本意ながらその暴動に巻き込まれてしまい・・・。

ここに描かれている2つの事件とその判決、そしてその後の大暴動、
皆実際にあったことです。
人はみな「平等」と言われてはいても、実際には貧富の差や人々の差別感情が歴然と存在しています。
こんな事件や裁判が実際にあったとしたら、
暴動が起こるのは無理もないか・・・と、思えてしまいます。

何気ない日々の中にも差別は大きな壁となってそびえているから、
何か事が起これば一気に不満が爆発してしまう。
日本人はこういう認識に少し疎いですけれど・・・。

本作のミリーの家には子どもたち(主に黒人)が大勢いて、
はじめ、なんでこの人こんなに子沢山なの?と思ってしまいましたが、
実子ではありませんでした。
(実子の長男は、いたんですよね。)
そして隣人のオビーは、ちょっとクレイジーがかった野蛮で変な人・・・と思えたのですが、
意外にも優しく思いやりのあるヤツだったのです。
ダニエル・クレイグといえばやはり007、冷静沈着なイメージが強いですが、
本作ではどこにでもいそうな、ちょっと怖そうだけど実は愛嬌のあるオッサン。
これ、いいですよね。
気に入りました。

暴動の悲惨なシーンが多い中で、ミリーとオビーの必死だけれどもなんだかおかしな様子が、
陰惨な作品にならずに良い味を出しています。
ミリーがつい見てしまったあからさまな夢が、楽しい。

<ディノスシネマズにて>
「マイ・サンシャイン」
2017年/フランス・ベルギー/87分
監督:デニズ・ガムゼ・エルギュベン
出演:ハル・ベリー、ダニエル・クライグ、ラマー・ジョンソン、カーラン・ウォーカー、レイチェル・ヒルソン

歴史発掘度★★★★☆
肝っ玉母さん奮闘度★★★★★
満足度★★★★☆



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