聞き届けてくれる人はきっといる
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母親に支配され、ただ義父の介護にのみ生きて、
ほとんど自分をなくしていた貴瑚(杉咲花)。
ある出来事の後、1人で海辺の町の一軒家に越してきます。
そこで彼女は母から「ムシ」と呼ばれ虐待されている、
声を発することができない少年と出会います。
貴瑚は少年との交流を通し、
かつて自分の声なきSOSに気づいて救い出してくれた
アン(志尊淳)との日々を思い起こしていきます・・・。
アン(岡田安吾)はかつて、貴瑚の苦境に気づき、
義父の介護の公的な手続きや施設の世話、
そして支配的母親からの解放を図ってくれたのです。
貴瑚は当然のごとくアンにひかれ、ついには告白をするのですが、
アンは「いつも君の幸福を願っている」と言うだけで、受け入れてくれません。
どうもアンには貴瑚にも言えない秘密があるようなのです。
失意の貴瑚は、やがて別の青年を愛するようになるのですが・・・。
その先の出来事はさらにつらい・・・。
確かにこんなことがあれば、1人で見知らぬ町に住みたくなってしまうかも、ですね。
題名の「52ヘルツのクジラ」というのは、
他のクジラが聞き取れないほど高い周波数で鳴く
世界で一頭だけの孤独なクジラのこと。
このクジラのように、自分の声は誰にも届かないと思い、
孤独に陥る人が本作には登場するわけです。
以前の貴瑚、虐待される少年、そしてアンも・・・。
でも、貴瑚の声をしっかり聞こうとしてくれた人がいた。
今、少年の声を貴瑚が聞こうとしている。
では、アンの声は・・・?
もう少し、ほんのもう少し、アンが心を開いて声を発してくれさえすれば・・・。
無念さが滲みます。
本作のアンの役は、やはり志尊淳さん以外には考えられないくらい、はまり役でした。
<WOWOW視聴にて>
「52ヘルツのクジラたち」
2024年/日本/135分
監督:成島出
原作:町田そのこ
脚本:龍居由佳里
出演:杉咲花、志尊淳、宮沢氷魚、小野花梨、桑名桃李、金子大地、西野七瀬
虐待度★★★★★
孤独度★★★★☆
満足度★★★★☆
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